講演情報

[14-O-A007-02]Power of smile~いつも、ありがとう~

*森尾 青1、花木 優斗1 (1. 岐阜県 介護老人保健施設アルマ・マータ)
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ADLの維持向上・自立支援を目指す事で、利用者様の生活の充実に繋がると考える。その為多職種でカンファレンスを行い個々にあった日常生活を軸としたリハビリの立案実施を行った。日々の取り組みを継続することで、職員間の生活リハビリに対する意識も強くなり、個別性の高い訓練を考案するなどの自主性に繋がった取り組みについて報告をする。
【はじめに】
当施設では、「あなたらしい当たり前の生活を笑顔と真心で支えます」の施設理念のもと、多職種が共同して利用者様の在宅復帰を目指している。当フロアは認知症重度の方が多く生活されておられる為、日頃より職員が利用者様の見守りや活動の充実を図れる様に、レイアウトや取り組みなどにも工夫を行ってきた。取り組みを行っていく中で、在宅復帰を目指すには利用者様のADL維持向上がとても重要になると考える。ADL維持向上は、セラピストが行う限られた時間内のリハビリだけでは限界がある。そこで日々の関わりの中で活動量を上げADL維持向上・自立支援に繋がる様セラピストと連携を図り、介護、看護職も日常生活を軸としたリハビリを立案実施する取り組みについて報告をする。

【方法・実施内容】
セラピストから日常生活を軸と考えた生活リハビリメニューの提案・助言を基に、職員間で取り組みを共有できる様に生活リハビリ表・実施表を作成し見える化する。
一ヶ月に一回、カンファレンスを行い取り組みの結果など共有し、状態に合わせたメニューの修正を行う。
集団体操・足浴・フロア内歩行・折り紙・塗り絵など個々に合わせたメニューの中から選択して実施出来る様にする。セラピスト・看介護職員・利用者様で、取り組みやすい壁面制作方法を話合い実践。
トイレ動作・移乗動作など直接介助するにあたってのアドバイス及び確認を行いスタッフ間で共有。
生活の充実や多様性を考え、様々な種類の本を設置しその中から選択できる様にする。
生活リハビリの活動写真の掲示・作成した作品を展示する。
トイレの場所が分からなくなってしまうご利用者に対してトイレの看板を制作。トイレがどこにあるのかという事を分かりやすく、見えやすく表示する。また、車椅子のご利用者でも見えやすい様にトイレの看板を低い場所に設置する。

【結果】
多職種連携の視点では、セラピストと情報共有が以前より強くなったと感じる。
情報共有の時間に関しては、フロア会議などまとまった時間だけではなく、普段の業務の中で互いに気兼ねなくコミュニケーションをとる時間が増えている。このような機会が増える事で利用者様の全体像を多職種の視点から見ることが出来、生活の質の向上に繋がっていると思われる。
個々に合わせた生活リハビリのメニューから選択できることで利用者様の得意、不得意が分かり適切な生活リハビリメニュー提供に繋げることが出来た。セラピストと考案した生活リハビリを表にして見える化をする事で職員間での取り組み意識にもなった。
所々に配置した文庫の中から興味のある物を手に取り読書をされる方、歩行訓練を行いながら作品の掲示を見て自分たちも作成してみたい。生活リハビリの一環で行った調理レクの写真を観て「次はもっと美味しいものが食べたい。」「昔よく食べていた、焼きそばがもう一度、食べたい。」などの会話から活動への意欲など感じる。
生活環境を整える事により、利用者様の選択の場が増えた。自己選択する事で、活動性も上がり利用者様の表情がとても明るくなったと感じる。
多職種と利用者様で取り組む、壁面制作は季節に合わせた物を選択し、グループで行う事で、利用者様同士の季節の話にちなんだ、昔話などを楽しまれお互いに良い関係を築く事もできる。そして、利用者様がトイレを探す為に他利用者様の居室に入ってしまい、物を盗られた等、トラブルになる事があったが、トイレを見える化した事によって、そのようなトラブルが減少、利用者様も迷うことなくトイレを使用することが出来ている。リハビリ(フロア内歩行)の途中でも、利用者様から「こんな所にトイレがあったのか、ついでに寄って行くわ」と自己にてトイレに行こうとされる事が増えた。
以上のような取り組みを実施する事で、車いす使用をされていた利用者様が歩行器へ移行し移動後は椅子に座り生活する事ができた。他にも利用者様の転倒が減少。不穏になってしまう利用者様が減少した事に繋げることが出来た。

【終わりに】
在宅復帰を目指す施設として、利用者様一人一人の状態や状況を把握し、ADL維持向上・生活の向上の為にケアを提供する様、リハビリ職員との積極的なコミュニケーションを図り、連携する事で、目標に向かい一緒に働く事の必要性を改めて感じた。リハビリメニューの充実化を図ることによって、利用者様自らリハビリに取り組む姿勢が見られるようになった。職員間でも、生活リハビリに対する意識が強くなり、その方に合ったリハビリを考える等の自主性にも繋がるようになった。
生活リハビリでは、利用者様の日常生活をリハビリの機会であると捉えて実施する事が必要になってきている。
以前は当たり前に行っていた本人様にとっての「意欲のある作業、やりがいのある作業」を掘り起こし、それを再獲得する事により、再度、生き生きとしたその人らしい生活を取り戻す事が可能であると感じた。
介護老人保健施設の強みでもある、多職種の連携を意識した取り組みの強化を今後も継続的に行っていきたい。
日常生活のサポートをさせて頂く中で見えてきた課題に対し自分たちのフロアや職種だけで考えるのではなく、職種を越えて、時には部署を越えてディスカッションする場が増える事で、利用者様の生活の質の向上に繋がると考える。これからも生活リハビリを充実化させ、利用者様一人一人のあたりまえの生活を笑顔と真心で支えられる様に、多職種で連携して取り組んできたい。