講演情報
[14-O-B001-01]ケアプラン立案時のアセスメント充実のためにその人らしいケアプランが立案できるように
*小前 真紀1、植木 崇1、小山 大賀1、高村 信代1 (1. 千葉県 介護老人保健施設 北柏ナーシングケアセンター)
ケアプラン立案時のアセスメントを充実することによって、よりその人に合ったケアプランを作成するために、実際にアセスメントを行う担当スタッフに、現状についてのアンケートを実施。また、そのアセスメントをもとにケアプランを作成するケアマネが感じている事をまとめた。その双方の結果に基づき、新たなアセスメント様式を作成し試行的運用を行った。その中で考察した事を報告する。
1.はじめに
当施設では、各利用者に担当者(看護・介護職員)がついており、各担当者がケアプランのためのアセスメントを行い、それをもとにケアマネがケアプランを作成している。施設ケアマネは2名配属されており、介護業務と兼務している。
現在は、当施設独自の「計画案」という、アセスメントのための書式(包括的自立支援プログラムの項目に沿った7項目「食事」「排泄」「入浴」「整容・更衣」「基本動作」「医療」「その他余暇の過ごし方」を1枚の書式にまとめて記入するもの)とその書き方マニュアルを作成し、担当職員への負担が少なく簡潔にアセスメントが行えるようにしている。しかし簡素化し過ぎたせいか内容が薄く、ケアマネが求める計画案になっておらず、本人の要望をうまく聞き出せていないことも多かった。そこで書式を改訂して内容を充実させ、担当者が書きやすい計画案を作成した。その経過を報告する。
2.研究目的
担当を持つスタッフにアンケートを実施し、現在の計画案の問題点を洗い出す。
問題点を改善し、なおかつケアマネが聞きたい事が記入でき、担当者、ケアマネ双方が使用しやすい計画案を作成、実際に運用する事を目的とする。
3.研究方法
1)対象者:担当入所者を持っている看護・介護スタッフ39名
2)方法
(1)現計画案についてのアンケート(6月)
(2)要望についてのアンケート
(3) (1)(2)の結果から新計画案作成
(4)新計画案についてのアンケート(11月)
(5) (4)のアンケート結果から必要事項を修正して新計画案を完成。
4.倫理的配慮
・調査実施に関しては、当施設の倫理委員会の承認を得る
・理解度を知る為にアンケートは記名式にするが、研究メンバー・ケアマネ以外には口外しない。
・対象者のプライバシー保護の為、データ管理は慎重に行う
・研究以外での目的ではデータは使用せず、研究終了後には速やかに破棄する
5.研究結果
1)現計画案についてのアンケート結果:図1参照
2)要望についてのアンケート結果:図2参照
3) 1)2)の結果を元に新計画案を作成研究メンバーとケアマネとで話し合い、新計画案を作成。包括的自立支援プログラムの項目に沿った7項目の1項目につき1枚、計7枚の様式を作成。要望に合った項目を選んで記入し提出してもらう事とする。
4)新計画案についてのアンケート
(1)新計画案を使用しましたか はい 63.4% いいえ 36.6%
(2)新計画案は使用しやすいですか はい 92.3% いいえ 7.7%
5)新計画案の完成
3)で作成したものを、現在試行的運用中。
6.考察
現計画案についてのアンケート実施前にケアマネが予想していた以上に、しっかり記入できているとの回答が多かった。また要望についてのアンケートではその要望がかなうものか、他部署に相談したことがあるかの問いにも、かなりの割合ではいと答えている。実際現計画案に、相談したような内容が記入されていた事はほとんどなく、もし聞いていたとしたならば、それをうまく計画案に反映できていなかったのだと思う。
また、ケアマネから指導された事がないと回答しているスタッフが多いが、ケアマネとしてはほぼ全員に指導してきたつもりであった。これはケアマネ側がそう思っているだけで、指導と受け取られていなかったのだと実感している。
