講演情報
[14-O-I001-06]口腔ケアに対する意識改革
*大向 将史1 (1. 千葉県 介護老人保健施設フェルマータ船橋)
当施設では口腔衛生体制加算を算定し歯科医、歯科衛生士と連携する事で口腔内の環境改善に努めている。しかし口腔ケアに対する意識や認識が甘く利用者によっては面倒で疎かにしてしまう方もいる現状である。歯科衛生士と相談し、週一回約2名の対象者に口腔ケア強化日を設け実施していたが中々改善には至らず口腔ケア強化対象者を入所利用者全員に増やし職員、利用者の意識改革を行った取り組みと今後の展望について報告する。
初めに当施設では口腔衛生管理加算を算定し歯科医、歯科衛生士と連携する事で口腔内の環境改善に努めている。以前は週1回2名の利用者様を対象とした口腔ケア強化者を設け取り組みを行ってきたが利用者様の中には口腔ケアが上手く行えていない、元々の習慣で1日1~2回しか歯磨きをしない、入れ歯だから磨かなくても良いという考えの方も散見されていた。目的口腔ケアをする時間にその他の業務が集中してしまい口腔ケアに対する意識が薄れてしまう状況であった。介護職員、利用者様、双方の意識が低下してしまい歯科衛生士より毎週のように磨けていない、口腔内が汚れていると助言を受ける事が多々あった。その為、どのようにアプローチをしていくか考え、また、口腔ケアに対する意識が排泄等のほかの介助に比べ意識が向きにくいという問題を改善するために今回の取り組みを開始した。方法1・表を作成し1日4~5名の口腔ケア強化者の記名、歯科衛生士から指導を受けた箇所や大まかなケア方法の記載。・実施予定の口腔ケア強化者と歯科衛生士からの助言を掲示し、情報共有をした。・昼食後に介護職員が指定された口腔ケア強化対象者を1名あたり5分ほど歯科衛生士の助言を基に介入した。・実施した事が可視化出来るように電子媒体を使用し、確認出来るようにした。・歯科衛生士にも週一回の訪問時、利用者様の口腔内の状況確認を随時行い改善された点、磨き残しの箇所を洗い出してもらう。方法2介護職員、利用者様を対象に取り組みを始める前と比較し口腔ケアに対して意識や行動の変化有無を聞き取りやアンケートを実施。結果実施人数が、週2名から週30名(入所利用者全員)に拡大された。取組前は、介入方法や内容にばらつきがあったが歯科衛生士の助言を基に作成した表を活用することで統一した関りがもてた利用者様、介護職員共に意識の改善が見られた。考察・開始間もない頃は口腔ケア強化対象者に声をかけ口腔ケアをするよう促しはするも、どのように介入していけば良いのか戸惑う事もあったが、介護職員間で口腔ケアに対するアプローチ方法や介助のコツ等を教え合うことで不安も減っていき口腔ケアの技術・知識だけでなく指導のスキルアップにも繋がり良い結果になったと考えられる・利用者様の中には面倒だと変わらず拒否される利用者様もいるが、自分が強化対象の曜日を職員に確認する場面も見られ個人差のある結果になった為、口腔ケアの重要性をさらに伝える必要があると考えられる。・利用者様の口腔ケアの仕方を着目出来るようになった。利用者様の磨けていないポイントが同じような場所であった。口腔ケアの介助方法や誤嚥性肺炎の知識を学べた等の意見が上がり、取り組みを開始する前よりも介護職員の意識が口腔ケアにも向くようになって来たと考えられる。・利用者様から「毎週テストみたいだからやっている」と受け身ではあるが意識している意見や「今までは朝夕は歯磨きをしていたが昼は声をかけられるようになってからするようになった」「今日は歯磨きを見てもらえる日?」「教えてもらった方法で歯磨きをするようになった」「食事を楽しみにしているから今の形で続けられるよう歯磨きを意識するようになった」等のポジティブな意見も頂けるようになり意識が向上したと考えられる。・歯科衛生士の助言を基に利用者様の中には自身で口腔ケアの方法を改善していく様子も見られた。介護職員も介助方法を個人で学んでいくようになった。今後の展望1 昼食後しか行えていない取り組みを毎食後にどのように実施していくか。2 対象の利用者様を入所の方だけに限らずショートステイの方をどのように巻き込んでいくか。3 面倒に思ってしまう利用者様に対して声を掛け口腔ケアをしたことを褒め、自信を付け日々の習慣にしていく等のアプローチ方法の模索を行う。4 介護職員も歯科衛生士から指摘を受ける前にスクリーニングの時点で汚れている箇所の発見や麻痺があり磨きにくい場所を自発的に気づけるよう観察する力を養っていく。5 磨き残しや残渣物に対し歯ブラシとうがいだけではなく、歯間ブラシや洗口液等の物品をどのように的確に使用していくか。上記の5つの課題を改善していく為、面倒に思われている利用者様に対しても介護の基本である諦めずに声を掛け、出来たことに対し褒める事を今一度、介護職員全員で再度振り返り、その上で口腔ケアに対する知識、技術を日常的に習得できる環境作りを行い介護職員、利用者様双方の意識が高くなることにより誤嚥性肺炎の予防やオーラルフレイルの第1レベルである口の健康リテラシーの低下も予防し、より在宅復帰を目的としたリハビリに励める環境の1つとしてサービスの提供をしていき、利用者様も在宅復帰してから身体機能を維持する為に口腔ケアの重要性を意識して頂けるよう、この取り組みの継続、改善していけるよう努めていく。