講演情報
[14-O-I001-08]誤嚥性肺炎を防ぐには口腔ケアは万病の予防
*千葉 さおり1、ヴィリアステル マイリン・エユリン1 (1. 愛知県 介護老人保健施設 グレイスフル春日井)
当施設において、2022年度は誤嚥性肺炎での入院が多い現状があった。入院者数の中でも半数は嚥下障害があり、誤嚥リスクが高く誤嚥性肺炎を起こしやすい状態であった。利用者様のサービスの向上の為にも、誤嚥性肺炎の予防への取り組みが必要と感じた。訪問歯科医・歯科衛生士と連携することで利用者様個々に合わせた口腔ケアを行い、サービスの質の向上と誤嚥性肺炎による入院者数の減少を目標に取り組んだ結果を報告する。
当施設において、2022年度は誤嚥性肺炎で入院となるケースが13件と多く、その中でも半数は嚥下障害があり、誤嚥リスクが高く誤嚥性肺炎を起こしやすい事を認識していた。しかし、実際は入院者数56件中13件が誤嚥性肺炎で入院しており、予防に対する取り組みが必要と感じた。また2021年に介護保険改正により、口腔衛生管理体制を見直すにあたり、訪問歯科に往診を依頼することになった。訪問歯科医・歯科衛生士が介入することで職員が利用者様個々に合わせた口腔ケアを行えるようになり、サービスの質の向上と、誤嚥性肺炎による急な入院退所を防ぐことができると考えこのテーマを選定した。この取り組み関して、利用者様に関わる介護職員14名、看護職員6名、言語聴覚士1名、管理栄養士1名の計22名でチームを構成した。
現状を確認すると、2021年度は33名の入院者の内、誤嚥性肺炎による入院者は6名であった。2022年度は56名の入院者の内、13名が誤嚥性肺炎による入院者であった。誤嚥性肺炎の既往があることや、嚥下障害があり言語聴覚士の評価でも誤嚥リスクが高いと認識される利用者数は平均して12.4名在籍している。今回の取り組みの目標として、誤嚥性肺炎による入院者数を13名から0名にすることを目標にした。
なぜ誤嚥性肺炎による入院が多いのか解析を行い、十分な口腔ケアが出来ていないことがわかった。「十分な口腔ケアができていない」要因を確認し、職員面では個々に合わせた口腔ケアができていない。利用者様面では口腔ケアを行う習慣がない。ということが要因として挙がった。
これらの要因の対策1職員に個々に合わせた口腔ケアの重要性を深めるために、歯科医による口腔健康管理に関する施設内勉強会を計画した。(2023年7月実施)また個々に合わせた物品を選定すること、個々のケアのポイントを明記した口腔ケアの手順書の確認が出来るようにした。対策2口腔ケアの重要性を理解して頂く為に、担当職員とご本人へ歯科衛生士より口腔内の状態の説明機会を設ける。対策3食後に歯磨きをして頂くよう声掛けし、食後の歯磨き・うがいを習慣づけられるよう継続的な声掛けをした。この対策を2023年7月1日~11月30日まで継続した。
結果として2023年度の入院者数42名の内、誤嚥性肺炎の診断で入院した利用者様は5名であった。
目標未達成となったが、誤嚥性肺炎発症の原因内訳をみると、嚥下障害があり誤嚥リスクが高いと認識していた利用者様の発症は1名にとどまっており、他は体調不良による嘔吐後の発症であった。
2021年3月に入所している69歳男性のH様の事例。脳梗塞の既往があり嚥下障害があるためトロミ材を使用している。2021年7月に誤嚥性肺炎を発症し入院しており、8月に再入所したが9月に再び誤嚥性肺炎を発症し入院していた。その後、再入所しており2022年は入院することはなかったが、たびたび発熱し、誤嚥性肺炎の疑いで抗生剤治療を繰り返し行っている状況だった。2023年に歯科衛生士が介入するようになり、当初は口腔ケアに対して積極的な姿勢ではなかったが、歯科衛生士からの直接指導を月2回受けることと日々介護職・看護職からの「促しの声掛けの継続」と、「姿勢の確認」、「仕上げ」を行った。徐々にH様に、口腔ケアへの取り組みに興味を持つような言動がみられるようになり、2023年は誤嚥性肺炎を発症することや、発熱することなく健康に過ごすことができた。この事例から、口腔ケアによる誤嚥性肺炎の予防を、利用者様も職員も実感することができた。
