講演情報
[14-O-A007-05]骨粗鬆症チーム立ち上げから未来へ~老健における骨々(コツコツ)ケアへの気づき~
*岡崎 雄司1、長尾 雅裕1、鈴木 由紀江1、岩野 亜紀1、島根 さやか1、大山 祥子1 (1. 埼玉県 介護老人保健施設 翔寿苑)
法人内の骨粗鬆症研修で『薬剤・栄養・運動』の3本柱による治療の必要性を学んだことをきっかけに、施設内でも利用者のQOL向上を目的とし骨粗鬆症チームを立ち上げた。その後、骨粗鬆症についての学びや気づきを経て、モチベーションの変化もあり大きな一歩となった。今後も目的達成のために多職種による取り組みをコツコツ(骨々)と積み重ねていく予定であるが、一つの節目として現在までの歩みや取り組みを報告する。
【はじめに】
当施設は医療法人眞幸会草加松原整形外科医院を母体とし、1996年開設、入所定員108名(一般棟54名・認知症専門棟54名)、通所定員60名の在宅強化型の施設である。今回、法人内の医療部門からの影響を受けスタートした多職種協働による骨粗鬆症チームの立ち上げと今後の取り組みについて報告する。
【法人内の取り組み】
令和5年9月 医療部門にてOLS(骨粗鬆症リエゾンサービス)チームを立ち上げる。
※骨粗鬆症マネージャー取得を推進(うち3名は令和5年度取得済)
これまでも、医療部門と介護部門の連携として、職員の交換研修や委員会での交流などを行っていた。今回、医療部門で取り組んだことが介護部門でも活用できるようOLSチームから骨粗鬆症に関する研修会の提案があり、全3回の研修で『薬剤・栄養・運動』という治療の3本柱を学んだ。
【翔寿苑骨粗鬆症チーム立ち上げのきっかけ】
研修を受ける前は、骨粗鬆症は高齢者によくある病気の一つとして、大きなリスクは感じていなかったが、研修を受け、骨粗鬆症のリスクによって、その後の人生(寝たきり、健康寿命、死亡率等)に大きな変化をもたらす可能性のある恐ろしい病気であるということを認識した。また、今までは転倒原因や転倒回避策など転倒へのアプローチだったが、骨折しにくい身体作りという内面(骨)へのアプローチも重要であることを学び、多職種での骨粗鬆症チームを立ち上げるに至った。
「骨粗鬆症チーム立ち上げメンバー」
看護師1名、介護福祉士4名、作業療法士1名、管理栄養士1名
【目的と目標】
利用者の骨粗鬆症による転倒や骨折などの不利益(骨折による痛みや治療中のADL低下などにより辛い思いをする)を予防し、転倒事故による「骨折」件数を減らし、生活の質を向上することを目的とし、達成のために『骨粗鬆症を学ぶ、広める、活用する』ことを目標とした。
【現在までの学びと今後の展望】
基本を学びや知識を得たことで、これから活用していきたいと思っていることを以下に列記する。
「列記方法」
学んでいく中で気づいたこと・知ったこと
→広めたいこと・活用していきたいこと
1) 骨粗鬆症予防には、薬剤・栄養・運動による治療の継続が要であり日々の生活の中でコツコツと続けて予防できることがある。
→医療で行っている治療(内服・注射)を入所後も継続することが望ましいが、入所中は医療費がまるめであるため、できる治療にはどうしても制限があるのが現状である。そのため、内服状況を把握、評価し、栄養・運動へのアプローチも重要であると意識が変わった。
→骨粗鬆症予防に効果的な栄養素や食事を職員や利用者にもっと身近に感じ意識してもらいたいと思い、骨代謝に重要な栄養素(主にカルシウム、ビタミンD、K、たんぱく質など)を取り入れた、題して『骨々メニュー』を導入していきたい。
→運動することで高齢者であっても少なからず筋肉量が増え転びにくくなり転倒による骨折を減らすため、利用者にも簡単にできる『骨々体操』を提供し楽しく運動を続けてもらいたい。
→日光浴は屋外散歩等で全身に浴びなくとも手の平に浴びるだけでも吸収されることを知り、手軽にできる予防の一つとしてすでに取りいれている。
