講演情報

[14-O-A006-02]あなたの笑顔が見たいから固定チームケアの取り組み

*浅野 康二郎1、中居 重行1、池尾 貴子1 (1. 大阪府 社会医療法人きつこう会多根介護老人保健施設てんぽーざん)
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認知症専門棟において機能別が主流で、BPSDが表面化した利用者のケアが優先され、行動面のリスクが低い利用者のケアが後回しになりケアの片寄りが常在していた現状を固定チームケア実施により改善を試みた事を報告する。自発的に活動する利用者と、介助が必要な利用者の居室をエリア分けした。結果スタッフがその人を知り笑顔や笑いが施設生活により重要と気付いた。一方でケアプランの展開がより重要であると気付かされた。
【はじめに】コロナ窩において感染者・濃厚接触者等ゾーニングを実施する必要性があり固定チームナーシングを参考に居室を部屋分けした。その際に個々の利用者を知る事となりケアプランのケア内容展開に生かせる記録がカルテ内容に残され、ゾーニング解除後も固定チームケアを継続した。

【目的】 固定チームでケアプランを展開する

【取り組み内容】
1.ヒヤリング 現状のケア体制についての意見、コロナ渦に実施したエリア分けの感想
2.学習 固定チームケアについて(固定チームナーシングを基に) 認知症状の評価とケアの実際
3.実践

1.認知症状とケア内容別に利用者を選別
Aチーム自分で活動できない利用者が主体、そのためケア内容は主に廃用症候群予防とベッド上で過ごす時間が長いため少しでも心地よいと感じる時間を提供する
Bチーム活動的で徘徊や異食などの認知症状を呈する利用者が主体、そのため転倒により骨折などを予防しADLの維持向上を目指すこと、BPSDの緩和を図ることが主なケア内容
2.個別ケアの立案と実施

【結果】 
Aチーム  共通して存在するリスクを明確にし 介入する中、皮膚トラブル、拘縮などリスクが高いことを 改めて認識することになった。チームに分けたことで、リスクに対して焦点を当てた観察、ケアがしやすくなった。ハンドマッサージやフットケアを行うことで表情の変化や寝落ちするなどの反応から効果があったと評価できた。
面会時に家族と会話する機会を作り、利用者の趣味などを聞き出し昔の写真や好きな音楽のテープなどの持参に協力を得た事で個々に合わせた心地よいと感じる時間を提供することが出来た。 

Bチーム  個別リハビリを行うことで、多くの利用者を観ていた時には「なんとなく」でしか感じなかった利用者の変化が具体的に知る事になった。BPSDの緩和では 利用者を知るために新規入所者に対して2週間、睡眠、排泄、食事の状況を観察記録し情報を共有他の利用者には 家族面会時 情報交換した利用者の生活歴を再確認することができ、行動の意味を理解するヒントとなった
笑顔で過ごせる時間を増やすでは、思い切り体を動かした後、利用者から「疲れた」と同時に「楽しかった」と言う声があがる等「無の時間」を減らすことにつながった。嚥下体操を昼食前に実施したことで「待たされ感」を忘れ、体操を楽しみその後に食事が提供されることを覚えた利用者もいた

【まとめ】 
個別ケアは「その人を知る」ことから始まり、今回の固定チームケアの取り組みは その気づきとなった。各チーム内においても笑顔で過ごせる事がBPSD緩和に重要な役割であると改めて知る事になった。

【考察】
「笑うこと」「笑顔」は「無の時間」を減らすだけではなく「ストレスの軽減」につながると言われている。当フロアの利用者のほぼ全員に記憶障害があり、「楽しかったこと」も数時間後、数分後で忘れる事もある。だからこそ 日常的に「笑いを引き出す」のケアが提供できるチーム作り、個別性を重視したケアプランの展開をこれからも進めていきたい。