講演情報
[14-O-B001-05]「モバイルケア」を用いた栄養管理医療法人明寿会のDX その6
*中林 千里1、藤田 涼子1、坪田 聡1 (1. 富山県 老人保健施設アルカディア雨晴)
当法人は医療施設・介護施設を複数運営し、地域高齢者を医療・介護の両面から支えられるよう努めている。今年度のトリプル改定の中で、多くの栄養関連項目が評価され、栄養に対する期待が高まっている。これにこたえるためには、業務効率を高め、利用者・家族と接する時間の捻出が必要である。そこで、独自システムを用いて、当施設が限られた人員の中でどのように栄養管理を行っているかをここに紹介する。
【はじめに】
今年度のトリプル改定の中で、多くの栄養関連項目が評価され、栄養に対する期待が高まっている。退院・退所・再入所時の切れ目のない栄養支援の推進、リハビリテーション・機能訓練、栄養、口腔の一体的取組の促進、居宅療養管理指導の見直し、障害福祉分野においては、生活介護(通所系サービス)における栄養ケア・マネジメントの導入がなされた。利用者・家族に対して、より深く丁寧な関わりが求められ、効率の良い業務運営が必要とされる。そこで、独自システムを用いて、当施設が限られた人員の中でどのように栄養管理を行っているかをここに紹介する。
【施設概要】
当施設は入所定員100名で認知症専門棟と一般棟に分かれており、併設する有床診療所では認知症外来や訪問診療・訪問看護を行っている。法人内には認知症治療病棟を有する病院のほか、グループホームやサ高住など複数の介護施設を運営し、地域高齢者を医療・介護の両面から支えられるよう努めている。当施設では老健に1名、診療所に1名常勤の管理栄養士が在籍している。給食は法人内のセントラルキッチンから運び、クックチル方式で提供している。
【モバイルケアについて】
当法人では本システム「モバイルケア」を開発し、老健の他、特養やグループホームなど法人内の各施設で使用している。モバイルケアは市販の介護ソフト同様、バイタル情報を含む介護記録の入力・集計や栄養スクリーニング・アセスメント・モニタリングシートの作成が可能である。これに加え、各職種が入力した情報のタイムライン表示機能、リハビリ記録、離床センサとの連携表示機能をもつ。さらには、栄養ソフトの機能も有しており、献立作成、栄養計算、食材の発注、食札の印刷が行える。
【効果】
栄養管理をする上で、モバイルケアの中で特に役立つ機能について、各施設の視点から紹介する。
(老健管理栄養士)
・栄養経過記録における他職種記録の引用
栄養に関連する看護師・介護職の記録を引用することで、体調や他職種の気付きを管理栄養士の記事と一覧で確認することが可能になる。入力時間の短縮が図れるほか、経時的な動きが確認でき栄養アセスメントの助けになっている。
・栄養情報提供書における栄養記録の引用
氏名、生年月日、性別、病歴、身長、体重、必要・摂取栄養量、食事内容が定期的に作成する栄養記録から栄養情報提供書に引用ができる。表計算ソフトを使用していた時と比べて、書類の作成時間が15分短縮された。今年度の改定により新設された退所時栄養情報提供加算は、併設診療所への入院を除き退所者全員に作成している。5月は作成率91%、算定率70%であり、年間約6万円の増収につながる見込みである。
(診療所管理栄養士)
・法人施設モバイルケアの閲覧権限
管理栄養士には、モバイルケアを通して他施設の情報を閲覧できる権限が与えられている。この機能を活用し、グループホームで栄養管理体制加算、2つの通所で今年度の改定により新設されたリハビリテーションマネジメント加算(ハ)の算定を行っている。これらの算定により年間約84万円の増収につながる見込みである。
【まとめ】
栄養情報提供書の高い作成率は、モバイルケアが他の介護ソフトと比べ引用できる箇所が多く、手入力によるミスの減少・作成時間の短縮が大きな要因と考える。グループホームや通所における加算の算定にあたり、情報の収集・把握にどの程度時間を要するかが1番の懸念事項であった。現在算定している施設はいずれも法人施設のため、モバイルケアを通して診療所にいながら利用者の状態確認が行える。介護記録などの引用機能により、ある程度の情報が事前に把握できるため、訪問時には職員や利用者に対して的を絞った聞き取りが可能になる。当施設は栄養マネジメント強化加算を算定しておらず、管理栄養士の数は決して充足しているとは言えない。このような状況であっても、栄養情報提供書の高い作成率とグループホームや通所での加算算定を行えているのは、モバイルケアの助けも大きい。デジタル技術の導入は栄養分野においても業務効率を上げるために欠かせない取り組みであり、切れ目のない栄養連携や高齢者の自立支援・重度化防止に共に取り組んでくれる頼もしい相棒である。
【今後の展開】
