講演情報
[14-O-B001-07]「歩く」を応援するAI歩行分析の導入
*加藤 卓也1 (1. 愛知県 老人保健施設愛泉館)
老健での様々なリハビリテーションの評価場面において、時間短縮、客観的評価、リハビリ専門職以外の関わりなどが課題になっていました。それらを解決するため2023年より歩行分析AIアプリ「CareWizトルト」を導入し、施設内のみならず訪問リハビリテーション先のご自宅や、地域の介護予防教室でも活用し、「11人目のリハビリスタッフ」として活躍しています。新しいツールを用いて業務改善を行ったその取り組みを報告します。
はじめに
老人保健施設愛泉館は愛知県日進市にある48床の超強化型老健です。小規模な老健でありながら10名のリハビリスタッフが在籍し、法人内外の関係機関と連携を図りながら、地域高齢者の自立支援、在宅療養支援を目的に、入所、ショートステイ、通所リハビリテーション、訪問リハビリテーションの4サービスを提供しています。
これまで、各サービスの様々なリハビリテーションの評価場面において、時間短縮、客観的評価、リハビリ専門職以外の関わりなどが課題になっていました。それらを解決するため2023年より歩行分析AIアプリ「CareWizトルト」を導入し、施設内のみならず訪問リハビリテーション先のご自宅や、地域の介護予防教室でも活用し、現在は「11人目のリハビリスタッフ」として活躍しています。新しいツールを用いて業務改善を行ったその取り組みを報告します。
実施方法と結果
まず「トルト」は、スマートフォンやタブレットにダウンロードして活用するアプリです。5m歩行を端末で録画するだけで、その場でAIが歩行機能を解析し、すぐに結果が出ます。その方の歩容や転倒リスクの評価を写真やグラフ入りで分かりやすくプリントし、ご本人にお渡しすることができます。私たちの施設では各サービスにおいて次のように活用しています。
《入所》
短期集中リハビリテーション終了後の定期的な機能評価として活用しています。録画は日常のフロアリハビリの一環として担当の介護士が行います。その分析結果をリハビリスタッフと共有し、入所者本人にフィードバックしています。介護士が録画作業を行うことでリハビリスタッフはより専門的な業務に時間を費やすことができます。また、フィードバックはリハビリスタッフが直接入所者に行っていますので、AIによる科学的な分析に加えて、さらに専門的知見で説明でき、入所が長期化している入所者のモチベーション維持や満足度向上に繋がっています。
《通所リハビリテーション》
お試し利用される方への初期アセスメントに活用しています。「トルト」導入前は、お試し利用の方お一人に対して、リハビリスタッフが2枠(40分間)の時間を確保し、身体機能の測定とそれに対しての評価、フィードバックを行っていました。時間がかかるだけでなく担当するスタッフの経験年数などによって評価内容にばらつきが出ることもありました。また、つい専門用語を交えて評価内容を伝えてしまうため、言葉や文章だけでは伝えたい内容が上手く伝わらないことも多く、リハビリ専門職が時間をかけて対応している割に、利用者満足度に繋がりませんでした。
初期アセスメントに「トルト」を活用するようになり、リハビリスタッフが録画し、その場で分析結果を伝えます。そして「トルト」は分析結果をもとに、おすすめの運動の提案をしてくれるという利点もあります。ここからは介護士にバトンタッチし、「トルト」が導き出したおすすめの運動を、お試し利用者は介護士と一緒に行います。リハビリスタッフが、お試し利用の方に対応する時間は1枠(20分)に短縮することができました。お帰りの際には、「トルト」の分析結果をご本人にお渡しし、ご自宅で待つご家族と共有していただき、ケアマネジャーさんにもメール等でお送りしています。
それまで地域の体操教室などに参加した経験がある方でも、自身の歩く姿をAI分析したことがある、という方はほとんどいないので、通所リハビリのお試し利用で、初めてその目新しさや客観的分析に触れて興味を示される方が多く、ケアマネジャーさんにも好評です。
《訪問リハビリテーション》
「トルト」は、デバイスにダウンロードして活用するアプリなので、特別な器具を持ち運ぶ必要はなく、訪問リハビリテーション先の利用者様宅でも手軽に活用できます。私たちの施設では、3か月に1度の施設医師による診察に合わせて録画を行い、その評価を医師と共有することで、診察する上での有効な情報のひとつになっています。
《地域貢献活動》
地域貢献活動として、地域で行う介護予防教室などの際も、「トルト」を活用しています。多職種が地域に出向き、血糖測定やBMI、筋肉量、握力の測定などと一緒に行うAI歩行分析は、地域の方々にも大変好評で、体力作りのきっかけに繋がり、介護予防の啓発活動として役立つことができています。
考察
老健施設の多岐にわたる機能の中で、その要とも言えるリハビリテーションは、より質の高いリハビリテーションの提供とその評価が求められます。今回、歩行分析AIアプリ「CareWizトルト」を導入したことで、介護士との連携やタスクシフトに繋げることができ、課題であった時間短縮やリハビリ専門職以外のリハビリテーションへの関わりを推し進めることができました。
また、AIによる科学的根拠に基づいた評価や分かりやすい解説は、幅広い年齢層の運動へのやる気を引き出していると言えます。スタッフにとっては手軽に、また利用者にとっては、正確で楽しみながら、最も大切と言われる「歩くこと」への興味関心に繋げることのできるツールであり、それを用いて業務改善を図ることができました。
