講演情報

[14-O-L003-01]地域から信頼される訪問リハビリテーションを目指して開設から17年の歩み

*石本 昭仁1 (1. 長崎県 介護老人保健施設恵仁荘)
PDFダウンロードPDFダウンロード
地域から信頼される訪問リハビリテーション事業所となれるよう、これまで様々な取り組みを行った結果、ご利用者数の増加や、比較的高い利用者満足度が得られるなど一定の効果がみられたため報告する。取り組みを整理すると、積極的なコミュニケーション・相互理解、事業所の透明性の確保、働きやすい職場づくり、一つ一つの実績・信頼の積み重ね、個人の専門的スキルの発揮や事業所の対応力などが影響していると考えられた。
【はじめに】
令和6年現在、当施設の訪問リハビリテーション(以下、訪問リハ)を開設して17年が経過している。今後2040年にかけて、さらなる高齢者人口の増加に伴い、要介護者だけでなく85歳以上の高齢者を支えるために、地域包括ケアシステムの深化が求められている。医療や介護、行政、地域住民、地域の多様な主体が参画・連携する必要があり、その連携のためには信頼関係は必須であると考える。
今回、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目前にして、当事業所のこれまでの振り返りを行い、信頼関係構築のための取り組みや今後の課題について整理を行ったため報告する。
【経過と取り組み】
<開設当初>
●平成19年6月に開設。入所、通所のそれぞれの部署から職員が兼務で訪問リハビリを開始。
 翌年の平成20年4月よりPT1名専従化。平成25年PT2人、平成28年PT3、OT1の4人体制。
<連携強化に向けて>
●平成26年ケアマネジャー(以下ケアマネ)に連携強化を目的にアンケートの実施。
●平成28年からケアマネ意見交換会、家族会の実施。毎月の報告書をレーダーチャートにするなど工夫し、年に1,2回ほど居宅介護支援事業所を訪問し、配布する際に顔の見える連携を図る。
●平成30年、利用者に対し満足度調査アンケートを実施。実施後はケアマネ意見交換会で報告。
<周知活動に向けて>
●平成29年からご利用者、ケアマネへの機関誌の発行。ホームページに訪問リハビリの紹介や空き情報の掲載。パンフレットを作成し、居宅介護支援事業所などに配布。
<業務効率の改善に向けて>
●平成29年タブレットを導入し、空き時間に車内でカルテ記載が可能。動作分析ソフトで利用者やケアマネとのコミュニケーションツールとして活用。脳トレのアプリ等で利用者のリハビリへ活用。
令和2年スマートフォンを導入し、複合機とWi-Fiで繋ぐことで簡単に印刷可能。地図アプリにてカーナビの代用。連携用アプリで他職種と素早く、かつ具体的(写真等)な連携が可能。アプリで文字起こし機能を活用し、計画書作成の時間短縮。ボイスレコーダーのアプリで、ChatGPTと併用する事で会議録の作成。今後、データ連携システムの導入予定。
<地域活動の紹介>
●地域ケア会議や一般介護予防事業C型への参加。諫早のんのこ祭りに、車椅子ご利用者が参加できるよう地域の高校生らと協働する「車いすDE踊り隊」への参加。地域住民や地域包括、専門職で集まり、地域の強みや弱みを把握し、介護予防や生活支援の仕組みづくりに向け話し合う「語らん場」への参加。個別訪問では電動車椅子や高齢者が安全にバスの昇降ができるようにバス乗り場を設置するために、市、県営バス、自治会長らと連携して実施。
<コロナ禍の対応>
●令和2年度、コロナ禍の対応として感染標準予防策に加え、職員に対して毎週LAMP検査の実施。事業所をサテライトへ移行。感染予防に関するリーフレット作成し、利用者とケアマネに配布。スタッフ、ご利用者どちらか陽性になり、濃厚接触した場合は抗原検査の実施。
●有料老人ホームに専従をつけ、併設しているデイとの生活機能向上連携加算を算定。
【成果】
開設から17年間で、昨年度の平均利用者実人数が139名まで増加している。利用者数の増加に伴い、スタッフはPT:7名、OT:1名、ST:1名の計9名に増員している(平成29年からSTが兼務、平成30年から専従)。また、ご利用者満足度調査アンケートの「全体として満足している」項目では平成30年度78%、令和6年度82%の結果が得られている。令和2年からのコロナ禍でも実績を伸ばし続けている。
【考察とまとめ】
これまでの取り組みを整理すると、ケアマネとご家族と積極的なコミュニケーション(顔の見える連携)の機会を設ける事で、相互理解が生まれるだけでなく、時には厳しい声を真摯に受け止め改善する姿勢は信頼に繋がると思われる。ケアマネ意見交換会では、「訪問リハビリがどんな事をしているのか分かりにくい」、「気軽に相談できない」など意見が聞かれた。事業所からの啓発活動などによって透明性を確保する事は、信頼関係に必須であると考える。また、業務効率化や福利厚生の環境を整える事が重要であると考える。職員が働きやすい環境を整える事により笑顔で他者と接し、生産性の向上や離職率の低下にも繋がると考える。その他にも個人の専門的スキルの発揮や、事業所の対応力などが信頼関係構築に繋がっていると思われる。特にコロナ禍では偏見や差別がみられる中、高齢者や医療依存度が高い人など重症化しやすい方に接する仕事柄、事業所の対応力を求められたと感じている。幸いなことに職員一人ひとりの努力や事業所としての対応が功を奏し、ご利用者とスタッフ間で感染した例は確認されず、新型コロナウィルスが原因で亡くなった利用者はいなかった。これらの取り組みに加えて、地域と協働した活動の実績を積み重ねる事で、今後さらに信頼が増していくと思われる。信頼関係を築くことでコミュニケーションが円滑になり、チーム力が向上する事で利用者に対し質の高い支援が行えると考える。最終的には連携が強化される事で地域包括ケアシステムの活性化に寄与するのではと考える。
令和6年度の介護報酬改定では、医療介護のさらなる連携の強化、口腔・栄養の一体的取り組みの推進(歯科医との連携)など求められている。今後もご利用者やケアマネのニーズの把握に努めながら継続的な改善に努め、信頼を得る事で、質の高いサ-ビスを目指していく。