講演情報

[14-O-L003-02]訪問リハビリでの「協働」の重要性を実感した事例

*小林 伸太郎1 (1. 愛知県 介護老人保健施設さくらの里)
PDFダウンロードPDFダウンロード
急遽、訪問リハビリの実施を依頼された利用者に対し、早急に介入を開始し、本人へのリハビリ介入に加え、家族への介助指導、福祉用具の選定・導入、環境調整等を連携して実施したことで、訪問リハビリを7回で終了し、以前利用していたサービスを再開することができた事例を経験したので報告する。
【はじめに】
以前より、介護老人保健施設の「在宅復帰・在宅療養支援等評価指標」での居宅サービス実施数において、訪問リハビリを実施した場合に高い評価となっていたところ、2024年度の介護報酬改定で、訪問リハビリ事業所のみなし指定が可能な施設に介護老人保健施設が加えられた。これらにより、介護老人保健施設からの訪問リハビリの機会は増えることが想定される。今回、訪問リハビリの実施を依頼された利用者に対し、早急に介入を開始し、本人へのリハビリ介入に加え、家族への介助指導、福祉用具の選定・導入、環境調整等を連携して実施したことで、訪問リハビリを7回で終了し、以前利用していたサービスを再開することができた事例を経験したので報告する。
【施設・部門紹介】
当施設は1998年に開設し、現在は入所定員124名、通所リハビリ平均利用者数70名/日
リハビリテーション部門は常勤換算で理学療法士:6.5名、作業療法士:5名、言語聴覚士:0.4名が在籍している。訪問リハビリは2023年7月に開設、現状は入所等と兼務している作業療法士1名が担当している。
【事例紹介】
96歳 女性 要介護3 主傷病は腰椎圧迫骨折、うっ血性心不全、アルツハイマー型認知症 HDS-R:9点。以前より当施設の短期入所を月に1回、他事業所の通所介護を週4回利用していた。年齢のこともあり移動方法がシルバーカー歩行から車椅子移動になるなど徐々にADLの低下がみられていたが、2024年3月末に腰痛出現し、ベッド上で臥床している状態となったため、利用していた短期入所や通所介護をキャンセルすることになった。そのため、担当ケアマネジャーより、急遽訪問リハビリの介入ができないかと打診があった。4月下旬、サービス担当者会議で訪問リハビリを週1回40分、その他に訪問看護を週2回、訪問介護を週5回、訪問入浴を週1回実施することが決まった。会議終了直後に1回目の訪問リハビリの介入を開始、評価結果を家族・ケアマネジャーと共有した。プログラムは介助量軽減を目指し基本動作訓練を中心に実施した。臥床状態ではあったが、起居動作時は協力動作があり、端座位保持は介助で可能であった。訪問リハビリは週1回のため、動作能力向上を目指し、1日1回以上、本人の体調に合わせて10~15分程度、家族と一緒にベッドで端座位をとることを提案し、了承を得た。家族には起居動作と端座位保持の介助方法と注意点について指導した。翌週2回目の訪問リハビリ時には端座位保持の介助量が少なくなり、いざり動作も軽介助で実施できることを確認した。以前使用していた車椅子は肘掛けが外れないタイプの車椅子だったため、ケアマネジャーに肘掛け跳ね上げ・フットレスト着脱式の車椅子でベッドと車椅子の間の移乗を評価・実施したい旨を伝え、福祉用具貸与の事業所からレンタルするよう調整がされた。家族には普段の介助状況を確認し、ベッド端座位の介助指導を再度実施した。3回目の訪問リハビリ時には肘掛け跳ね上げ・フットレスト着脱式の車椅子が準備され、車椅子への移乗動作の練習と家族への移乗動作の介助指導を実施した。移乗動作が介助にて可能であることが確認できたため、屋外への移動のために玄関部にスロープのレンタルについて再度ケアマネジャーと相談した。4回目の訪問時には玄関出入り用のスロープがレンタルで準備され、移乗動作から車いすでの移動を行い、屋外まで介助で移動できることを本人・家族・ケアマネジャーとともに確認した。それに伴い、家族やケアマネジャーより「以前のように通所介護等を利用したい」との希望があったため、通所介護や短期入所が利用できることを目標とした。その後の訪問リハビリでは基本動作訓練を実施するとともに、家族への介助指導を継続し、ベッド端座位の介助に加え車椅子へ移乗し食卓で食事をすることなどを家族へ提案し、了承を得た。本人も外出の意欲が高まってきたことや家族が不安なく車椅子やポータブルトイレへの移乗介助ができるようになったため、家族・ケアマネジャーと担当作業療法士とで通所介護等への移行が可能だと判断し、6月中旬に訪問リハビリ終了となった。訪問リハビリの期間は6週間、回数は7回だった。その後、通所介護は6月中旬から、短期入所は6月下旬から利用再開となった。
【考察】
今回は事例では、(1)訪問リハビリで担当作業療法士が本人の生活場所である自宅内で直接家族に介助指導を複数回実施することができ、家族が不安なく実践できたこと、(2)利用者本人や家族の能力や状況、希望や目標の変化に合わせて、ケアマネジャーや福祉用具貸与事業所と速やかに連携し、その都度適切な環境調整を実施できたこと、が目標としていた通所介護や短期入所の利用再開につなげることができたと考える。
【まとめ】
今回の事例を通じて、介護サービスを提供する上で本人・家族・ケアマネジャー・関係事業者等との情報共有や連携など「協働」の重要さを改めて知ることができた。訪問リハビリは利用者の自宅で実施するため家族との情報共有が容易く、実際の生活場面での家族への指導を一緒になって行うことができるという通所リハビリにはないメリットもある。利用者の状況や状態によって異なるが、このメリットを最大限に活かし、今後もより良い訪問リハビリの提供を実施したい。