講演情報

[14-O-L003-05]病院退院後の生活支援に向けた訪問リハビリの取り組み

*中島 敏貴1、高木 勇哉1、本谷 郁雄2、岩井 將修2、平川 雄一2 (1. 岐阜県 介護老人保健施設カワムラコート、2. 河村病院)
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当法人の河村病院退院後の在宅生活の支援を目的としたシームレスな訪問リハビリテーションを行なっていくための取り組みを実践した.ほとんどの利用者が1週間以内に訪問リハビリテーションを開始でき,3カ月内の修了に至った.事前に目標を定めておくこと,通所リハビリテーションなど修了後のサービスを明確にしておくことが重要である.
【はじめに】
令和6年度介護報酬改定で訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)および通所リハビリテーション(以下,通所リハ)において,退院時の情報連携を促進するために,退院後早期に連続的で質の高いリハビリテーションを実施することが求められている.退院時の情報連携において,医師等の従事者はリハビリテーション計画を作成するに当たり,医療機関が入院中に作成したリハビリテーション実施計画書等を入手し,当該利用者のリハビリテーション情報を把握することが義務付けられている.退院後早期に連続的で質の高いリハビリテーションを実施がするためには,入院中のリハビリテーション情報および,入院中に家事動作などの確認を医療機関外で行える外出および外泊訓練を行い,情報を共有すること重要である.しかしながら,新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)の影響により,入院中の外出に対して一定の制限を設けている病院が散見されている.当法人の河村病院(以下,当法人)においても,病院所属の理学療法士および作業療法士,言語聴覚士(以下,病院療法士)の実施する外出訓練は行えているが,ご家族様のみで行う外出や外泊動作確認はCOVID-19の流行以降減少している.その為,病院退院後,実際の生活に不安を抱える利用者や介護支援専門員(以下,ケアマネ)より退院後の自宅での動作確認を訪問リハで依頼されることが存在する.したがって,退院前の病院療法士と当法人施設に所属する理学療法士および作業療法士(以下,施設療法士)での連携が重要であり,シームレスに訪問リハや通所リハを提供する必要があると考える.さらに,短期間の訪問リハで退院後の生活をサポートし,次へのサービスに繋げていく取り組みを行うことも重要である.当法人では,昨年度より病院退院後の生活支援に向けた訪問リハの取り組みを実施したため,その状況を報告する.
【目的】
今回,当法人病院退院後に訪問リハを提供することになった利用者に対して退院後の生活支援に向けた訪問リハの取り組みを実践し,訪問リハ利用開始までの平均日数と3カ月内修了者の人数を調査することとした.
【対象】
令和5年度に当法人病院退院後,訪問リハビリを提供することになった6名(男性2名,女性4名,平均年齢81.83±7.12歳)を対象とした.
【取り組み方法】退院前より,病院療法士より事前に相談をもらう.個人情報に配慮し,「大まかな所在地」,「日常生活自立度や身体機能」,「訪問リハ利用の目的」等の情報を受け取る.施設療法士及び医師にて協議し対応可能か判断し,病院療法士に可否を返答する.当法人病院に所属する医療ソーシャルワーカーまたは病院療法士から,家族に対し訪問リハで在宅生活の支援について説明をする.希望される場合にケアマネに同様の説明を行い,サービスの検討をしていただく.ケアマネが主催するサービス担当者会議で改めて利用者や家族に訪問リハの利用目的を確認する.利用目的に合わせて提供単位は1単位又は2単位,提供回数は週1回又は週2回で調整を行い,目的達成後に修了となり,その後のサービスの検討も行うことも説明する.サービス担当者会議終了後に訪問リハの契約を行う.退院に合わせ,訪問リハの担当医師の往診を行い,「リハビリテーションの目的」,「リハビリテーション開始前の留意事項」,「リハビリテーション実施中の留意事項」,「やむを得ず注意する場合」,「利用者に対する負荷量」,「リハビリテーション実施内容」の指示をいただく.訪問リハ開始前に病院療法士よりリハビリテーション実施計画書,当法人内独自で作成しているリハビリテーション評価用紙を用い,情報提供を改めて行う.退院時の日常生活活動動作,リハビリテーション評価による問題点などの情報,病院療法士が行なった外出および外泊訓練の内容などから想定される生活状況を聴取し,訪問リハを開始する.訪問リハ開始日から少なくとも3カ月内にリハビリテーション会議を開催し,ケアマネやその他関連職種と情報共有を行う.その際に修了に向けた経過の確認,修了後のサービスの検討も合わせて行なっていく.
【結果】
 今回の利用開始までの平均日数は5.3日,3カ月内修了者は5名,目標達成による修了は4名,本人希望による終了は1名であった.3カ月内に修了できなかった者は1名,本人希望により約1年後に終了となった.
【考察】
 今回の調査結果では,退院後の訪問リハが利用開始されるまでの平均日数は5.3日であり,訪問リハの3カ月内修了者は5名であった.先行研究では,訪問リハ利用開始までの平均日数は15.31日と報告されており,当法人施設では今回提示した取り組み方法によってシームレスに訪問リハを提供できた可能性が示唆された.また訪問リハ開始から3カ月内にリハビリテーション会議を開催し,利用者の目標を明確にしておくことでスムーズに修了できたと考える.3カ月内に修了した利用者のうち半数が通所リハを併用しており,3カ月内に修了できなかった利用者では通所リハの利用を促すも消極的であり,訪問リハの継続利用の希望がみられた.このことから,事前に通所リハなど修了後の介護保険サービスを想定し共有しておくことが大切であると考える.
【結論】
 今回,病院退院後の生活支援に向けた訪問リハの結果をまとめた.昨年度の結果から,事前に情報を共有しておくことで,シームレス訪問リハを行うことができた.3カ月内の修了に向けた取り組みとしては,目標を明確すること,修了後の介護保険サービスを事前に想定することが重要であると考えた.今後も当法人の病院退院後の在宅生活を訪問リハにて確認し,安全な在宅生活を継続するための身体機能面および環境面に関してアプローチを行い,修了後のサービスに繋げていきたいと考える.