新計画案では、
・要望をより細かく掘り下げて聞き出す事。
・要望がどの程度かなうのか目標を立てる事。
・その目標は評価しやすいものであるか。
など、計画案を見るだけで記入しやすい書式にする必要性を感じた。新計画案を作成し質問形式になった事で、内容の薄い計画案が出されることはほぼなくなり、計画案の内容をそのままケアプランに活かせる事が増えた。
実際にリハ科の意見を新計画案に記入してくれたことから、フロアスタッフだけでは気が付けなかった利用者の能力を知り、ストレッチャー浴から車イス浴に変更できたという事例があった。これは東田氏がいう「アセスメントでは、利用者のおかれた状況などについて情報を集め、それを分析する事で、ケアプランに盛り込むべき生活課題を明らかにしていきます。」ということの証明になったのではないかと考える。
新計画案は入力する事が増えて大変との意見もあったが、榊原氏は「その人の姿が見えるようにアセスメント用紙に表現する事がケアマネジャーの役割であり、職種を横断するこの統合こそがケアマネジメントの要です」と述べている。当施設では【はじめに】でも述べたように各担当者にこのアセスメントを担ってもらう必要があり、負担軽減は図りたいが、必要な事はしっかり記入してもらう必要がある。新計画案は使いやすいと答えた方が圧倒的に多く、質問に答えて行けば自然に内容の濃い計画案ができる事。答えに困ったら書いてある他部署スタッフに相談する事で一人で悩む時間は減り、適切な計画案を作成できるようになると考えている。
7.おわりに
今回の研究を通して、ケアマネとして担当者に指導していたつもりなのに伝わっていなかった現実を知り、これでは指導していない事と同じだと感じた。伝わっていないなら思い切って方向転換してみる事で、指導する側(ケアマネ)にも、される側(担当者)にも、利用者にも、みんなに良い影響になると感じた。
現在新計画案を試行中であり、お互いに書き方を工夫していくことでより良い計画案を作成し、個別性のあるその人らしいケアプラン作成につながると良いと思っている。
8.参考・引用文献
・早引き ケアマネジャーのためのケアプラン書き方&文例ハンドブック P33 ナツメ社 榊原宏昌 著
・完全図解 世界一役に立つ介護保険の本 P73 講談社 東田 勉 著
当施設では、各利用者に担当者(看護・介護職員)がついており、各担当者がケアプランのためのアセスメントを行い、それをもとにケアマネがケアプランを作成している。施設ケアマネは2名配属されており、介護業務と兼務している。
現在は、当施設独自の「計画案」という、アセスメントのための書式(包括的自立支援プログラムの項目に沿った7項目「食事」「排泄」「入浴」「整容・更衣」「基本動作」「医療」「その他余暇の過ごし方」を1枚の書式にまとめて記入するもの)とその書き方マニュアルを作成し、担当職員への負担が少なく簡潔にアセスメントが行えるようにしている。しかし簡素化し過ぎたせいか内容が薄く、ケアマネが求める計画案になっておらず、本人の要望をうまく聞き出せていないことも多かった。そこで書式を改訂して内容を充実させ、担当者が書きやすい計画案を作成した。その経過を報告する。
2.研究目的
担当を持つスタッフにアンケートを実施し、現在の計画案の問題点を洗い出す。
問題点を改善し、なおかつケアマネが聞きたい事が記入でき、担当者、ケアマネ双方が使用しやすい計画案を作成、実際に運用する事を目的とする。
3.研究方法
1)対象者:担当入所者を持っている看護・介護スタッフ39名
2)方法
(1)現計画案についてのアンケート(6月)
(2)要望についてのアンケート
(3) (1)(2)の結果から新計画案作成
(4)新計画案についてのアンケート(11月)
(5) (4)のアンケート結果から必要事項を修正して新計画案を完成。
4.倫理的配慮
・調査実施に関しては、当施設の倫理委員会の承認を得る
