講演情報
[14-O-A006-01]リハビリ職員の介護業務参加を経験して生活リハを目指して
*菅原 芽生香1、小林 香寿美1、畠山 真哉1、遠藤 和彦1 (1. 秋田県 男鹿老健)
介護業界では人手不足により業務を遂行することが困難になっている。当施設ではリハビリ職員が介護業務に参加し、職員に対しアンケートを行った。その結果、介護職員の業務量は減少傾向にあったが、リハビリ職員の業務量は増加し人員不足は解決されなかった。しかし一定の職員間で会話の機会が増加し多職種連携への一助となった。今後も人手不足が続くことが予想されるため、専門性を活かしつつ、多職種で連携していく必要がある。
【はじめに】介護業界では人手不足により業務量が増加し、遂行することが困難になってきている。特に当施設がある秋田県男鹿市では高齢者率の上昇と労働人口の減少が進み、職員不足が問題になっている。【対象と方法】2024年4月1日~5月31日、月~土曜日の午前中に交代でリハビリ職員1名が介護業務に参加し、シーツ交換、離床・臥床介助、食事介助、トイレ誘導、歯磨き等を行った。指定された1名以外の職員も状況により介護業務へ参加している。その後職員に対し紙面でアンケートを行い、その結果を評価した。対象は老健職員46名(20~70歳代、平均38.5歳)、内訳は、医師1名、看護師8名、介護士23名、リハビリ職員6名、栄養士1名、事務職員7名である。アンケートは2024年6月1日~6月15日に実施・回収した。アンケートの回収率は100%で、主に介護職員とリハビリ職員の回答を比較検討した。アンケートの具体的な質問内容は以下の通りである。1)リハビリ職員の介護業務参加により業務量に変化はあったか2)リハビリ職員の介護業務参加により残業時間に変化はあったか3)相互の介護業務の仕方に違いがあったか4)リハビリ職員の介護業務が役にたったか/介護業務の参加がリハビリ業務の役に立ったか5)リハビリ職員の介護業務参加により各職種との会話の数が増えたか6)リハビリ職員の介護業務参加により利用者の動作能力に良い変化があったか(起居・移乗動作、食事動作、トイレ動作、口腔ケア)7)今後もリハビリ職員の介護業務参加を希望するか/今後もリハビリ職員の介護業務参加を続けていきたいか8)リハビリ職員が3か月介護業務に参加し、仕事に対する取り組みの姿勢によい変化があったか9)今後の意見や要望、感想等【結果】1)業務量は、リハビリ職員の94%が増えたと感じ、介護職員の65%が減少したと感じていた。2)残業時間は、介護職員の17%が減少したが、リハビリ職員は変化しなかった。3)相互の介護業務のやり方は介護職員の30%、リハビリ職員の67%が、個人差があると感じていた。4)介護職員の96%がリハビリ職員の介護業務が役に立ったと感じていた。5)介護職員とリハビリ職員同士の会話以外に、他職種の過半数が介護職員またはリハビリ職員との会話が増えたと感じていた。6)介護職員の65%、リハビリ職員の100%が利用者の動作能力に変化がなかったと感じていた。7)介護職員の64%、リハビリ職員の83%、その他職員の64%が、今後もリハビリ職員の介護業務参加が必要と感じていた。8)リハビリ職員の介護業務参加が自分の仕事への取り組みに良い影響を与えたと、介護職員の35%、リハビリ職員の83%、その他職員の53%が感じていた。【考察】介護職員の業務量は65%が減少したと感じ、残業時間は17%が減少したと感じていた。当施設では食事介助を要する方が多いこともあり、介護職員数が十分ではないと考える。また、リハビリ職員は介護業務も加わったことで業務量が増加したとの回答が多かった。個別リハビリの時間を十分に取ることができず、介護業務参加がリハビリ業務へ支障をきたしていることからも、施設職員の人員不足は解消されていないことが考えられる。利用者の動作能力について、リハビリ職員が介護業務に関わったことで変化は見られなかった。介護業務参加開始からアンケートの回答までが2か月と短い期間であったため、利用者の動作能力への影響は少なかったと考える。できるADLとしているADLの差を埋める適切な介助量を把握し、能力を最大限生かし向上させる生活リハビリは、利用者の能力向上とともに業務量の変化にもつながっていく。人員が増えることは必須であるが、生活の場で利用者の動きを確認し、自分の力を使ってもらう機会を増やしていくべきである。リハビリ職員との会話が増えたと感じる職員が増えた一方で、変わらないと感じている職員も一定数いることが分かった。ここでいう会話は、業務的な情報共有のみではなく日常的な会話も含まれる。普段の会話が増えることで職員間の親密さが増し、より密な連携につながる。互いに他職種の業務現場に足を運び積極的に参加することが必要である。リハビリ職員の多くが今後の介護業務への参加を希望している反面、「普段から時間を見つけて介護業務に関わっていければよい」との意見もある。根本的に人員不足が解消されないとリハビリ業務がおろそかになる懸念がある。また、事務職員の57%は今後のリハビリ職員の介護業務参加を希望しないと回答しており、「リハビリにはリハビリの仕事をしてほしい」との意見があった。各職種が自分の仕事に集中して取り組むことができる環境は大切だが、どの職種でも対応可能なことは積極的に進んで行う姿勢や意識が多職種連携につながると考える。「業務の中の重なるところ」を意識して協力し合い、職種の専門性を生かすことが必要と考える。【まとめ・課題】今回の取り組みが多くの職員において有意義であったと考えられる。その一方で、リハビリ職員以外の業務量や利用者の介助量に変化はないが、リハビリ業務に支障が出ており人員不足という課題は解決されていない。よかった点として、一定の職員間で会話の機会が増加し、多職種連携への一助となったことが挙げられる。より密な連携にしていくため、各職員が意識して他職員への情報共有を行っていく必要がある。今後も人手不足が続くことが予想されるため、情報の交換や共有を行いながら、自ら行動し個々の意識を高めていきたい。そして、利用者のできる力を引き出す誘導はリハビリの専門であり、生活の中で専門性を活かしつつより深く関わっていきたい。