講演情報

[14-O-L004-01]リハマネ(ハ)及び通所リハのミールラウンドについて算定のまでの道程と算定後の気づき

*高橋 洋介1、芳賀 真琴1、木村 陸1 (1. 埼玉県 介護老人保健施設 かみさとナーシングホーム)
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令和6年介護報酬改定によりリハビリテーションマネジメント加算(ハ)が新設され、当施設でもリハマネ加算(ハ)を令和6年6月より算定することになった。同加算の算定に際し、ミールラウンドの部分に弱さを感じたので、通所リハリハビリテーションでもミールラウンドの仕組みを構築した。通所リハ利用者では口腔のトラブルで歯科受診を希望しながらも通院できない利用者が多いことなどが分かった。
【はじめに】令和6年介護報酬改定によりリハビリテーションマネジメント(以下リハマネ)加算(ハ)が新設され、当施設でもリハマネ加算(ハ)を令和6年6月より算定することになった。算定を開始するにあたり、食事観察(以下ミールラウンド)の部分に問題が見つかった。今回、リハマネ(ハ)の算定開始と同時に通所リハリハビリテーション(以下通所リハ)でもミールラウンドの仕組みを構築したのでその取り組み及び所感について発表する。
【経緯及び目的】リハマネ(ハ)の算定にはリハマネBの基準に加え、口腔アセスメント及び栄養アセスメントが必要である。当施設では、令和3年よりリハマネBを算定しており、栄養アセスメント加算も令和3年より算定していたのでリハマネ(ハ)の算定は比較的容易であると当初は思われた。しかし、書類を確認するとミールラウンドを実施し記入する項目である多職種による栄養ケアの課題の項目に殆どチェックが入っていない状態である事が分かった。同項目を入力するためには確実なミールラウンドの取り組みが必要なことから、リハマネ(ハ)の算定を確実にすることを目的にミールラウンドの仕組みを(再)構築することとした。ミールラウンドの仕組みの構築は主に言語聴覚士と管理栄養士で主導した。口腔アセスメントに関しては言語聴覚士が実施した。
【原因分析】多職種による栄養ケアの課題の項目にチェックが入りにくい原因として主に次の4つを想定した。
1栄養アセスメント(加算)=管理栄養士の担当になってしまっていたこと。2これまでも管理栄養士とデイケア職員によるミールラウンドは行っていたが観察が不十分であったこと3通所リハでは入所のようにミールラウンドの回数・要件が明記されておらず、経口維持加算のような加算も無い為、他職種の強制的関与が行われなかったこと。4通所リハでは嚥下機能が高い場合が多く、嚥下面で言語聴覚士の関与が比較的限定的であったこと。
【通所リハミールラウンド実施上の課題】
課題1
通所リハは毎日利用者が異なり、休む人もいる為、ミールラウンドの回数が数多く必要であるが毎回日にちを決めて各職種が一同に会して行うことは非現実的であること。
課題2
通所リハ職員の勤務状況等によっては月に1回のミールラウンドではしっかり評価できない状況が想定された。
課題3
ミールラウンド対象者以外に嚥下不良があった際はどうするのか
【課題への対処】
課題1
・各職種が気づいた点を随時記入する方式を採用
(入所のように一同に会して行う規定も、回数の規定も無い為)
課題2
・複数回観察できる仕組みの構築。
毎月ある複数回の利用日の都合の良い日に各職種が記入する
(毎朝その日のミールラウンド対象者を抽出しファイルに入れる) 
課題3
・ミールラウンド対象者以外の利用者に嚥下不良の所見があった時に随時記入できるように空欄の評価用紙も用紙した
【実際の運用】
・通所リハ利用者はリハビリ会議実施月別にA・B・Cグループに分けてある
・Aグループは1月から3カ月毎、Bグループは2月から3か月毎にリハビリ会議を実施している。
・各グループをリハビリ会議の前月にミールラウンドを実施する
・ミールラウンド対象者の中から当日利用予定の利用者を毎日抽出し別ファイルに移しておいて随時食事観察及び記入を行う
・評価用紙の準備、回収業務は管理栄養士が行い翌月のリハビリ会議にミールラウンドの結果を記入した栄養ケア計画書を持参する。
【結果】
・ミールラウンドによって、多職種による栄養ケアの課題の欄は殆ど何らかのチェックが入る状況になった (問題がなくチェックが入らない場合も多い)。
・令和6年6月からリハマネ(ハ)の加算も概ね問題なく算定出来ている。
・一人の利用者に対して複数回通所リハ職員が観察を行ってくれるため今まで気が付かなかった利用者の症状も記録されている事が増えた。
【考察・所感】
ミールラウンドによって、多職種による栄養ケアの課題の欄へ記入数の増加及びリハマネ(ハ)の算定という当初の目標は達成された。短い運用期間ではあるが言語聴覚士として次のような所感を得た。
良かった点:リハビリ会議時に口腔・嚥下機能面への説明や提案がしやすくなったこと口腔の健康状態の評価、多職種による栄養ケアの課題の両方にチェックが入る事で利用者へ説明がしやすくなった。通所リハの特徴としては、直接的な誤嚥よりも歯の汚れや歯肉炎程度のマイナートラブルが主体で日常生活に影響は少ないが、動脈硬化や誤嚥性肺炎のリスク軽減の観点から、歯科受診や嚥下リハビリを勧めた方が良い利用者の方が多い。これらの利用者への歯科受診や、口腔機能向上サービスの提案がしやすくなったと感じる。
今後の課題:実際に歯科受診や口腔機能向上サービスの算定にはあまり繋がっていない点
原因としては軽度のむせや歯の汚れや欠損程度では実生活や健康上の大きなデメリットを感じにくい点や、交通手段の確保、本人のADLレベル、介護者の介護技術、本人・家族のモチベーション、手間の問題、金銭的問題などが考えられた。利用者からは歯科には通いたいけど足がないという声が多く聞かれた。
【まとめ】
今回の改正により口腔内及び食事状況を強制的に評価する仕組みが一気に進み、通所リハ利用者に多い口腔・嚥下に関するマイナートラブルに対して早期の嚥下リハビリや歯科受診の提案がリハビリ会議時に自動的に行えるようになりとても良い仕組みであると感じた。一方、提案の一歩先にある歯科受診、嚥下リハビリ等に繋がるかどうかは今後の課題であると考える。法的な問題があるが、将来的には通所リハ利用時間に訪問歯科(医科)で治療を受け、う蝕の治療・義歯の調整程度まで行えるような体制や、口腔連携強化加算の通所リハへの拡大、加算額の上乗せ等の法整備面での更なる支援も必要ではないかと感じた。