講演情報

[14-O-I001-04]口腔ケアで変わる未来最後まで食べるを大切に

*工藤 望美1、前田 慶美1、松井 美智子1、高橋 昌子1、田中 舞衣子1、長谷川 豊子1 (1. 千葉県 介護老人保健施設 ユー・アイ久楽部)
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口腔ケアを狭義の口腔ケア(歯磨き)として捉えるのではなく、広義の口腔ケア(身体機能の維持向上)と捉えることで職員の意識改革をし、口腔・身体機能の維持向上を目指す中で様々な変化が起こったので報告する。口腔用品・環境の見直しをし、歯科受診の有効活用を行った。その結果少しずつ口腔環境・機能に変化が出始め、職員の意識の変化に繋がった。そして最後の時を迎えるまで経口摂取の継続につながったと考えられる。
【はじめに】
 日々の業務の中で「口腔ケア」は歯磨きや口腔内のトラブル予防などの口の中をきれいにする為に必要な事で、「歯は磨いていればいい」「入れ歯は入れていればいい」という認識でした。
 しかし、「口腔ケア」は身体機能維持・向上にもかかわりがある事を知り、取り組み方を改善することで当施設のご利用者様が、楽しく・元気に・最後まで好きなものを食べていただけるのではないかと考えました。
 実際に取り組みを始めて様々な変化が起こったので報告します。
【目的】
 1日3回の口腔ケアを狭義の口腔ケア(口腔の清掃)としてだけで捉えるのではなく、広義の口腔ケア(身体機能の維持向上)と捉えることで、職員の意識改革をし、口腔機能・身体機能の維持向上を目指す。
【方法】
(1)口腔用品の見直しと口腔ケアの重要性の周知
 うがいが上手く出来ないご利用者様が多い中で口腔内の残渣物をより短時間で負担がかからないようにケアする為、何度もうがいが必要な歯磨き粉を洗口液に変更し、歯ブラシのみの口腔ケアからスポンジブラシや歯間ブラシを取り入れ個人にあった方法を考える。
 職員に口腔ケアがなぜ必要かという知識を広げる。
(2)口腔環境の見直し
 物をきちんと噛んで食べられる状態の口腔環境か(使っている義歯に不具合はないか。歯周病等で歯や歯茎が弱っていないか)観察する。
(3)訪問歯科の有効活用
 当施設では毎週1回訪問歯科診療を行っていた為、今までご利用者様の訴えや明らかな義歯の欠損等が無い限り歯科受診をしなかったが、入所時診察と日々の関りの中で出て来た問題点の改善の為に歯科受診を行う。
【結果】
(1) 洗口液使用により口の中のさっぱり感を残せた。
 個々の必要に応じてスポンジブラシ、歯間ブラシを併用することで短い時間で残渣物を取り除き、うがいの水でむせるという事がなくなった。
 職員への周知には時間がかかったが研修を行ったり、日々のかかわりの中で口腔指導を行うことで、意識が少しずつ変わり始めた。その積み重ねによって観察することの大切さや着眼点が変わり新たな問題の発見にもつながるようになった。
(2)きちんと歯や義歯が使えているかを食事時に観察したところ、義歯が緩くて外れてしまう、歯が痛くて(虫歯や歯周病の為)しっかり噛めない利用者様が多くみられた。そのために食形態を下げて食事の提供を行う事もあった。
(3) (1)(2)のかかわりを行う中でどうしたらもっと良いケアが出来るか検討し、義歯調整や専門の口腔ケアを受けることで問題の解決につながった。
 また、職員が歯科医や歯科衛生士と関りを持つことで日々のケアの中での気付きや疑問を直接問いかける事ができ、より早い解決・対応が出来るようになった。
【考察・まとめ】
 当施設では1日3回食後の歯磨きは定着していました。
 しかし、限られた時間の中でそこからもう一歩踏み込んだケアをする事は大変なことでした。成果や効果が1日で分かるものではない為初めはとにかく続けるということを頑張りました。継続する中で変化が出始め、自然と職員の間できちんとした口腔ケアが広まり始めました。
 今では舌の汚れにも着目しケアを行う事が当たり前になりました。
 また、当施設の勉強会で、口腔ケア方法や、ご利用者様の変化など、日々の取り組みを発表したことで口腔ケアのかかわりを多職種で様々な視点から見る事が出来るようになりより良いケアにつながりました。
 様々な取り組みの変化により、最後の時を迎えるまで経口摂取の継続が出来るご利用者様が増えました。食形態は落ちてしまいますが最後まで好きな物を召し上がって頂くという目的には近づいていると思います。今後は少しでも形のあるものを最後まで召し上がって頂けるようにしていきたいです。
 私たち一人一人が目的をきちんと理解し、継続することで次につながり、様々な改善が出来ると思います。
 ご利用者様には1日でも長く、楽しく・元気に・好きな物を食べて生活して頂く為、今後さらなる向上を図り、1つでも笑顔が増えるように努めていきたいです。