講演情報

[14-O-A006-03]介護理念に沿ったチーム創り~仲間の想いを紡ぐ為に~

*今田 俊吾1、大里 拓実1、白井 美奈子1、越前 薪1 (1. 埼玉県 介護老人保健施設高齢者ケアセンターゆらぎ)
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職員一人ひとりがフロアの介護理念を理解し、チームとして同じ方向を向いてケアができることを目指し取り組みを行った。フロアが歩んできた道のりや理念の成り立ちを職員間で共有し、職員それぞれが介護に対して大切にしていること等を伝え合った。その結果、抽象的だった理念の言葉が自分自身の想いと言葉で表現され、理念を身近に感じることができた。職員同士の理解が深まることで同じ方向を向いてケアできると考えられた。
【はじめに】
当施設には、職員一人ひとりが介護において大切にしている事、大切にしていきたい事を話し合い構築したフロアの介護理念(以下、理念)がある。しかし、現在理念に沿ったケアの提供が出来ているのだろうか、チーム全員が同じ方向を目指しケアが行われているのだろうか、という疑問がわいた。そこで、今回フロアが歩んできたケアの道のりや理念の成り立ちについて職員間で共有し、理念に立ち返り、チームケアに取り組んだ。
『3階フロアの介護理念』
・私達は、ご利用者・ご家族・職員、一人ひとりが大切な存在であると理解し、常に相手の気持ちを思いやれるケアを目指します
・私達は、ご利用者・ご家族・職員をひとつのチームと考え、お互いに信頼関係を築けるように努めます
・私達は、一人ひとりが安心・安全な生活が送れるように責任を持ったケアを目指します
・私達は、一人ひとりのプライバシーを護ります
【目的】
職員がフロアの理念を理解し、職員一人ひとりが介護について自分自身の考えや思いを伝え、お互いの理解を深める。また、チームとして同じ方向を向いてチームケアが提供できるようになる。
【対象・期間】
対象:所属フロア職員18名(看護師6名(うち非常勤1名)、介護職12名(うち非常勤1名))
期間:令和5年8月~12月
【方法】
1.全職員へ取り組みの背景や目的をカンファレンスにて伝える。
2.理念について取り組み前アンケートを実施する。
3.アンケート内容をもとに、フロアが歩んできたケアや理念の成り立ちについて職員間で共有する。
4.グループワークを行い、理念に沿って、職員一人ひとりが介護において大切にしている事等を自分自身の言葉で伝える。
5.チームの気持ちを一つにしていく為に、お互いの良いところを見つけ、それを文章化し掲示する「心合わせカード」の取り組みを行う。
6.取り組み後のアンケートを実施する。
【結果】
■取り組み前アンケート
Q1.理念を意識して仕事をしていますか?
・している      1名
・ある程度している  9名
・あまりしていない  6名
・していない     1名
Q2.理念を意識したチームケアが提供されていると思いますか?
・はい 1名 ・いいえ 16名
≪アンケート結果(一部抜粋)≫
・研修等で介護理念の重要性を学び、ある程度意識している。
・業務に追われ意識できていない現状がある。
・理念について考えたり何故理念があるのか疑問に思ったりする機会がなかった。
■取り組み後アンケート
Q1.取り組み前と比べて、理念を意識して仕事をしていますか?
・している      6名
・ある程度している 11名
・あまりしていない  1名
・していない     0名
Q2.取り組み前と比べて、理念を意識したチームケアが提供されていると思いますか?
・はい 14名 ・いいえ 3名 ・どちらともいえない 1名
≪アンケート結果(一部抜粋)≫
・理念について話し合い、理由を含めて理解できたので心がけて仕事をするようになった。
・職員同士声をかけ合い、協力し合いケアの提供をすることが増えた。
・理念に根づいたケアを行うにはまだまだ時間がかかるのではないか。
【経過・考察】
取り組み前のアンケートでは、個人としてはある程度理念を意識して仕事をしている職員もいたが、チームとしては同じ方向を向いてケアができていると感じている職員は少なかった。そこで、進むべき方向を明確にする為、フロアが歩んできたケアの道のりや理念の成り立ちについて全職員で共有し、理念の重要性について理解した。
取り組み当初は、全職員が理念を理解すればチームとしてまとまるのではないかと思っていたが、同じ方向を向いてチームケアが提供できるようになる為には、職員間の充分なコミュニケーションやお互いの理解が不可欠であると感じた。
当フロアの理念にはご利用者・ご家族だけではなく、職員一人ひとりを大切にするという内容が入っていることが特色であり、魅力だと考えている。しかし、現状の課題と掲げている理念とを重ね考えると、職員間のコミュニケーション不足、職員同士の理解の不足が課題なのではないかと感じた。
グループワークでは、理念を通して自分自身の考えや思いを自分自身の言葉で伝え合い、共感することで、よりチームの仲間を知る事ができ、“理解”とまではいかなくとも職員同士興味を持ち、理解・信頼への足掛かりになったのではないかと思う。グループワーク終了後、職員の声として「共感することが多く、チームとして頑張っていきたいと思った」「それぞれ小さな思いやりがまとまって理念となり、今日まで繋がって来たんだなと思えた」等の意見が挙がった。
心合わせカードの取り組みでは、忙しい日々の業務の中、チームの仲間に支えられていることを実感でき、仲間への感謝の気持ちやお互いに信頼し、協力し合うことが大切であるということを再認識した。しかし、ご利用者へのケアについては具体的に実践、検証することができなかった。今回の取り組みで感じたこと、再認識したことを実践に繋げていく為、今後も理念の実現を目指して話し合いを重ねていくことが必要だと考えている。
【まとめ】
理念に掲げている言葉は一つひとつ抽象的な為、職員によって様々な捉え方があった。しかし、今回の取り組みで理念の成り立ちを共有し、職員それぞれが介護に対して大切にしていること、大切にしていきたいことをお互いに伝え合ったことで、抽象的だった理念の言葉が自分自身の想いと言葉で表現され、これまでよりも理念を身近に感じることができた。また、職員同士の理解に繋がることで同じ方向を向くことが出来、新しいチームとして今後さらに前進することが出来ると確信している。今後も職員一人ひとりの想いを紡いでいき、理念に沿ってより良いチームケアを実践し、ご利用者の生活の質を高めていけるよう継続して取り組んでいきたい。