施設入所者は食事内容や摂取量、排泄状況、睡眠状態が職員によって記録されているため、栄養状態の把握・管理・介入は比較的行いやすい。通所を利用されている在宅生活者は一人ひとり生活環境が異なるため、栄養状態に問題があれば家族やケアマネジャーなどと連携し個人の状況に合わせた細かな対応が必要になる。今後は職員の増員含め給食管理にかかる業務時間に関して改善をすすめ、居宅療養管理指導や栄養改善加算を通して在宅生活者への栄養支援を強化していきたい。
今年度のトリプル改定の中で、多くの栄養関連項目が評価され、栄養に対する期待が高まっている。退院・退所・再入所時の切れ目のない栄養支援の推進、リハビリテーション・機能訓練、栄養、口腔の一体的取組の促進、居宅療養管理指導の見直し、障害福祉分野においては、生活介護(通所系サービス)における栄養ケア・マネジメントの導入がなされた。利用者・家族に対して、より深く丁寧な関わりが求められ、効率の良い業務運営が必要とされる。そこで、独自システムを用いて、当施設が限られた人員の中でどのように栄養管理を行っているかをここに紹介する。
【施設概要】
当施設は入所定員100名で認知症専門棟と一般棟に分かれており、併設する有床診療所では認知症外来や訪問診療・訪問看護を行っている。法人内には認知症治療病棟を有する病院のほか、グループホームやサ高住など複数の介護施設を運営し、地域高齢者を医療・介護の両面から支えられるよう努めている。当施設では老健に1名、診療所に1名常勤の管理栄養士が在籍している。給食は法人内のセントラルキッチンから運び、クックチル方式で提供している。
【モバイルケアについて】
当法人では本システム「モバイルケア」を開発し、老健の他、特養やグループホームなど法人内の各施設で使用している。モバイルケアは市販の介護ソフト同様、バイタル情報を含む介護記録の入力・集計や栄養スクリーニング・アセスメント・モニタリングシートの作成が可能である。これに加え、各職種が入力した情報のタイムライン表示機能、リハビリ記録、離床センサとの連携表示機能をもつ。さらには、栄養ソフトの機能も有しており、献立作成、栄養計算、食材の発注、食札の印刷が行える。
【効果】
栄養管理をする上で、モバイルケアの中で特に役立つ機能について、各施設の視点から紹介する。
(老健管理栄養士)
・栄養経過記録における他職種記録の引用
栄養に関連する看護師・介護職の記録を引用することで、体調や他職種の気付きを管理栄養士の記事と一覧で確認することが可能になる。入力時間の短縮が図れるほか、経時的な動きが確認でき栄養アセスメントの助けになっている。
・栄養情報提供書における栄養記録の引用
氏名、生年月日、性別、病歴、身長、体重、必要・摂取栄養量、食事内容が定期的に作成する栄養記録から栄養情報提供書に引用ができる。表計算ソフトを使用していた時と比べて、書類の作成時間が15分短縮された。今年度の改定により新設された退所時栄養情報提供加算は、併設診療所への入院を除き退所者全員に作成している。5月は作成率91%、算定率70%であり、年間約6万円の増収につながる見込みである。
(診療所管理栄養士)
・法人施設モバイルケアの閲覧権限
管理栄養士には、モバイルケアを通して他施設の情報を閲覧できる権限が与えられている。この機能を活用し、グループホームで栄養管理体制加算、2つの通所で今年度の改定により新設されたリハビリテーションマネジメント加算(ハ)の算定を行っている。これらの算定により年間約84万円の増収につながる見込みである。
【まとめ】
栄養情報提供書の高い作成率は、モバイルケアが他の介護ソフトと比べ引用できる箇所が多く、手入力によるミスの減少・作成時間の短縮が大きな要因と考える。グループホームや通所における加算の算定にあたり、情報の収集・把握にどの程度時間を要するかが1番の懸念事項であった。現在算定している施設はいずれも法人施設のため、モバイルケアを通して診療所にいながら利用者の状態確認が行える。介護記録などの引用機能により、ある程度の情報が事前に把握できるため、訪問時には職員や利用者に対して的を絞った聞き取りが可能になる。当施設は栄養マネジメント強化加算を算定しておらず、管理栄養士の数は決して充足しているとは言えない。このような状況であっても、栄養情報提供書の高い作成率とグループホームや通所での加算算定を行えているのは、モバイルケアの助けも大きい。デジタル技術の導入は栄養分野においても業務効率を上げるために欠かせない取り組みであり、切れ目のない栄養連携や高齢者の自立支援・重度化防止に共に取り組んでくれる頼もしい相棒である。
【今後の展開】
施設入所者は食事内容や摂取量、排泄状況、睡眠状態が職員によって記録されているため、栄養状態の把握・管理・介入は比較的行いやすい。通所を利用されている在宅生活者は一人ひとり生活環境が異なるため、栄養状態に問題があれば家族やケアマネジャーなどと連携し個人の状況に合わせた細かな対応が必要になる。今後は職員の増員含め給食管理にかかる業務時間に関して改善をすすめ、居宅療養管理指導や栄養改善加算を通して在宅生活者への栄養支援を強化していきたい。