・理解度を知る為にアンケートは記名式にするが、研究メンバー・ケアマネ以外には口外しない。
・対象者のプライバシー保護の為、データ管理は慎重に行う
・研究以外での目的ではデータは使用せず、研究終了後には速やかに破棄する
5.研究結果
1)現計画案についてのアンケート結果:図1参照
2)要望についてのアンケート結果:図2参照
3) 1)2)の結果を元に新計画案を作成研究メンバーとケアマネとで話し合い、新計画案を作成。包括的自立支援プログラムの項目に沿った7項目の1項目につき1枚、計7枚の様式を作成。要望に合った項目を選んで記入し提出してもらう事とする。
4)新計画案についてのアンケート
(1)新計画案を使用しましたか はい 63.4% いいえ 36.6%
(2)新計画案は使用しやすいですか はい 92.3% いいえ 7.7%
5)新計画案の完成
3)で作成したものを、現在試行的運用中。
6.考察
現計画案についてのアンケート実施前にケアマネが予想していた以上に、しっかり記入できているとの回答が多かった。また要望についてのアンケートではその要望がかなうものか、他部署に相談したことがあるかの問いにも、かなりの割合ではいと答えている。実際現計画案に、相談したような内容が記入されていた事はほとんどなく、もし聞いていたとしたならば、それをうまく計画案に反映できていなかったのだと思う。
また、ケアマネから指導された事がないと回答しているスタッフが多いが、ケアマネとしてはほぼ全員に指導してきたつもりであった。これはケアマネ側がそう思っているだけで、指導と受け取られていなかったのだと実感している。
新計画案では、
・要望をより細かく掘り下げて聞き出す事。
・要望がどの程度かなうのか目標を立てる事。
・その目標は評価しやすいものであるか。
など、計画案を見るだけで記入しやすい書式にする必要性を感じた。新計画案を作成し質問形式になった事で、内容の薄い計画案が出されることはほぼなくなり、計画案の内容をそのままケアプランに活かせる事が増えた。
実際にリハ科の意見を新計画案に記入してくれたことから、フロアスタッフだけでは気が付けなかった利用者の能力を知り、ストレッチャー浴から車イス浴に変更できたという事例があった。これは東田氏がいう「アセスメントでは、利用者のおかれた状況などについて情報を集め、それを分析する事で、ケアプランに盛り込むべき生活課題を明らかにしていきます。」ということの証明になったのではないかと考える。
新計画案は入力する事が増えて大変との意見もあったが、榊原氏は「その人の姿が見えるようにアセスメント用紙に表現する事がケアマネジャーの役割であり、職種を横断するこの統合こそがケアマネジメントの要です」と述べている。当施設では【はじめに】でも述べたように各担当者にこのアセスメントを担ってもらう必要があり、負担軽減は図りたいが、必要な事はしっかり記入してもらう必要がある。新計画案は使いやすいと答えた方が圧倒的に多く、質問に答えて行けば自然に内容の濃い計画案ができる事。答えに困ったら書いてある他部署スタッフに相談する事で一人で悩む時間は減り、適切な計画案を作成できるようになると考えている。
7.おわりに
今回の研究を通して、ケアマネとして担当者に指導していたつもりなのに伝わっていなかった現実を知り、これでは指導していない事と同じだと感じた。伝わっていないなら思い切って方向転換してみる事で、指導する側(ケアマネ)にも、される側(担当者)にも、利用者にも、みんなに良い影響になると感じた。
現在新計画案を試行中であり、お互いに書き方を工夫していくことでより良い計画案を作成し、個別性のあるその人らしいケアプラン作成につながると良いと思っている。
8.参考・引用文献
・早引き ケアマネジャーのためのケアプラン書き方&文例ハンドブック P33 ナツメ社 榊原宏昌 著
・完全図解 世界一役に立つ介護保険の本 P73 講談社 東田 勉 著