講演情報
[14-O-A005-02]傍ヘルニアを伴うストーマ利用者へのアプローチ
*鳥井原 幸1、杉本 敏彰1、松原 奈津子1 (1. 奈良県 医療法人鴻池会 介護老人保健施設 鴻池荘)
日本オストミー協会の調査によると、大腸癌と診断された60歳以上のストーマ保有者は、全体の87.4%を占める結果となっており、高齢化の進展と共に増加していくことが予測され今後、介護施設においてもストーマケアが求められる。今回、ストーマ傍ヘルニアによる便漏れを認めた事により心身の不快や苦痛、コスト増加による家族の苦悩を認めたが、多職種連携にて問題解決へ向け取り組んだ症例について報告する。
【はじめに】
現在日本は、「2025年問題」となる戦後のベビーブーム時代の出生者が高齢を迎えようとしている。2019年の国立がん研究センターの統計によると、大腸癌と診断される数として10万に対し男性は87.872例、女性は67.753例とされている中で、60歳以上のストーマ保有者は全体の87.4%であり、今後介護施設においてもストーマケアが求められる機会が多くなると予測される。ストーマ管理困難をもたらす因子にストーマ傍ヘルニアがあり、これらの合併症を発症してしまうと根本的解決が難しいだけでなく患者のQOLやボディイメージを低下させてしまう。今回、ストーマ傍ヘルニアによる便漏れを認めた事により心身の不快や苦痛、コスト増加による家族の苦悩を認めたが、多職種連携にて問題解決へ向け取り組んだ症例について報告する。
【対象利用者】
氏名:N氏 年齢:80歳代 性別;男性 疾患:脳幹梗塞後遺症 既往歴:2012年頃大腸癌手術施行しストーマ造設。介護区分:自立度:B1 認知度:I 介護度:要介護3。排泄は、終日オムツ着用しオムツ内排泄で定時交換で対応。ストーマ造設後、脳幹梗塞発症までは家族と自宅で過ごす。パウチ交換については、キーパーソン:息子氏が交換行っていた。脳幹梗塞後リハビリ目的にて当荘入所し、入所当初はパウチの種類としてツーピースを使用。
【方法・経過】
2022年5月~2023年4月:パウチ使用方法についてこだわり強く交換時はN氏の指示のもと実施していたが、便漏れ回数多くパウチ交換頻回に認める状況でありコスト増加による家族からの苦悩発言が多く聞かれるようになる。コスト削減考慮するため、2ピースのパウチの袋を洗浄し、乾燥させ再利用行う。人工肛門部は上行結腸から便、下行結腸より漿液が排出され混合することで便の性状はブリストルスケール5-6番であり施設医相談の上、内服薬調整開始。2023年4月~2023年6月:併設病院所属の皮膚・排泄ケア認定看護師(以下:WOCNと略す)へコンサルタント(以下:コンサルと略す)行う。WOCN介入後、ストーマ傍ヘルニアを合併している事が判明し、パウチ取り寄せにて評価開始。都度パウチ交換時には、WOCN介入・立ち合いのもとパウチ交換を行う。パウチ漏れの状況が、看護師とWOCNが共有・把握できるようチェック表の使用をすると共に排便・排ガスの確認の漏れがないよう看護・介護が共有・把握できるようチェック表を作成し使用開始にて漏れ多い時間帯や方向が把握しやすくなりパウチ交換の頻度が減少した。N氏からも「減ってよかった。うれしい」と発言が聞かれ、在宅へ短期退所する際は家族同席にてカンファレンス行い家族へ現状・経過報告、手技の伝達出来るようWOCN参加のうえ報告。その際コスト面についてお話し苦悩発言がなくなった。2023年6月より…更なる看護・介護統一を図る為、排便・排ガスチェック表の内容を変更。パウチ内にガスが充満する中で、排便・ガス時手技の違いがあるとパウチ剥がれを生じる事が考えられ、介護士へ排便・排ガスの手技の確認を行い必要時には看護師より指導の実施。パウチ交換方法が他フロア看護師も周知できるようWOCNよりデモストレーション実施。手順マニュアル・動画作成を行い、統一を図る。ケア提供内容については、都度フロア看護師が訂正し介護と共有行えるように記録や申し送りを通じて随時発信を行った。
