講演情報

[14-O-A007-03]他部署業務?全体業務?~チームの為に出来る事~

*花村 敦1 (1. 長野県 介護老人保健施設ローズガーデン)
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近年老健の特養化という声が聞かれ、食事介助等必要な利用者が増加している。リハビリ職員も介助に入る場面が増えているが、状態把握や他職種との連携が行いやすくなったため、報告する。今回は職員に対する意見の聴取を行った。結果業務調整なども必要だが、横の繋がりがスムーズとなった。また、介護業務の継続で介護福祉士の所得に繋がった。今後の人材確保の為にもキャリアアップに繋がったことは大きいと考えられる。
【目的】近年「老健が特養化してきている」という声を聞くことが多い。当施設でも元々の要介護度が高い利用者や、長期利用中に加齢等により要介護度が高くなってしまう利用者がいる。そのため、食事など介助が必要な利用者も増えており、リハビリ職員も食事介助に入る場面が増えている。通常のリハビリ業務を行いつつのため業務調整なども必要だが、利用者の状態把握や他職種との意見交換が行え、連携が行いやすくなった。また、介護業務を継続して行うことで介護福祉士の取得に繋がったため、報告したいと思う。
【本論】LIFEフィードバック情報によると、全国の老健入所者に占める要介護4・5の割合は44%であり、当施設の場合は58%(ともに2024年3月登録情報参照)と高値となっている。当施設では、日常生活に介助が必要な機会が増加し、特に食事の際に介助が必要な利用者の増加がみられた。そのため、朝や夕方など介護職員が不足しやすい時間帯の食事介助で利用者に付ききれない状況が出てきていた。食事介助が必要となる利用者の場合食事摂取の時間も長くなりやすく、その後の下膳や口腔ケアにかかる時間も遅れてしまいやすい。そこで、リハビリ職員でも食事介助や下膳作業を行い、施設全体の業務効率化を図った。元々の出勤時間は8:30からであるが、出勤時間を30分早めて出勤する早番勤務を設定することや、全体の出勤時間を8:15からとすること等も行っている。介護業務をリハビリ課でも行うことにより、専門職としての職域の問題や本来のリハビリ業務を圧迫しやすい事、またそれによる残業のリスク等デメリットも生じたが、現状メリットも大きく継続が出来ている。
具体的なデメリットとしてまずは職域の問題である。それぞれが専門職として勤務する中での職域の問題に関しては、リハビリ課内でも話し合いを行い食事介助の介入は行っていく方向となった。本来リハビリ業務として、食事の際のポジショニングや摂取方法の設定等は行っている。そこで、その延長線上としての食事介助の関りは行えるようにしている。一方、食後の口腔ケアやオムツ交換などは現在関わっていない。また勤務時間に関して、早番や全体の出勤時間を早める対応は、その時間帯での出勤が可能かの確認も行いリハビリ課職員の負担になりにくいように調整を行っている。デイケア担当のリハビリ職員は8:30-17:30の出勤のままとすることで、入所担当職員が朝食や昼食の介助を行い、デイケア担当職員が夕方(早夕の利用者)の介助を行うことで業務分担を行っている。それにより、それぞれが無理の少ない範囲での食事介助への関わりが行えているため、現在まで継続出来ているのではないかと思われる。
メリットとしては、職場として一日の流れがスムーズになることはもちろんだが、利用者それぞれに余裕をもって関われるようになったことや日常の食事摂取時の経過が追いやすくなったことなどが挙げられる。また、食事の時間にリハビリ職員が同じ空間にいることで介護職員からリハビリ職員への声掛けが行いやすくなったことにより、横の連携が取りやすくなったことも挙げられる。そして、介護業務へ携わることのより、リハビリ職員にて介護福祉士の所得も行えた。具体的には、まず食事時間帯に関われる職員数が増えるため、それぞれの利用者に余裕をもって関われるようになった。個々の集中の度合いや食事の拒否などで充分に摂取が進まない利用者も多いが、個人個人に長い時間関われるようになり摂取の促しが行え、結果として食事摂取量の改善が図りやすくなった。また、リハビリ時や食事評価時以外の毎日の関りが増えたため、摂取時のムラ等が把握しやすくもなった。これに関しては、元々食事状況は他部署情報として聴取することが多かったが、現在は直接得た情報として部署内での状態把握も行えている。横のつながりに関しては、先述の経過観察や日々のムラにも繋がる部分だが、リハビリ職員の食事評価やポジショニングの設定を行ったタイミングと状況が違う日もある。体調のムラも考慮してポジショニング提示はしているが、その場で介護職員がリハビリ職員へ声掛けが行いやすい点は大きいと思われる。以前は食事が終わりその後の報告として聞くことが多かったため、介護職員とリハビリ職員の間で食事摂取場面の状態把握が違うこともあった。それに比較すると、その場で同じ状態を確認しつつ会話ができることは大きなメリットとなった。また、同じ空間にいることが増えたため、以前よりも職種間での会話も増え小さな相談なども上がりやすくなったように思われる。その際、日々の関りの増加により介護職員の視点も意識して会話が行いやすくなった。最後にリハビリ職員による介護福祉士国家資格の所得に関してである。出勤後すぐからの食事介助や、昼食や夕食の介助など1日の中で1時間ほどは介護業務を行っていることが分かった。人員基準上リハビリ職員は100対1でよく、超強化型老健の算定に関しても5人いればポイント上限となる。そこで、リハビリ職員の中から数人は介護業務を辞令として交付し1時間程度の兼任とした。3年間は継続する必要はあるが、その間に実務者研修等必要な研修を行い、2024年1月実施の介護福祉士国家試験にて4名の合格という実績が作れた。これにより、介護職員処遇改善加算等の介護福祉士の人数が算定要件となる加算での給与面の改善が図れるなど、職員全体のモチベーションアップにも繋がってくると思われる。
【結論】リハビリの日常業務の中に食事介助を組み込むことは業務負担や職域の問題から反対意見もあった。しかし、継続して行うことでメリットも見つけることができた。今後も介護士は慢性的な不足が心配されている。そのため、職場全体で利用者を支えていく気持ちを持ちつつ、利用者・職員ともに充実した日常が送れるよう過ごしていきたい。