講演情報
[14-O-A005-07]知識をケアに活かそうストレス閾値漸次低下モデルの実践を通して
*高橋 元1、中村 暁子1 (1. 長野県 老人保健施設ふるさと)
施設内学習会で「認知症高齢者との関わり」について、ストレスが増大しないよう計画的に関わることの大切さを学んだ。そこで、学んだ知識を職場全体でケアに繋げられるよう、夜勤帯でのカンファレンス開催で関わる職員の数を増やす等の工夫を実施した。その結果、利用者の変化が見られ、また職員も意識的に関わりを持つことができた。学んだ事を実践する(学習転移)、統一した意識でケアを提供することができた事例である。
1.はじめに
昨年、施設内学習会にて認知症認定看護師より「認知症高齢者との関わり」について学ぶ機会があった。その中で、高齢者の特徴として認知症が進行するとストレスに弱くなる事や「ストレス閾値漸次低下モデル」PLST(Progressively Lowered Stress Threshold)モデルについての学習をし、ストレスとBPSDの発症の因果関係やストレスが増大しないように計画的に支援することが大切であることを学んだ。
これまで、学習会で学んだ知識を職場全体でケアに繋げていく機会はそれほど多くはなかった。そこで今回、学んだ知識を実践につなげるべく取り組み方の工夫を行い、それによって利用者の変化を感じることができたため報告する。
2.方法
・学習会 集合形式で1回実施 参加できなかった職員に対しても伝達講習を実施
・アセスメント 3日間 24時間生活変化シート使用し利用者の現状を把握する
・カンファレンス 1日2回(昼、夜)2日間実施 内容:計画的支援の概要説明・支援の時間・内容を検討・周知
・ケアの実施 14日間 起床時・9時半頃・昼食後・おやつ後の1日4回 内容は8項目からスタッフが選択
モニタリングは24時間生活変化シートを使用
・評価 利用者の様子について、初回アセスメント時とモニタリング時で比較
スタッフに今回の取り組みついてアンケート調査を実施
3.対象利用者情報
A様 女性 80代 元々老舗旅館の女将 レビー小体型認知症 右大腿骨頚部骨折(人工骨頭置換術)
骨折による入院中より、拒薬や、幻視、暴言暴力が見られ体幹抑制をしていた
取組み実施時は、車椅子安全ベルト着用、臥床時離床センサー使用中。
実施ケア内容:化粧、風船バレー、昼寝(休息)、散歩、手作業、個別リハビリ、体操、会話等
4.結果
アセスメントの結果、起床時は比較的穏やかであるものの、時間経過と共に離床が長くなり不穏な状態に変化していたことが分かった。カンファレンスでは、普段は4名程度の職員の参加で行っているが、複数回かつ夜間にもカンファレンスを設けることで、一つのケースにおいても10名以上の職員が関わることができた。
最終的なモニタリングの結果、起床時の化粧は積極的に実施できており良い表情が見られた。昼食後はこれまで休息する事がなかったが、徐々に臥床し身体を休める時間が持てた。夕方にかけて落ち着かなくなる様子も見られたが、コミュニケーションなど関わりを持てる時間は良い表情も見られた。家業である旅館の心配をしている場面が多く、その話をすることが本人の安心に繋がっていると感じる場面もあった。
スタッフアンケートには15名の回答があった。(回答率68%)回答をまとめると、PLSTモデルの概要についてある程度把握でき(97%)、アセスメントから評価までの期間もちょうど良いと感じる職員が多かった。(87%)また、利用者の変化については87%の職員が感じることができ、回答者全員が他利用者に対しても同様の支援を行いたいと感じていることが分かった。感想では、学べたこと、いつもより意識的に丁寧に関われたことに対する満足感があったこと、学んだことを実践することで変化が感じられ良かったことが挙げられたが、同時に、現状の人員配置では個別的な介入を増やすことは困難という意見も見られた。
5.考察・まとめ
本症例は、施設内学習会で学んだことを職場全体で取り組むことができた。施設内学習会では、「学ばなくてはいけない」テーマが多く、より良いケアを提供するために活かせるものは少なかった。また、職員個々に学んだことを職場で共有して取り組むことも多くはなかった。その中で、本症例では全員で学んでそれを実践すること(学習転移)を意識した取り組みができた。また、カンファレンスもより多くの職員が参加できるように回数、時間帯を工夫したことで、全員が統一した意識でケアを実践することができた。