2) 法人内で「骨粗鬆症意識調査」を行った結果、介護部門の正答率は約70%であり、骨粗鬆症の知名度に比して正しい知識を知らない職員が多い事が分かった。
→理解や知識を深めるため内部研修を開催する。
3) 骨粗鬆症により一度骨折(一次骨折)をすると二度目の骨折(二次骨折)へのリスクが高まり骨折の連鎖を引き起こしADL、QOLの低下に繋がる。
→実際に骨密度を測って数値化をしたり骨折歴や内服薬から高リスク者を選定し骨折要注意者として職員間で共有をしていきたい。また骨密度の数値を調べてみたい。
4) 骨粗鬆症学会による骨粗鬆症マネージャー制度の存在を知り、介護福祉士、管理栄養士、の取得割合の低さを知った。
→医療的な側面から医療系の職種の取得率が多いが、急性期から維持期への治療の継続の必要性から、専門的な知識を得て日々のケアに落とし込めるよう、まずは介護福祉士と管理栄養士が資格取得を目指している。
5) 骨粗鬆症は歯周病になりやすく、悪化すると顎骨骨隨炎や顎骨壊死を引き起こすことがある。
→歯科衛生士と連携し、適切な口腔ケアを実施することで予防へ繋げていく。
6) 骨折しにくい身体づくりの目安として骨密度を把握したいが、入所中の利用者が測定するにはコスト面の課題がある事が分かった。
→リピート利用の方には退所時や再入所前に医療機関で骨密度測定をしてもらい、在宅や施設での生活における意識を高めてもらいたい。長期入所の方には当施設にある「In Body」を活用し転倒予防に繋がる筋肉量の変化などを測定し数値化することで、骨密度測定の代替手段として活用できるかを検討していきたい。
7) 大腿骨近位部骨折の1年後の死亡率が10.1%というハイリスクは一般的に知られていない。
→施設広報誌やHPなどで情報を発信し、ご家族にも正しい知識をもってもらいたい。
【終わりに】
骨粗鬆症チームとしてはまだまだ知識不足ではあるが、発足から1年足らずで前述した学びや気づきを得たことは、大きな一歩・確かな成果と感じている。
現状は課題も多く、今後も継続して学びや気づきを得ること、多職種協働による日々の支援が大切であることから、骨粗鬆症チームの目的を達成するために、今後も取り組みをコツコツ(骨々)と積み重ね、利用者の笑顔に繋げていきたい。
当施設は医療法人眞幸会草加松原整形外科医院を母体とし、1996年開設、入所定員108名(一般棟54名・認知症専門棟54名)、通所定員60名の在宅強化型の施設である。今回、法人内の医療部門からの影響を受けスタートした多職種協働による骨粗鬆症チームの立ち上げと今後の取り組みについて報告する。
【法人内の取り組み】
令和5年9月 医療部門にてOLS(骨粗鬆症リエゾンサービス)チームを立ち上げる。
※骨粗鬆症マネージャー取得を推進(うち3名は令和5年度取得済)
これまでも、医療部門と介護部門の連携として、職員の交換研修や委員会での交流などを行っていた。今回、医療部門で取り組んだことが介護部門でも活用できるようOLSチームから骨粗鬆症に関する研修会の提案があり、全3回の研修で『薬剤・栄養・運動』という治療の3本柱を学んだ。
【翔寿苑骨粗鬆症チーム立ち上げのきっかけ】
研修を受ける前は、骨粗鬆症は高齢者によくある病気の一つとして、大きなリスクは感じていなかったが、研修を受け、骨粗鬆症のリスクによって、その後の人生(寝たきり、健康寿命、死亡率等)に大きな変化をもたらす可能性のある恐ろしい病気であるということを認識した。また、今までは転倒原因や転倒回避策など転倒へのアプローチだったが、骨折しにくい身体作りという内面(骨)へのアプローチも重要であることを学び、多職種での骨粗鬆症チームを立ち上げるに至った。
「骨粗鬆症チーム立ち上げメンバー」
看護師1名、介護福祉士4名、作業療法士1名、管理栄養士1名
【目的と目標】
