講演情報
[14-O-L005-01]AIによる歩行測定ツールと介護度の関係について
*後藤 和也1、石井 沙織1、久保田 磨紀1、椎名 麻衣子1、那須 美聡1、谷川 明久1 (1. 千葉県 医療法人社団寿光会 介護老人保健施設 エスポワール成田)
本研究では介護度の違いとトルトの結果においてどのような関係があるかを検討することを目的とした。デイケア利用中の29名を対象とし要支援と要介護の2群に分け、トルトの結果を各群間で比較した。その結果、要支援に比べ要介護の群でトルトの結果が有意に低値であることが示された。トルトによる歩行測定の結果が要介護高齢者の歩行状態と要介護度を捉える可能性が考えられた。
【はじめに】
介護分野において生活能力を考える上でリハビリテーションの重要性が高いことは周知の事実である。日常生活を送るうえでも移動手段としての歩行は重要であり、活動量や生活の質を担保する意味でもその評価を客観的に行えることは有意義となる。最近では、理学療法分野において歩行評価を行う機器は多種多様なものがあり、従来の療法士個人による定性的評価に頼らず、より客観的な評価ができるようになっている。しかし、その多くの機器は高価なものが多く、介護老人保険施設などの限られた環境における定量的評価は課題となっている。近年、技術の進歩に伴い使用環境に制限されず、人工知能(AI)を用いた簡便に歩行評価が可能なアプリが開発されている。これは、タブレットなどの端末があれば測定可能であり、従来の機器に比べて環境による制限が少ない。しかし、その結果と実際の介護度との関係性は明らかではなく検討課題である。そこで、本研究の目的は、AIを用いた歩行測定ツールである「トルト(株式会社エクサホームケア)」を使用し、介護度との関係性を検討することとした。
【対象・方法】
対象は介護予防を含む通所リハビリテーション(デイケア)利用中の方、29名(要支援7名、要介護22名)とした。取り込み基準は本研究に同意が可能で認知機能に低下がなく歩行可能である者とし、除外基準は同意が得られない者及び認知機能に低下がある者とした。歩行補助具の使用については特に制限はしなかった。方法は、各対象者の基本属性として、年齢、身長、体重、Body Mass Index(BMI)を測定した。また、トルトを用いて歩行測定をし、専用のアプリにて分析を行った。トルトの計測は、ソフトの計測条件に則り行った。計測条件は、障害物の無い歩行路を直線にて5m以上設定し、その間を至適歩行にて歩行を行った。その際に正面よりタブレットにて歩行を動画で撮影し、専用のアプリにて解析を行った。対象者は介護度別に要支援(S群)と要介護(K群)の2郡に分け、各郡のトルトの点数をMan-WhitneyのU検定を用いて比較検討した。統計学的検定はEZR ver.1.65を使用し、有意水準は5%未満とした。倫理的配慮として、対象者には口頭にて十分な説明を行い、同意を得た上で行った。
【結果】
各基本属性の結果(S群/K群)は年齢82.1±6.0/78.5±9.6歳、身長161.7±8.3/155.2±10.2cm、体重59.0±9.0/51.2±8.2kg、BMI 22.7±3.9/21.3±2.8kg/m2であり、2群間において有意差は認めなかった。トルトの点数はS群が16.9±1.2点、K群が14.7±2.0点であり、2群間において有意差(p値:0.02565)を認め、K群が有意に低値であった。
【結論】
本研究において、歩行可能なデイケアを利用している要支援および要介護高齢者を対象として、トルトの結果と介護度との関係性について比較・検討を行った。その結果、S群に比べてK群においてトルトの点数が有意に低値であることが分かった。これより、トルトによる歩行計測結果が要介護度と関係がある事が示唆された。要介護認定においては、生活における様々な動作や家族による介助力、活動量、認知機能などが反映されている。そのため、歩行のみで判断されるとはいいがたい。今回の研究で介護度の違いによりトルトによる歩行測定の結果に差が認められたことで、要介護高齢者の歩行状態をトルトが捉えられる可能性が考えられる。介護保険では審査後に認定期間が設定されるが、長いもので年単位となっている。その間で機能や活動レベルでの能力低下も考えられるが、すぐに介護度変更への反映は難しい。その点では、本研究で用いたトルトなどの歩行解析アプリを利用することで、身体機能の変化に応じた介護度を想定できれば、より適切な理学療法プログラムの提供へつなげられ、更なる要介護状態への悪化を防ぐことが出来る可能性が考えられる。しかし、本研究では対象者が少なく群間において対象者数のばらつきが大きいことやトルトの下位項目、その他の身体機能評価との関連性は不明であることなどが挙げられる。今後は、対象者数を増やし検討を続けると共に、継続的にデータ測定を行い、他のフレイルやサルコペニア関連評価との相関や因果関係を明らかにしていきたい。
