講演情報
[14-O-L004-07]母娘のお出かけ、いつまでも~ 安心・安全な歩行を目指して ~
*長田 達寛1 (1. 宮崎県 介護老人保健施設サンフローラみやざき)
利用者の転倒を予防する為に、運動機能の改善及び動作の安定性向上へ向けた理学療法について報告する。実施した理学療法の流れは、「歩行観察・仮説の立案・仮説の検証・検証結果との照らし合わせによる仮説の正合性の確認」である。その結果、利用者に的確な理学療法を選択・実施することが可能となる。結果をもとに更なる改善へ向けた取組の継続が重要と考える。
【はじめに】
「娘との外出をいつまでも続けたい。」
利用者の希望を叶えるために、理学療法士として出来ることは何か。今回は、運動機能の改善及び動作の安定性向上へ向けた理学療法について報告する。
【症例紹介】
年齢:90歳代 性別:女性
既往歴:腰部脊柱管狭窄症 変形性膝関節症
主訴:腰や膝が固くてあまり動きません
希望:施設に入居後も、娘との外出は続けたい
【歩行観察】
前額面では特に左立脚中期に大腿骨外旋、下腿は内旋傾向、膝の外側動揺、足関節背屈減少がみられ踵の後足部回外、中足部回内がみられた。矢状面では、立脚後期に骨盤後傾、股関節・膝関節伸展減少、上半身では胸椎屈曲がみられた。
【仮説の立案】
歩行観察からみられた現象から
1)骨盤コントロールの低下
初期接地から立脚中期にかけての骨盤コントロールが低下し、左下肢に重心をのせられず、前方への推進力を得られていない。推進力を得るために、代償的に体幹を右下肢へ移動させている。
2)骨盤後傾位
骨盤後傾位のため、股関節・膝関節伸展方向に入りにくいことに加え、下行性運動連鎖の影響もあり、大腿外旋、下腿内旋位をとりやすくなっている。
3)足部コントロールの低下足関節の背屈制限があり、膝関節屈曲、膝外側動揺が大きい。
【仮説検証、検証結果との照合】
- 測定・検査 -
項目 <RT/LT>
ROM 股関節伸展 -20°/-25° 膝関節伸展 -15°/-20° 足関節背屈 0°/-5°
MMT 股関節屈曲 3/3 股関節外転 3/3
・距腿関節:距骨内側後方滑り低下(左>右)
・距骨下関節可動性評価:回内への可動性低下 (左>右)
筋力検査、関節可動域、関節の遊びに関しては股関節、膝伸展で可動域制限多くみられた。筋力検査では、股関節を外側に開く外転低下があった。関節の遊びでは、足部を背屈、内側に傾ける動きに制限があった。
体幹の回旋の自動運動検査では、左骨盤のコントロール不良が確認できた。
立位姿勢、片脚立位でも骨盤の後傾や股関節、膝関節伸展の減少、足部の傾きがあった。
- 検証結果との照合 -
仮説と検証結果の照合により、仮説の正合性を確認した結果、歩行の安定性低下の原因として(1)骨盤コントロールの低下(2)足部コントロールの低下、(3)胸椎の伸展制限等の上半身コントロールの低下、(4)膝関節の可動域制限があがった。
【理学療法の選択、その後】
観察~仮説の立案~検証、結果との照合により、適切な理学療法の選択が可能と考える。例え改善がみられたとしても、更なる向上へ向け、再度仮説・検証を行う必要がある。
最後に、利用者の希望を叶えることが大切であり、その為には、コミュニケーションの中で何を求めているかをくみ取ることも重要と考える。
「娘との外出をいつまでも続けたい。」
利用者の希望を叶えるために、理学療法士として出来ることは何か。今回は、運動機能の改善及び動作の安定性向上へ向けた理学療法について報告する。
【症例紹介】
年齢:90歳代 性別:女性
既往歴:腰部脊柱管狭窄症 変形性膝関節症
主訴:腰や膝が固くてあまり動きません
希望:施設に入居後も、娘との外出は続けたい
【歩行観察】
前額面では特に左立脚中期に大腿骨外旋、下腿は内旋傾向、膝の外側動揺、足関節背屈減少がみられ踵の後足部回外、中足部回内がみられた。矢状面では、立脚後期に骨盤後傾、股関節・膝関節伸展減少、上半身では胸椎屈曲がみられた。
【仮説の立案】
歩行観察からみられた現象から
1)骨盤コントロールの低下
初期接地から立脚中期にかけての骨盤コントロールが低下し、左下肢に重心をのせられず、前方への推進力を得られていない。推進力を得るために、代償的に体幹を右下肢へ移動させている。
2)骨盤後傾位
骨盤後傾位のため、股関節・膝関節伸展方向に入りにくいことに加え、下行性運動連鎖の影響もあり、大腿外旋、下腿内旋位をとりやすくなっている。
3)足部コントロールの低下足関節の背屈制限があり、膝関節屈曲、膝外側動揺が大きい。
【仮説検証、検証結果との照合】
- 測定・検査 -
項目 <RT/LT>
ROM 股関節伸展 -20°/-25° 膝関節伸展 -15°/-20° 足関節背屈 0°/-5°
MMT 股関節屈曲 3/3 股関節外転 3/3
・距腿関節:距骨内側後方滑り低下(左>右)
・距骨下関節可動性評価:回内への可動性低下 (左>右)
筋力検査、関節可動域、関節の遊びに関しては股関節、膝伸展で可動域制限多くみられた。筋力検査では、股関節を外側に開く外転低下があった。関節の遊びでは、足部を背屈、内側に傾ける動きに制限があった。
体幹の回旋の自動運動検査では、左骨盤のコントロール不良が確認できた。
立位姿勢、片脚立位でも骨盤の後傾や股関節、膝関節伸展の減少、足部の傾きがあった。
- 検証結果との照合 -
仮説と検証結果の照合により、仮説の正合性を確認した結果、歩行の安定性低下の原因として(1)骨盤コントロールの低下(2)足部コントロールの低下、(3)胸椎の伸展制限等の上半身コントロールの低下、(4)膝関節の可動域制限があがった。
【理学療法の選択、その後】
観察~仮説の立案~検証、結果との照合により、適切な理学療法の選択が可能と考える。例え改善がみられたとしても、更なる向上へ向け、再度仮説・検証を行う必要がある。
最後に、利用者の希望を叶えることが大切であり、その為には、コミュニケーションの中で何を求めているかをくみ取ることも重要と考える。