利用者の骨粗鬆症による転倒や骨折などの不利益(骨折による痛みや治療中のADL低下などにより辛い思いをする)を予防し、転倒事故による「骨折」件数を減らし、生活の質を向上することを目的とし、達成のために『骨粗鬆症を学ぶ、広める、活用する』ことを目標とした。
【現在までの学びと今後の展望】
基本を学びや知識を得たことで、これから活用していきたいと思っていることを以下に列記する。
「列記方法」
学んでいく中で気づいたこと・知ったこと
→広めたいこと・活用していきたいこと
1) 骨粗鬆症予防には、薬剤・栄養・運動による治療の継続が要であり日々の生活の中でコツコツと続けて予防できることがある。
→医療で行っている治療(内服・注射)を入所後も継続することが望ましいが、入所中は医療費がまるめであるため、できる治療にはどうしても制限があるのが現状である。そのため、内服状況を把握、評価し、栄養・運動へのアプローチも重要であると意識が変わった。
→骨粗鬆症予防に効果的な栄養素や食事を職員や利用者にもっと身近に感じ意識してもらいたいと思い、骨代謝に重要な栄養素(主にカルシウム、ビタミンD、K、たんぱく質など)を取り入れた、題して『骨々メニュー』を導入していきたい。
→運動することで高齢者であっても少なからず筋肉量が増え転びにくくなり転倒による骨折を減らすため、利用者にも簡単にできる『骨々体操』を提供し楽しく運動を続けてもらいたい。
→日光浴は屋外散歩等で全身に浴びなくとも手の平に浴びるだけでも吸収されることを知り、手軽にできる予防の一つとしてすでに取りいれている。
2) 法人内で「骨粗鬆症意識調査」を行った結果、介護部門の正答率は約70%であり、骨粗鬆症の知名度に比して正しい知識を知らない職員が多い事が分かった。
→理解や知識を深めるため内部研修を開催する。
3) 骨粗鬆症により一度骨折(一次骨折)をすると二度目の骨折(二次骨折)へのリスクが高まり骨折の連鎖を引き起こしADL、QOLの低下に繋がる。
→実際に骨密度を測って数値化をしたり骨折歴や内服薬から高リスク者を選定し骨折要注意者として職員間で共有をしていきたい。また骨密度の数値を調べてみたい。
4) 骨粗鬆症学会による骨粗鬆症マネージャー制度の存在を知り、介護福祉士、管理栄養士、の取得割合の低さを知った。
→医療的な側面から医療系の職種の取得率が多いが、急性期から維持期への治療の継続の必要性から、専門的な知識を得て日々のケアに落とし込めるよう、まずは介護福祉士と管理栄養士が資格取得を目指している。
5) 骨粗鬆症は歯周病になりやすく、悪化すると顎骨骨隨炎や顎骨壊死を引き起こすことがある。
→歯科衛生士と連携し、適切な口腔ケアを実施することで予防へ繋げていく。
6) 骨折しにくい身体づくりの目安として骨密度を把握したいが、入所中の利用者が測定するにはコスト面の課題がある事が分かった。
→リピート利用の方には退所時や再入所前に医療機関で骨密度測定をしてもらい、在宅や施設での生活における意識を高めてもらいたい。長期入所の方には当施設にある「In Body」を活用し転倒予防に繋がる筋肉量の変化などを測定し数値化することで、骨密度測定の代替手段として活用できるかを検討していきたい。
7) 大腿骨近位部骨折の1年後の死亡率が10.1%というハイリスクは一般的に知られていない。
→施設広報誌やHPなどで情報を発信し、ご家族にも正しい知識をもってもらいたい。
【終わりに】
骨粗鬆症チームとしてはまだまだ知識不足ではあるが、発足から1年足らずで前述した学びや気づきを得たことは、大きな一歩・確かな成果と感じている。
現状は課題も多く、今後も継続して学びや気づきを得ること、多職種協働による日々の支援が大切であることから、骨粗鬆症チームの目的を達成するために、今後も取り組みをコツコツ(骨々)と積み重ね、利用者の笑顔に繋げていきたい。