講演情報

[14-O-A005-06]見たい!知りたい!他部署見学!

*藤原 里美1、柳田 卓1 (1. 鳥取県 介護老人保健施設すこやか)
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当法人内で介護サービスを提供するにあたり、他部署と関わる機会は少なく、お互いコミュニケーションがとれているのか疑問であった。そこで各部署の見学・体験を行い、毎月のスタッフ会で情報共有した。取り組みの中で、相手を思いやる力、コミュニケーションの大切さを理解できた事、また、それが利用者の安心・安全な生活を支える為に重要な事であると考えられたので報告する。
【はじめに】
より良いサービスを提供する為には、多職種が連携しチームとして利用者の介護にあたるよう日頃意識する事が大切である。言い換えればチーム力が高い施設は良い介護サービスを提供できると言えるだろう。しかし当施設では他部署と関わる機会は少なく、サービスを提供するなかで、お互い十分なコミュニケーションが取れているのかは疑問であった。このことから他部署を見学、体験をすることで理解を深め職員同士の良い関係性が構築されると考え、他部署見学・体験に取り組んだ事例を報告する。

【方法】
(1) 施設相談員(2)デイケア(3)デイサービス(4)通所入浴介助(5)ケアハウス(6)栄養課
5部署(6パターン)の見学・体験を行い、毎月のスタッフ会で情報共有する。

【結果・感想】
(1)ショートステイ利用者の送迎に同行
・情報として文字で見る事はあっても、実際に玄関からの移動方法等を見ることはなかったので良い体験になった。
・命を預かっているという事を第一に意識して送迎している。
・車内では利用者の体調を気にしながら会話することを心掛けている。
・フェイスシートに書いてある注意事項が現場に伝わっていない事があり、必要な福祉用具やケア方法も含め、事前準備・情報収集が大切だと再認識した。

(2)デイケアへレクリエーションの見学
・内容…昼食メニュー思い出しクイズ、後出しジャンケン、コグニサイズ、体操
・週単位で行っているが、同じ内容だと飽きてしまう利用者もいる為、ルール変更の工夫をしている。
・利用者が積極的に参加されていると感じた。職員も盛り上げ上手で、楽しいレクリエーションだった。家でもできる体操等を取り入れているところは通所ならではの工夫だと感じた。

(3)デイサービス見学
・在宅生活が継続できるよう残存機能の向上を目指した支援を行っている。
・食器の仕分け、コップ洗い、テーブル拭き等の役割を作り取り組んでいただいている。例えば花瓶の水替えなど危険なこともあえて取り組んでもらい、危険察知の能力向上に役立てている。
・壁画作りに力を入れ取り組んでいる。完成度も大切だがそれ以上にやり切る気持ちを大切にしている。
・デイサービスは楽しいところ、また来たいという思いに繋がるコミュニケーションの取り方に気を付けている。
・今回の見学で、コミュニケーションは特に大切で職員への信頼関係や日々の状態観察にも繋がると思う。老健でも意識して取り組み、利用者が安全・安心に過ごしていただけるように工夫したい。

(4)通所入浴介助の見学
・デイケアとデイサービスの入浴は同時進行。職員も合同で介助を行う為、氏名と顔の一致、既往等によりNGなケア方法もあるので、しっかり把握しておく必要がある。
・看護師も入浴介助に入っている。
・老健と比べ一日に入浴する利用者数が多いためか慌ただしさを感じた。しかしその慌ただしさの中でも職員間の声掛けはしっかり行えており、スムーズに連携がとれている印象を受けた。

(5)ケアハウス見学
・入居者は基本的に生活に不安のある高齢者だが、介護職員は見守り、食事の提供、生活相談が主で、入浴や排泄介助といった介護サービスや医療サービスは提供しない。
・食事形態は、主食は粥まで、副食は一口大まで対応している。個人的に水分にトロミをつけられる利用者もいるが、自身で管理しトロミも自分でつけられている。
・居室には職員は緊急時以外に出入できない。居室内の状況確認等はヘルパーと連携して行っている。
・ケアハウス職員が日常生活において身体介護の介入がないため、老健からケアハウスへの在宅復帰はハードルが高いと感じた。ある程度は在宅サービスで補えるのかもしれないが、食堂への移動、エレベーター操作等、自身で行わなければいけない場面が多い。

(6)栄養課見学・体験
・常食、一口大、荒刻み、刻み、ミキサー、糖尿病食、減塩食など、出来る限りの食事形態を提供しているが、時間を要する。
・各部署の職員に、もう少し食事・栄養に関して知識を持ってほしい。
・見ていると簡単そうに思える作業でも、器が熱くて思わず手から離しそうになったり、盛り付ける際、量が足りなくなってしまったりと目に見えない大変さを体験した。
・出来合いの物も提供している時もあるが、職員の人数が少ないなかで食事提供時間に間に合うように準備をされている為、致し方ないと思った。

【考察・まとめ】
 今回5部署の見学・体験を行って、対象者の共通した率直な感想として「忙しい中だけど行って良かった」との感想だった。これはやはり、いままで他の部署をあまり知らなかったという理由からの素直な言葉だと感じる。また他部署の目線にたった感想もあり、今まで老健主体の考え方だったものが、少なからず相手の立場に置き換えた考え方ができたのではないだろうか。勿論他部署の実践している良いところを参考にして反映させていくことも大切だが、なにより「相手を思いやる力、コミュニケーションの大切さ」を改めて感じられた取り組みであった。それは所属する部署の人間関係はもちろん、他部署と密に連携をとることで思いがけない解決策も見つかるのではないだろうか。施設では現場の職員が中心となりケアを行う事が多いが、利用者のそれぞれのニーズに応え、質の高いケアを提供するには現場の職員だけでは限界がある。そこで必要となってくるのが多職種連携の考え方だが、一方的に知識・技術を受け取るだけではうまく連携がとれたとはいえない。今回の取り組みで感じた「相手を思いやる力、コミュニケーションの大切さ」を理解し実践できれば、チームケアを考えてくうえで、それが一番に利用者の安心・安全な生活を支えるために必要な事だと感じる。これからも、円滑な多職種連携がとれ、より良い介護サービスに繋げ、今まで以上に利用者一人一人がその人らしく生活を送れるように今回の取り組みを活かしていきたいと思う。