講演情報

[14-O-I001-03]オーラルフレイルから脱却し、食生活を向上しよう

*菅原 太一1 (1. 神奈川県 リハリゾート青葉)
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当施設にて普段食事前に行っている嚥下体操をより細かく正確に行うことによってオーラルフレイルから脱却し、現在の食事形態のままおいしい食事をとり続けられるか検証した結果を報告する。
【はじめに】
オーラルフレイルとは、口のフレイル(虚弱)という意味の造語である。噛む、飲み込む、話したりする為の口腔機能が低下するとオーラルフレイルとなり、誤嚥性肺炎、死亡リスクが高くなる。
当施設にて食事前に行っている嚥下体操をより細かく正確に行うことでオーラルフレイルから脱却し、現在の食事形態のままおいしい食事を続けられるか検証した。
【研究目的】
オーラルフレイルから脱却し、口腔機能、心身機能を向上させ、おいしい食事をとり続ける。
【研究方法】
1研究期間 令和5年11月~令和6年3月
2研究場所 介護老人保健施設 リハリゾート青葉
3研究対象者 80歳 女性 要介護4 既往歴 パーキンソン病、老人性うつ病、狭心症 仮面様顔貌あり。発語はどもる、小さな声でボソボソと話す。自力摂取可能、食事時箸とスプーン、食事エプロン使用飲水時、トロミは使っていないが時々むせ込みがある。食べこぼし多く、咀嚼がうまくいかないときがある。試しで水分にトロミを使用し提供したが、味が変わりご本人強く拒否。主食は軟飯からおかゆへの変更を拒否、副食も細かくしてほしくないと強い要望があり。副食は常菜一口大にて提供。
【具体的な取り組み】
1口、舌の動きをスムーズにする体操
1口を5秒間すぼめ、口を「イ~。」と5秒間横に開く。
2ほほを膨らませてブクブクを10回行う。
3舌を左のほほの内側に強く押し当て、自分の指で口の中の舌の先をほほの上から10回押しあてる。右のほほも同じように行う。
4「パ・タ・カ・ラ」とゆっくり5回、少し早めに5回発音。
5指数本を耳の前(上の奥歯あたり)に当て、10回円を描くように左右マッサージをする。
6顎の中心あたりの柔らかい部分に両手の親指をそろえて当て、上方向にゆっくり押し当てる。トータル10回
2嚥下機能をつける体操
1ゆっくり大きなお口を開け10秒間維持し、舌を少し出したまま口を閉じてつばを飲み込む。
活舌を良くする体操
1早口言葉 (生麦 生米 生卵、隣の客はよく柿食う客だ)3回ずつ行う。
4舌トレーニング
1舌を下あごの先を触るつもりで伸ばす。
2舌で鼻の頭を触るつもりで伸ばす。
3舌を左右に伸ばし、お口の周りをぐるりと動かす。
4スプーンを使って舌に当てて押し、その力に抵抗するように舌を上げる。
ご本人やご家族にご承諾を得て、毎食前に上記の【具体的な取り組み】を実施。
【結果及び考察】
1結果
・訓練を始めた頃は。ご自身で舌を使う体操がスムーズに行うことができず、体操が消極的になり、最後までできなかったことがあった。確実にできるところはこちらでサポートしながらゆっくり時間をかけて行い、2か月目に入ったころから舌の体操が少しずつできるようになり、一通り体操ができる日が少しずつ増えてきた。
2か月半がたったころから期間終了まで途中で終了することなく最後まで続けられるようになった。研究期間5か月間。その日の覚醒状況や気分にもよるが、朝食前の体操の拒否が週に2~3回あり、昼食前と夕食前はほとんど行うことができた。
・研究前の朝、昼、夕食の摂取量が平均主食、副食共に3~5割程度だったのが4か月後には平均6~8割程度まで上昇。体重は増えることなく横ばい状態となった。
・水分によるむせ込みはゆっくり摂取されていても時々見られたが、現在たまにむせ込みはありますが少なくなっていると考える。現在水分にトロミを使用。
・手指の動き(特に親指)が少しずつですが良くなってきており、咀嚼も多少よくなり、食べこぼしもまだあるが訓練前より少なくなっており改善できた。
・現在誤嚥性肺炎は発症せず。
・ご本人もがんばればできると自信を持つことができ、笑顔が少しずつであるが増えた。
・発語の改善は見られず、現状維持にて経過している。
2考察
 今回の研究を行い、ご本人の努力により少しずつではありますが改善に向かっていることがわかった。
食事摂取量が増えただけでなく、コミュニケーションをとると笑顔になる回数が増え、ご自身から話す回数も増えた。オーラルフレイルから脱却できるまでには5か月では足りず、パーキンソン病を患っているご本人の体調にもよりますがもっと長期的に訓練していかないと完璧な脱却は難しいと考えます。
訓練期間の終盤にご本人から「同じ訓練に飽きてきた。」と訴えがあった。ご本人を飽きさせない為には時々訓練の内容を変更し継続できるようにしていかなければならないと感じた。ご自身でできなかったことができるようになったことでこちら側がほめるとやる気になった部分を感じ取ることができた。
今回介護士だけで考えて訓練を行ってみましたが、ケアスタッフが他のご利用者にも同じ訓練をしているところを見かけたので意識づけにもなった。今回は対象者一人に対して訓練したが、今後全員のご利用者に行う場合どのような体操が効果あるのか色々試していき、他部署のスタッフと協力し、訓練していけばもっと効果があるのではないかと思った。
【まとめ】 
高齢者施設では、食事前にパ・タ・カ・ラ体操、早口言葉、体操などを実施しているところが多いと思った。舌や頬を刺激することにより誤嚥を防止するだけでなく、個人差はありますが顔の表情や発声にも効果がある。
「オーラルフレイル」は、全体的なフレイル進行の前兆として指摘されている。しかし、早いうちに適切な対策をすることで状態を改善できるのです。日々の積み重ねがとても大切である。おろそかになるとすぐに口腔機能が低下し、心身機能にも影響している。対象者とサポートする側がお互いに楽しく、飽きずに工夫をした体操をすることで長期的に続けることができると考える。今後もご利用者に適した訓練を追求していき、日々昇進していく。