講演情報

[14-O-I002-05]多職種協働によるフットケアの取り組み

*上野 行範1、松村 政子1、山本 丈恵1、杉山 樹加1、中井 一行1 (1. 大阪府 介護老人保健施設パークヒルズ田原苑)
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立位や歩行の安定を目的に多職種協働でフットケアを行った。その結果、足趾の接地面積増加や足趾筋力の向上、歩行時間の短縮などがみられた。また靴下が履きやすくなったなど生活上の変化がみられただけでなくリラクセーション効果や自主的にフットケアを受けようとするなどの変化がみられ、生活の質の向上に繋がった。
【はじめに】
手の爪は目につきやすく多くの施設で爪切りが行われている。しかし、足の爪は靴や靴下で隠れていることが多く目につきにくいため、ケアの認識が不十分な場合がある。6割以上の高齢者が足の爪や足趾に異常があると言われており、フットケアを行うことで足趾の機能が改善し、立位や歩行の安定に繋がるのではないかと考えた。今回、多職種協働によるフットケアの取り組みや効果について発表する。
【方法】
2023年3月、医師・看護師・介護士・リハ職から成るフットケアチームを発足し、フットケアの外部講師を招いて内部研修を複数回実施した。入所者の足の評価を行いケアが必要と判断した40名を対象に週2回フットケアを実施。その中で立位と歩行が自立している入所者6名を評価対象とした。
<フットケアプログラム>
1.爪切り 2.足浴 3.足趾体操とタオル手繰り寄せ運動
<評価項目>
1.足趾筋力、2.10m歩行時間・歩数、3.足圧分布評価、4.重心動揺検査、5.立位姿勢評価、6.足の写真撮影と状態評価とし、開始前・2週間後・4週間後に評価を実施。4週間後の入所者へのヒヤリングや生活上の変化についてモニタリングを行った。
<倫理的配慮>
本人及び家族に対し個人情報の取扱いについて説明し、承諾を得た。
【結果】
フットケアを実施した結果、足底の接地面積が増加し、立位の足圧中心の位置が前方に移動し、足趾で支持できるように変化した。足趾筋力は6名中4名、10m歩行時間は6名中5名で向上がみられた。生活上の変化としては、「靴下が履きやすくなった」、「爪が靴に当たらず歩きやすくなった」などや足浴などのフットケア実施について「気持ちがよかった」などの入所者の声を聞いた。またフットケアの時間になると実施場所で待つなど自主的に参加するようになり職員とのコミュニケーションが増加した。
【考察】
立位や歩行の安定には足趾の力は重要である。足趾把持機能は足底と地面との摩擦を高めるとともに、身体の支持性を向上させる効果を有していることから、平衡機能に重要な役割を果たし、高齢者の転倒にも影響を及ぼすとされている。今回、フットケアにより足趾の接地面積の増加を認め、足趾筋力や歩行速度が向上した。その他、靴下が履きやすくなったなど生活上の変化がみられただけでなくリラクセーション効果や自主的にフットケアを受けようとするなどの変化がみられた。これは日々集団生活を過ごしている入所者にとって生活の質を高める効果があると思われる。また職員にとって多職種協働でのフットケアは、医療面や運動機能面で学ぶことが多く、知識や技術の向上に繋がり自信を持ってケアに取り組む事が出来ると思われる。
【まとめ】
多職種協働によるフットケアは立位の安定に繋がるだけでなく、施設入所中の高齢者の生活の質を高め、職員の知識・技術の向上に寄与すると考える。