講演情報

[14-O-L003-07]訪問リハビリ利用者の介護度経年変化~その傾向と要因について~

*仲村 元太1、友寄 弘人1、具志堅 奨1 (1. 沖縄県 介護老人保健施設 あけみおの里)
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訪問リハ利用者の介護度の経年変化を調査し、関連因子とサービスの有用性の立証を目的とした。利用登録者335名のうち、介護度変化のあった者を調査した。対象者は181名、内、軽度化29名、維持104名、重度化48名。調査項目より、年齢が軽度化率低下に寄与する可能性と、利用回数が軽度化に有意との可能性が示された。また、訪問リハ利用が介護認定者の軽度化促進および重度化予防に貢献する可能性が示された。
【はじめに】
訪問リハ利用者の介護度の経年変化を調査し、関連因子とサービスの有用性の立証を目的とした。利用登録者335名のうち、介護度変化のあった者を調査した。対象者は181名、内、軽度化29名(16.02%)、維持104名(57.45%)、重度化48名(26.51%)。調査項目より、年齢が軽度化率低下に寄与する可能性と、利用回数が軽度化に有意との可能性が示された。また、訪問リハ利用が介護認定者の軽度化促進および重度化予防に貢献する可能性が示された。
【目的】
令和3年10月、あけみおの里訪問リハビリテーション事業所を開業し、今年10月で3年が経過する。訪問リハビリテーションサービス(以下、訪問リハ)は、近年、介護保険サービスの給付率が右肩上がりに増加しており、質の担保が課題とされている。そこで本研究においては、当該事業所の利用者の年齢や性別、要介護度、主疾患、利用の経緯や頻度・介護度経年変化または他サービス利用および他のリハビリサービスの関わりの有無などを後方視的に調査し、介護度にもたらす影響(効果の実態)やその傾向、サービスの有用性を実証することを目的として実施した。
【対象と方法】
令和3年10月1日~令和6年6月30日(2年8カ月)の期間に当該事業所のサービス利用登録した335名を対象とし、介護システム「ほのぼのNEXT Version 3.01.0092」内、利用者管理システムの登録情報、訪問リハカルテ、診療情報提供書および居宅サービス計画書より情報を収集した。介護度経年変化の観測点は利用開始時、調査実施時(令和6年6月)の2時点とし、かつ対象期間中に介護度の更新および変更のあった利用者を対象とした。調査項目は、年齢、性別、要介護度、主疾患、利用頻度(回/週)、他サービス利用の有無、医療機関や通所系サービスでのリハビリ専門職とのかかわり(=他リハ利用)、早期訪問リハ導入(定義:初回認定後、6カ月以内の導入または、退院・退所直後からの導入)とした。今回は、利用期間中の介護度の経年変化のうち、軽度化および重度化を示した対象を群分けし、各調査項目における変化の割合から、その傾向を分析した。を目的変数、介護度への影響があると仮定した調査項目を説明変数として、Excel機能で実施できるロジスティック回帰分析法を活用し、推定値と対数尤度をもって、調査項目が経年変化の結果にあたえる影響度を検証した。
【結果】
本研究対象となった利用者(利用期間中に介護認定更新・変更のあった利用者)は利用登録者335名中181名(男/女:83名/98名)であった。利用開始年齢は平均値(mean)82.39、標準偏差(SD)10.7となった。利用開始時の介護度は、要介護2/38名(20.99%)、要支援2/35名(19.33%)要介護3/31名(17.12%)で利用の割合が高くなった。家事だけでなく排せつや入浴、食事などに補助が必要となる、または、立ち上がりや歩行において歩行器・車いすといった補助具などの利用が必要となる時期(=要介護2)であったり、基本的に一人で日常生活を営むが、身の回りのことや家事に一部手助けが必要となる、または、立ち上がりや歩行の機能が低下し、サポートが必要となってくる時期(=要支援2)で訪問リハビリサービスを検討するケースが多い結果となった。主疾患に関しては、筋骨格系疾患/73名(40.1%)が最も多く、脳血管疾患/46名(24.9%)と2疾患が65%を占めた。早期サービス導入の有無の結果より、83名(46.9%)が退院・退所直後にサービス利用を開始していることから、入院が必要な状態(骨折を伴う受傷や脳血管障害など)に陥り、在宅復帰のタイミングで利用につながるケースが多いことが要因と推測できる。その他、週の利用頻度は週1回の利用が多く、次いで週2回利用、週3回利用の順となっている。これは、他サービス利用の有無の調査項目から、75.7%の利用者が他サービスとの併用にて、当該サービスを利用しているため、介護給付上限額のための調整であることが影響していると推測できた。調査対象の利用者181名中、軽度化群は29名(16.02%)、維持群は104名(57.45%)、重度化群は48名(26.51%)となった。軽度化群、重症化群の調査項目ごとの結果について(表1)、群ごとの調査結果から、顕著な差異は認められなかったものの、利用開始年齢において軽度化群(平均値86.63、標準偏差9.44)>重度化群(平均値89.32、標準偏差9.25)となっており、年齢の高齢化に伴って、軽度化率が低下する可能性が推測できた。また、週の利用回数の結果において、週2回以上 19名(65.51%)>週1回10名(34.48%)との結果が得られたことから、週のサービス利用週2回以上で、軽度化に有意に関連するとの推測ができた。
【結論】
厚生労働省発表の介護給付費実態調査によると、平成25年度年間継続受給者の要介護状態区分変化割合は、10%程度が軽度化、70%程度が維持、20%程度は重度化したと報告している。また、要介護高齢者の要介護度経年変化を3年間追跡調査した貴島らの報告によると、軽度化率は9.0%、維持率は53.8%、重度化率は33.8%であったと報告している。本研究における全対象者の軽度化率は16.02%、維持率は57.45%、重度化率26.51%で、調査規模や対象条件などが異なるため、単純な比較はできないものの、先行研究で報告されたデータよりも軽度化率が高いことが確認できた。この結果から、訪問リハサービスの利用が要介護認定者の軽度化促進および重度化予防に貢献する可能性が示された。