介護分野において生活能力を考える上でリハビリテーションの重要性が高いことは周知の事実である。日常生活を送るうえでも移動手段としての歩行は重要であり、活動量や生活の質を担保する意味でもその評価を客観的に行えることは有意義となる。最近では、理学療法分野において歩行評価を行う機器は多種多様なものがあり、従来の療法士個人による定性的評価に頼らず、より客観的な評価ができるようになっている。しかし、その多くの機器は高価なものが多く、介護老人保険施設などの限られた環境における定量的評価は課題となっている。近年、技術の進歩に伴い使用環境に制限されず、人工知能(AI)を用いた簡便に歩行評価が可能なアプリが開発されている。これは、タブレットなどの端末があれば測定可能であり、従来の機器に比べて環境による制限が少ない。しかし、その結果と実際の介護度との関係性は明らかではなく検討課題である。そこで、本研究の目的は、AIを用いた歩行測定ツールである「トルト(株式会社エクサホームケア)」を使用し、介護度との関係性を検討することとした。
【対象・方法】
対象は介護予防を含む通所リハビリテーション(デイケア)利用中の方、29名(要支援7名、要介護22名)とした。取り込み基準は本研究に同意が可能で認知機能に低下がなく歩行可能である者とし、除外基準は同意が得られない者及び認知機能に低下がある者とした。歩行補助具の使用については特に制限はしなかった。方法は、各対象者の基本属性として、年齢、身長、体重、Body Mass Index(BMI)を測定した。また、トルトを用いて歩行測定をし、専用のアプリにて分析を行った。トルトの計測は、ソフトの計測条件に則り行った。計測条件は、障害物の無い歩行路を直線にて5m以上設定し、その間を至適歩行にて歩行を行った。その際に正面よりタブレットにて歩行を動画で撮影し、専用のアプリにて解析を行った。対象者は介護度別に要支援(S群)と要介護(K群)の2郡に分け、各郡のトルトの点数をMan-WhitneyのU検定を用いて比較検討した。統計学的検定はEZR ver.1.65を使用し、有意水準は5%未満とした。倫理的配慮として、対象者には口頭にて十分な説明を行い、同意を得た上で行った。
【結果】
各基本属性の結果(S群/K群)は年齢82.1±6.0/78.5±9.6歳、身長161.7±8.3/155.2±10.2cm、体重59.0±9.0/51.2±8.2kg、BMI 22.7±3.9/21.3±2.8kg/m2であり、2群間において有意差は認めなかった。トルトの点数はS群が16.9±1.2点、K群が14.7±2.0点であり、2群間において有意差(p値:0.02565)を認め、K群が有意に低値であった。
【結論】
本研究において、歩行可能なデイケアを利用している要支援および要介護高齢者を対象として、トルトの結果と介護度との関係性について比較・検討を行った。その結果、S群に比べてK群においてトルトの点数が有意に低値であることが分かった。これより、トルトによる歩行計測結果が要介護度と関係がある事が示唆された。要介護認定においては、生活における様々な動作や家族による介助力、活動量、認知機能などが反映されている。そのため、歩行のみで判断されるとはいいがたい。今回の研究で介護度の違いによりトルトによる歩行測定の結果に差が認められたことで、要介護高齢者の歩行状態をトルトが捉えられる可能性が考えられる。介護保険では審査後に認定期間が設定されるが、長いもので年単位となっている。その間で機能や活動レベルでの能力低下も考えられるが、すぐに介護度変更への反映は難しい。その点では、本研究で用いたトルトなどの歩行解析アプリを利用することで、身体機能の変化に応じた介護度を想定できれば、より適切な理学療法プログラムの提供へつなげられ、更なる要介護状態への悪化を防ぐことが出来る可能性が考えられる。しかし、本研究では対象者が少なく群間において対象者数のばらつきが大きいことやトルトの下位項目、その他の身体機能評価との関連性は不明であることなどが挙げられる。今後は、対象者数を増やし検討を続けると共に、継続的にデータ測定を行い、他のフレイルやサルコペニア関連評価との相関や因果関係を明らかにしていきたい。