【結果】
はじめはWOCN主体となり、パウチの評価を行う事でN氏はワンピースのパウチが適正となる。また、パウチ漏れの状況を把握しつつ補強材の導入をコストと照らし合わせながら選定を行い、N氏に合うパウチの選定が行えた。手技の習得のため全看護師へのデモストレーション実施する事で統一した看護の提供が出来き、期間を得てWOCNから看護師主体への移行となり介護士へパウチからの便・ガス排出の手技統一の意識付け、知識の共有を行なうことが出来き、便の性状について施設医から内服調整も行なう事でブリストルスケール3-4番であり内服効果を得られることが出来た。
【考察】
ストーマヘルニアの発生頻度は1%~54%と報告されており、ストーマケアの中で比較的臨床で目にすることの多い晩期合併症である。ストーマ造設時よりも異常に飛び出すストーマ脱出の発生頻度は1.7%~25%となっており、ストーマ脱出や傍ストーマヘルニアを生じるとストーマサイズが拡大することが多い。今回、便漏れが課題となった時、ストーマ傍ヘルニアを合併しているという知識が不十分でストーマの選定が出来ていなかった。また、積み重なるコストへの家族の苦悩サポートが優先となり、N氏の心理的サポートが出来ていなかった。ストーマセルフケアとは、排泄処理・ストーマ周囲の皮膚に関するケアとストーマ装具の選択・装着・交換などの局所ケア及び、身体面・生活面・心理面の総合的な指導・助言が必要とされている。このように、ストーマセルフケアを優先し原因解明することで必然的に身体面・生活面・心理面の安定が伴ってくるのではないかと考える。職種問わず協働することでパウチからの便漏れの減少、交換回数が減る事でのコスト削減する事が出来たと考える。利用者1人ひとりの生活と健康を支えていくためには、利用者と家族を中心においたチームアプローチ欠かせない。ケアに関わる他職種が同じ目標に向かって、それぞれの専門性を発揮できる人間関係やケアを提供する体制づくりが必要である。今回、併設病院にWOCNが所属していた事で、傍ヘルニアを伴うストーマ利用者へのアプローチ行えた。得た知識を向上させると共に、在宅復帰した際ストーマに問題が発生した場合、どのような専門的な機関に相談すればよいのか迷わなくてもいいよう、今回の経験ふまえ退所時指導時等に家族の指導していきたい。
現在日本は、「2025年問題」となる戦後のベビーブーム時代の出生者が高齢を迎えようとしている。2019年の国立がん研究センターの統計によると、大腸癌と診断される数として10万に対し男性は87.872例、女性は67.753例とされている中で、60歳以上のストーマ保有者は全体の87.4%であり、今後介護施設においてもストーマケアが求められる機会が多くなると予測される。ストーマ管理困難をもたらす因子にストーマ傍ヘルニアがあり、これらの合併症を発症してしまうと根本的解決が難しいだけでなく患者のQOLやボディイメージを低下させてしまう。今回、ストーマ傍ヘルニアによる便漏れを認めた事により心身の不快や苦痛、コスト増加による家族の苦悩を認めたが、多職種連携にて問題解決へ向け取り組んだ症例について報告する。
【対象利用者】
氏名:N氏 年齢:80歳代 性別;男性 疾患:脳幹梗塞後遺症 既往歴:2012年頃大腸癌手術施行しストーマ造設。介護区分:自立度:B1 認知度:I 介護度:要介護3。排泄は、終日オムツ着用しオムツ内排泄で定時交換で対応。ストーマ造設後、脳幹梗塞発症までは家族と自宅で過ごす。パウチ交換については、キーパーソン:息子氏が交換行っていた。脳幹梗塞後リハビリ目的にて当荘入所し、入所当初はパウチの種類としてツーピースを使用。
【方法・経過】