まとめ
今後は、アプリ内に蓄積されるデータを比較、対称し、リハビリマネジメントのPDCAに役立たせることや、運動を通して「歩ける」ようになったその先に描く利用者一人ひとりの望む生活を、より具体化し共有しながら、利用者と共にリハビリテーションに取り組んでいきたいと思います。
老人保健施設愛泉館は愛知県日進市にある48床の超強化型老健です。小規模な老健でありながら10名のリハビリスタッフが在籍し、法人内外の関係機関と連携を図りながら、地域高齢者の自立支援、在宅療養支援を目的に、入所、ショートステイ、通所リハビリテーション、訪問リハビリテーションの4サービスを提供しています。
これまで、各サービスの様々なリハビリテーションの評価場面において、時間短縮、客観的評価、リハビリ専門職以外の関わりなどが課題になっていました。それらを解決するため2023年より歩行分析AIアプリ「CareWizトルト」を導入し、施設内のみならず訪問リハビリテーション先のご自宅や、地域の介護予防教室でも活用し、現在は「11人目のリハビリスタッフ」として活躍しています。新しいツールを用いて業務改善を行ったその取り組みを報告します。
実施方法と結果
まず「トルト」は、スマートフォンやタブレットにダウンロードして活用するアプリです。5m歩行を端末で録画するだけで、その場でAIが歩行機能を解析し、すぐに結果が出ます。その方の歩容や転倒リスクの評価を写真やグラフ入りで分かりやすくプリントし、ご本人にお渡しすることができます。私たちの施設では各サービスにおいて次のように活用しています。
《入所》
短期集中リハビリテーション終了後の定期的な機能評価として活用しています。録画は日常のフロアリハビリの一環として担当の介護士が行います。その分析結果をリハビリスタッフと共有し、入所者本人にフィードバックしています。介護士が録画作業を行うことでリハビリスタッフはより専門的な業務に時間を費やすことができます。また、フィードバックはリハビリスタッフが直接入所者に行っていますので、AIによる科学的な分析に加えて、さらに専門的知見で説明でき、入所が長期化している入所者のモチベーション維持や満足度向上に繋がっています。
《通所リハビリテーション》
お試し利用される方への初期アセスメントに活用しています。「トルト」導入前は、お試し利用の方お一人に対して、リハビリスタッフが2枠(40分間)の時間を確保し、身体機能の測定とそれに対しての評価、フィードバックを行っていました。時間がかかるだけでなく担当するスタッフの経験年数などによって評価内容にばらつきが出ることもありました。また、つい専門用語を交えて評価内容を伝えてしまうため、言葉や文章だけでは伝えたい内容が上手く伝わらないことも多く、リハビリ専門職が時間をかけて対応している割に、利用者満足度に繋がりませんでした。
初期アセスメントに「トルト」を活用するようになり、リハビリスタッフが録画し、その場で分析結果を伝えます。そして「トルト」は分析結果をもとに、おすすめの運動の提案をしてくれるという利点もあります。ここからは介護士にバトンタッチし、「トルト」が導き出したおすすめの運動を、お試し利用者は介護士と一緒に行います。リハビリスタッフが、お試し利用の方に対応する時間は1枠(20分)に短縮することができました。お帰りの際には、「トルト」の分析結果をご本人にお渡しし、ご自宅で待つご家族と共有していただき、ケアマネジャーさんにもメール等でお送りしています。
それまで地域の体操教室などに参加した経験がある方でも、自身の歩く姿をAI分析したことがある、という方はほとんどいないので、通所リハビリのお試し利用で、初めてその目新しさや客観的分析に触れて興味を示される方が多く、ケアマネジャーさんにも好評です。
《訪問リハビリテーション》
「トルト」は、デバイスにダウンロードして活用するアプリなので、特別な器具を持ち運ぶ必要はなく、訪問リハビリテーション先の利用者様宅でも手軽に活用できます。私たちの施設では、3か月に1度の施設医師による診察に合わせて録画を行い、その評価を医師と共有することで、診察する上での有効な情報のひとつになっています。
《地域貢献活動》
地域貢献活動として、地域で行う介護予防教室などの際も、「トルト」を活用しています。多職種が地域に出向き、血糖測定やBMI、筋肉量、握力の測定などと一緒に行うAI歩行分析は、地域の方々にも大変好評で、体力作りのきっかけに繋がり、介護予防の啓発活動として役立つことができています。
考察
老健施設の多岐にわたる機能の中で、その要とも言えるリハビリテーションは、より質の高いリハビリテーションの提供とその評価が求められます。今回、歩行分析AIアプリ「CareWizトルト」を導入したことで、介護士との連携やタスクシフトに繋げることができ、課題であった時間短縮やリハビリ専門職以外のリハビリテーションへの関わりを推し進めることができました。
また、AIによる科学的根拠に基づいた評価や分かりやすい解説は、幅広い年齢層の運動へのやる気を引き出していると言えます。スタッフにとっては手軽に、また利用者にとっては、正確で楽しみながら、最も大切と言われる「歩くこと」への興味関心に繋げることのできるツールであり、それを用いて業務改善を図ることができました。
まとめ
今後は、アプリ内に蓄積されるデータを比較、対称し、リハビリマネジメントのPDCAに役立たせることや、運動を通して「歩ける」ようになったその先に描く利用者一人ひとりの望む生活を、より具体化し共有しながら、利用者と共にリハビリテーションに取り組んでいきたいと思います。