今後も職員が学びたいもの、職場で弱点となっている部分に焦点をおいた学習機会を設け、それを学習転移できるような職場としての取り組みをすすめ、より良いケアの実践に繋げていきたい。
昨年、施設内学習会にて認知症認定看護師より「認知症高齢者との関わり」について学ぶ機会があった。その中で、高齢者の特徴として認知症が進行するとストレスに弱くなる事や「ストレス閾値漸次低下モデル」PLST(Progressively Lowered Stress Threshold)モデルについての学習をし、ストレスとBPSDの発症の因果関係やストレスが増大しないように計画的に支援することが大切であることを学んだ。
これまで、学習会で学んだ知識を職場全体でケアに繋げていく機会はそれほど多くはなかった。そこで今回、学んだ知識を実践につなげるべく取り組み方の工夫を行い、それによって利用者の変化を感じることができたため報告する。
2.方法
・学習会 集合形式で1回実施 参加できなかった職員に対しても伝達講習を実施
・アセスメント 3日間 24時間生活変化シート使用し利用者の現状を把握する
・カンファレンス 1日2回(昼、夜)2日間実施 内容:計画的支援の概要説明・支援の時間・内容を検討・周知
・ケアの実施 14日間 起床時・9時半頃・昼食後・おやつ後の1日4回 内容は8項目からスタッフが選択
モニタリングは24時間生活変化シートを使用
・評価 利用者の様子について、初回アセスメント時とモニタリング時で比較
スタッフに今回の取り組みついてアンケート調査を実施
3.対象利用者情報
A様 女性 80代 元々老舗旅館の女将 レビー小体型認知症 右大腿骨頚部骨折(人工骨頭置換術)
骨折による入院中より、拒薬や、幻視、暴言暴力が見られ体幹抑制をしていた
取組み実施時は、車椅子安全ベルト着用、臥床時離床センサー使用中。
実施ケア内容:化粧、風船バレー、昼寝(休息)、散歩、手作業、個別リハビリ、体操、会話等
4.結果
アセスメントの結果、起床時は比較的穏やかであるものの、時間経過と共に離床が長くなり不穏な状態に変化していたことが分かった。カンファレンスでは、普段は4名程度の職員の参加で行っているが、複数回かつ夜間にもカンファレンスを設けることで、一つのケースにおいても10名以上の職員が関わることができた。
最終的なモニタリングの結果、起床時の化粧は積極的に実施できており良い表情が見られた。昼食後はこれまで休息する事がなかったが、徐々に臥床し身体を休める時間が持てた。夕方にかけて落ち着かなくなる様子も見られたが、コミュニケーションなど関わりを持てる時間は良い表情も見られた。家業である旅館の心配をしている場面が多く、その話をすることが本人の安心に繋がっていると感じる場面もあった。
スタッフアンケートには15名の回答があった。(回答率68%)回答をまとめると、PLSTモデルの概要についてある程度把握でき(97%)、アセスメントから評価までの期間もちょうど良いと感じる職員が多かった。(87%)また、利用者の変化については87%の職員が感じることができ、回答者全員が他利用者に対しても同様の支援を行いたいと感じていることが分かった。感想では、学べたこと、いつもより意識的に丁寧に関われたことに対する満足感があったこと、学んだことを実践することで変化が感じられ良かったことが挙げられたが、同時に、現状の人員配置では個別的な介入を増やすことは困難という意見も見られた。
5.考察・まとめ
本症例は、施設内学習会で学んだことを職場全体で取り組むことができた。施設内学習会では、「学ばなくてはいけない」テーマが多く、より良いケアを提供するために活かせるものは少なかった。また、職員個々に学んだことを職場で共有して取り組むことも多くはなかった。その中で、本症例では全員で学んでそれを実践すること(学習転移)を意識した取り組みができた。また、カンファレンスもより多くの職員が参加できるように回数、時間帯を工夫したことで、全員が統一した意識でケアを実践することができた。
今後も職員が学びたいもの、職場で弱点となっている部分に焦点をおいた学習機会を設け、それを学習転移できるような職場としての取り組みをすすめ、より良いケアの実践に繋げていきたい。