講演情報

[14-O-A007-04]チーム力UPを目指す取り組み

*中村 あずみ1、山口 美名子1 (1. 愛知県 医療法人幸会老人保健施設みず里)
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チームビルディングを目的とし、取り組みとして自己紹介や新たな発見・仕事の中でよいと思ったことをGOOD&NEWとして掲示した。その結果スタッフ間の声掛けが増えたことにより、情報の共有ができチームの連携の向上につながった。スタッフが互いを知り、出来事を共有する機会を作るなど、チームの成長に向け試行錯誤した取り組みを報告する。
【はじめに】 コロナ禍で交流が制限され、チームの連携不足が課題となっていた。そこでチームビルディングを目的にタックマンモデルを活用し、取り組みとして自己紹介や新たな発見・仕事の中でよいと思ったことをGOOD&NEWとして掲示した。その結果スタッフ間の声掛けが増えたことにより、情報の共有やチームの連携の向上に繋がった。スタッフが互いを知り、出来事を共有する機会を作るなど、チームの成長に向け試行錯誤した取り組みを報告する。【目標】 スタッフ間での声掛けが増える【期間】 令和5年7月~現在【実施内容】(1)自己紹介コーナーの作成(2)GOOD&NEWの実施(3)事前事後アンケートと聞き取りによる評価【経過】(1)自己紹介コーナーの作成フロアスタッフ全員に用紙を配布し「趣味」「最近はまっている事」「好きな食べ物」等から選んだ3項目とフリースペースに各自好きな内容を記入してもらい、詰所内の休憩室に掲示した。【結果】後日スタッフに行った聞き取りから「会話に繋がったスタッフは一部だった」との意見もあったが、一方で「自己紹介をみて話しかけてくれるスタッフがいて嬉しかった」「会話の機会が増えた」との声があがった。(2)GOOD&NEWの実施1か月目は、仕事中での出来事から「共有したいと感じた新しい発見(NEW)や良かった(GOOD)と思ったエピソード」や、「こんな声掛けがあって嬉しかった・助かったというエピソード」等のテーマで発表をするという取り組みを行った。事前に当日出勤者より2名発表者を決めて、週2回5分程度で実施する。当日出勤者は詰所に集まり発表を聞き、発表後には全員で拍手をすることで話しやすい雰囲気づくりを行った。参加できなかったスタッフの為に発表した内容は詰所内に掲示した。2か月目以降からは、本来の目的でもあった「業務に特化した声掛けや気づきについて」に絞り発表していった。【結果】1か月経過し利用者様に関する気づきや、温かいエピソードが集まり、「掲示スペースを見ることで忙しい中でもほっとした気持ちになることができた」「どんなことが書いてあるのか見るのが楽しみ」「会話が増えた」「発表は緊張するけれど共感してもらえ安心した」という明るい意見がみられ、スタッフが自主的にメッセージを貼り出す姿も見られるようになった。2か月経過し「入浴時、浴室にいるスタッフとフロアにいるスタッフがもっと連携を取れないか」という発表があり、詰所に入浴の順番を共有するためのボードを設置する意見がその場で出た。後日実際にボードを作成したことで以前より入浴介助がスムーズに進むようになった。また、介助時の共有不足を補うためどうすればいいのかという発信から話し合い業務改善につながった。みんなの発信から業務の検討するようになったことで、「食堂準備してきます」「離床奥からはいります」等の具体的な声掛けが増えてきたという意見があった。(3)スライド参照【考察】タックマンモデルにおける成長段階の中で、この時私たちは混乱期に属していた。混乱期では「自己開示」「他者受容」のため、互いの特性を知る、本音で話す、自分と異なる考えを受け入れることが必要であり、メンバー同士が恐れず議論を交わすことが課題解決に必要とされている。しかし、本来形成期で獲得できていたはずのコミュニケーションの基盤がコロナ禍によって損なわれつつあったため、まず初めに(1)自己紹介コーナーの作成に取り組んだ。この取り組みは、業務の多忙さやコロナ禍の影響もあり、大きくコミュニケーション量を増やす結果とはならなかったが、スタッフ相互の関心が増え、会話のきっかけづくりになったと思われる。(2)GOOD&NEWの実施では、その都度評価しながら内容を変更し、業務に特化したIメッセージを加えた。ただ気づきや思いを伝えるのではなく、相手を尊重しながら自分の思いを伝えることで、それぞれの価値観を大切にしながら発信ができたことがアンケート結果からもうかがえた。また、気づきの中で業務検討についての発信もあり、どうすればスムーズに業務が行えるかの検討にもつながった。これらは、機能期での高いパフォーマンスの発揮を目指す中で、統一期に向かう大きな一歩となったのではないか。チームの成長への必須要件としてクリアすべく設定した「スタッフ間での声掛けが増える」という分かりやすい目標はチームメンバーが共有しやすく、同じ方向を向きぶれることの無い取り組みができた。一方で、チームのメンバー一人ひとり意識や経験が違う中、業務改善に向けた課題を共有しても実施の熱量に差があり、発表の取り組みを忘れてしまう日や、行動変容に繋げられていない場面もみられたことが、アンケートのいくつかの問いではあまり変化が見られなかった結果として現れた可能性がある。コロナ禍だけでなく、スタッフの異動や新人の入職など、コミュニケーションのあり方に影響する様々な要因により形成期へと戻ることもあるため、スタッフが互いに新奇歓迎の気持ちを持ちながら、再構築していくことが求められる。また、チーム全体の成長に向け、改めて日々の連携や声掛けの重要性を感じた。残された課題はあるが、取り組みの具体的な成果の実感が意識の統一にも向かって、チーム全体の士気を高めることができた。【終わりに】チームビルディングをしていく中で同じ目標を共有し、個々の特性を生かしていくことが望まれるが、目標に向かう個々のアプローチやプロセスを知ることで、相手の考えを尊重し、自分の思いを相手に伝える必要性を感じた。チームの連携が上手くいかないことによる弊害はスタッフだけでなく利用者様にも影響を及ぼしてしまう恐れがある。今後もチームの連携を高めていく取り組みを続けていき、チーム一丸となって利用者様により良いケアを行えるようにしていきたい。