2022年5月~2023年4月:パウチ使用方法についてこだわり強く交換時はN氏の指示のもと実施していたが、便漏れ回数多くパウチ交換頻回に認める状況でありコスト増加による家族からの苦悩発言が多く聞かれるようになる。コスト削減考慮するため、2ピースのパウチの袋を洗浄し、乾燥させ再利用行う。人工肛門部は上行結腸から便、下行結腸より漿液が排出され混合することで便の性状はブリストルスケール5-6番であり施設医相談の上、内服薬調整開始。2023年4月~2023年6月:併設病院所属の皮膚・排泄ケア認定看護師(以下:WOCNと略す)へコンサルタント(以下:コンサルと略す)行う。WOCN介入後、ストーマ傍ヘルニアを合併している事が判明し、パウチ取り寄せにて評価開始。都度パウチ交換時には、WOCN介入・立ち合いのもとパウチ交換を行う。パウチ漏れの状況が、看護師とWOCNが共有・把握できるようチェック表の使用をすると共に排便・排ガスの確認の漏れがないよう看護・介護が共有・把握できるようチェック表を作成し使用開始にて漏れ多い時間帯や方向が把握しやすくなりパウチ交換の頻度が減少した。N氏からも「減ってよかった。うれしい」と発言が聞かれ、在宅へ短期退所する際は家族同席にてカンファレンス行い家族へ現状・経過報告、手技の伝達出来るようWOCN参加のうえ報告。その際コスト面についてお話し苦悩発言がなくなった。2023年6月より…更なる看護・介護統一を図る為、排便・排ガスチェック表の内容を変更。パウチ内にガスが充満する中で、排便・ガス時手技の違いがあるとパウチ剥がれを生じる事が考えられ、介護士へ排便・排ガスの手技の確認を行い必要時には看護師より指導の実施。パウチ交換方法が他フロア看護師も周知できるようWOCNよりデモストレーション実施。手順マニュアル・動画作成を行い、統一を図る。ケア提供内容については、都度フロア看護師が訂正し介護と共有行えるように記録や申し送りを通じて随時発信を行った。
【結果】
はじめはWOCN主体となり、パウチの評価を行う事でN氏はワンピースのパウチが適正となる。また、パウチ漏れの状況を把握しつつ補強材の導入をコストと照らし合わせながら選定を行い、N氏に合うパウチの選定が行えた。手技の習得のため全看護師へのデモストレーション実施する事で統一した看護の提供が出来き、期間を得てWOCNから看護師主体への移行となり介護士へパウチからの便・ガス排出の手技統一の意識付け、知識の共有を行なうことが出来き、便の性状について施設医から内服調整も行なう事でブリストルスケール3-4番であり内服効果を得られることが出来た。
【考察】
ストーマヘルニアの発生頻度は1%~54%と報告されており、ストーマケアの中で比較的臨床で目にすることの多い晩期合併症である。ストーマ造設時よりも異常に飛び出すストーマ脱出の発生頻度は1.7%~25%となっており、ストーマ脱出や傍ストーマヘルニアを生じるとストーマサイズが拡大することが多い。今回、便漏れが課題となった時、ストーマ傍ヘルニアを合併しているという知識が不十分でストーマの選定が出来ていなかった。また、積み重なるコストへの家族の苦悩サポートが優先となり、N氏の心理的サポートが出来ていなかった。ストーマセルフケアとは、排泄処理・ストーマ周囲の皮膚に関するケアとストーマ装具の選択・装着・交換などの局所ケア及び、身体面・生活面・心理面の総合的な指導・助言が必要とされている。このように、ストーマセルフケアを優先し原因解明することで必然的に身体面・生活面・心理面の安定が伴ってくるのではないかと考える。職種問わず協働することでパウチからの便漏れの減少、交換回数が減る事でのコスト削減する事が出来たと考える。利用者1人ひとりの生活と健康を支えていくためには、利用者と家族を中心においたチームアプローチ欠かせない。ケアに関わる他職種が同じ目標に向かって、それぞれの専門性を発揮できる人間関係やケアを提供する体制づくりが必要である。今回、併設病院にWOCNが所属していた事で、傍ヘルニアを伴うストーマ利用者へのアプローチ行えた。得た知識を向上させると共に、在宅復帰した際ストーマに問題が発生した場合、どのような専門的な機関に相談すればよいのか迷わなくてもいいよう、今回の経験ふまえ退所時指導時等に家族の指導していきたい。