今後も訪問歯科医・歯科衛生士からの指導内容を口腔ケアに携わる全ての職員が実施できるように、毎月末に看護職員が口腔ケアの手順書を更新・周知する流れを今後も行っていく。また毎月の管理者会議で、各フロアの嚥下機能低下がみられる利用者様を挙げ、STに評価依頼していく。食前の嚥下体操を各食堂で実施できるよう準備をすすめる。
まとめとして誤嚥性肺炎の発症を防ぐことは出来なかったが、予防への意識が高まり口腔ケア以外にも、嚥下体操を積極的に取り入れることができた。また利用者様自身も食後の口腔ケアをご自身で習慣化することができた。誤嚥により頻回な熱発、入退院を繰り返していた利用者様が、質の高い口腔ケアを行うことで安定し過ごすことができており、日々のケアによる効果を実感できた。この活動を多職種で連携しながら、継続し取り組んでいきたい。
現状を確認すると、2021年度は33名の入院者の内、誤嚥性肺炎による入院者は6名であった。2022年度は56名の入院者の内、13名が誤嚥性肺炎による入院者であった。誤嚥性肺炎の既往があることや、嚥下障害があり言語聴覚士の評価でも誤嚥リスクが高いと認識される利用者数は平均して12.4名在籍している。今回の取り組みの目標として、誤嚥性肺炎による入院者数を13名から0名にすることを目標にした。
なぜ誤嚥性肺炎による入院が多いのか解析を行い、十分な口腔ケアが出来ていないことがわかった。「十分な口腔ケアができていない」要因を確認し、職員面では個々に合わせた口腔ケアができていない。利用者様面では口腔ケアを行う習慣がない。ということが要因として挙がった。
これらの要因の対策1職員に個々に合わせた口腔ケアの重要性を深めるために、歯科医による口腔健康管理に関する施設内勉強会を計画した。(2023年7月実施)また個々に合わせた物品を選定すること、個々のケアのポイントを明記した口腔ケアの手順書の確認が出来るようにした。対策2口腔ケアの重要性を理解して頂く為に、担当職員とご本人へ歯科衛生士より口腔内の状態の説明機会を設ける。対策3食後に歯磨きをして頂くよう声掛けし、食後の歯磨き・うがいを習慣づけられるよう継続的な声掛けをした。この対策を2023年7月1日~11月30日まで継続した。
結果として2023年度の入院者数42名の内、誤嚥性肺炎の診断で入院した利用者様は5名であった。
目標未達成となったが、誤嚥性肺炎発症の原因内訳をみると、嚥下障害があり誤嚥リスクが高いと認識していた利用者様の発症は1名にとどまっており、他は体調不良による嘔吐後の発症であった。
2021年3月に入所している69歳男性のH様の事例。脳梗塞の既往があり嚥下障害があるためトロミ材を使用している。2021年7月に誤嚥性肺炎を発症し入院しており、8月に再入所したが9月に再び誤嚥性肺炎を発症し入院していた。その後、再入所しており2022年は入院することはなかったが、たびたび発熱し、誤嚥性肺炎の疑いで抗生剤治療を繰り返し行っている状況だった。2023年に歯科衛生士が介入するようになり、当初は口腔ケアに対して積極的な姿勢ではなかったが、歯科衛生士からの直接指導を月2回受けることと日々介護職・看護職からの「促しの声掛けの継続」と、「姿勢の確認」、「仕上げ」を行った。徐々にH様に、口腔ケアへの取り組みに興味を持つような言動がみられるようになり、2023年は誤嚥性肺炎を発症することや、発熱することなく健康に過ごすことができた。この事例から、口腔ケアによる誤嚥性肺炎の予防を、利用者様も職員も実感することができた。
今後も訪問歯科医・歯科衛生士からの指導内容を口腔ケアに携わる全ての職員が実施できるように、毎月末に看護職員が口腔ケアの手順書を更新・周知する流れを今後も行っていく。また毎月の管理者会議で、各フロアの嚥下機能低下がみられる利用者様を挙げ、STに評価依頼していく。食前の嚥下体操を各食堂で実施できるよう準備をすすめる。
まとめとして誤嚥性肺炎の発症を防ぐことは出来なかったが、予防への意識が高まり口腔ケア以外にも、嚥下体操を積極的に取り入れることができた。また利用者様自身も食後の口腔ケアをご自身で習慣化することができた。誤嚥により頻回な熱発、入退院を繰り返していた利用者様が、質の高い口腔ケアを行うことで安定し過ごすことができており、日々のケアによる効果を実感できた。この活動を多職種で連携しながら、継続し取り組んでいきたい。