講演情報

[14-O-L005-07]デイケア利用者へ向けた「自立支援講座」開催の取組

*小林 尚貴1、高玉 真光1、須藤 一樹1 (1. 群馬県 群馬老人保健センター陽光苑)
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当施設では多角的なケアサービスの提供を目的に、多職種で構成された様々な委員会が設置されている。その1つであるリハビリ委員会では、利用者の自立支援に向けた取組を中心に活動している。今回、委員会の主催で、介護職とリハビリ専門職を協働講師とする1回約20分の自立支援講座を、月2回、半年間で12回開催した。講座の開催を終え、利用者から好評を得ただけでなく、多職種が連携する上で大いにプラスとなったため報告する。
【はじめに】
当施設では、多角的なケアサービスの提供を目的に、多職種で構成された様々な委員会が設置されている。その1つであるリハビリテーション(以下リハビリ)委員会では、利用者の自立支援に向けた取り組みを中心に活動している。今回、委員会の主催で、介護職とリハビリ専門職を協働講師とする1回約20分の「自立支援講座」を、月2回、半年間で12回開催した。講座の開催を終え、利用者から好評を得ただけでなく、多職種が連携する上で大いにプラスとなったため報告する。
【目的】
・利用者の自立を支援するため、身体的な自立だけでなく、自己選択や自己決定などの精神的な自立ができるように心がけた。
・介護職の視点とリハビリ専門職の視点が融合し、利用者に伝わるような講座とするために、綿密な打ち合わせを行いながら実施する。
【背景】
当施設のリハビリ委員会は、理学療法士、作業療法士、介護福祉士、施設ケアマネ、支援相談員で構成されている。特徴として、入職または経験が10年以上経過している中堅以上の職員が多く参加している。委員会では「生活リハビリ」をテーマとした職員向けの研修を毎年開催してきた。しかし、「生活リハビリ」の職員への理解は進んできてはいるものの、利用者からは「介助してくれない」といった発言が聞かれたこともあり、「生活リハビリ」の意識を利用者へ浸透していくことに難渋していた。
【方法】
委員会にて、介護職とリハビリ専門職の2人1組のペアと、講座テーマを選定した。テーマは(1)「膝痛予防・体操」、(2)「腰痛予防・体操」、(3)「自立支援」、(4)「社会参加」、(5)「低栄養」(6)「冬に潜む危険」の6つとした。1つのテーマにつき各ペアで資料を作成し、2名それぞれが講師を担うために、講座は月2回の開催とした。そして、半年間で計12回の講座の開催計画を作成し、担当となる12名の職員へ向けて活動の目的と方法についての説明を行った。その後、各ペアが協働して資料を作成し、デイケア利用者に向けて約20分の講座を開催した。
【結果】
講座開催後の聞き取り調査にて・利用者からの講座開催の需要があることが分かった。・介護職とリハビリ専門職が綿密な打ち合せを行いながら講座の準備に取り組むことで、職種間の連携を促進することができた。・介護職の視点とリハビリ専門職の視点が融合したことにより、双方のスキルアップにつながった。
【考察】
委員会では「生活リハビリ」をテーマとした職員向けの研修を毎年開催しており、「生活リハビリ」の職員への理解は進んできてはいるものの、利用者へ浸透していくことに難渋していた。自立を支援していくうえで「身体的自立」に目が向けられやすいが、自己選択、自己決定を行う「精神的自立」も重要とされている。病院では、疾病の改善を目的とした個別での治療やリハビリを受ける機会が多く、病院を経由してきた利用者の中には、介護者に依存的になってしまう方もいた。今回の講座では「自立支援」や「社会参加」といったテーマが含まれており、講座の開催を通して「精神的自立」や「生活リハビリ」、「社会参加」の考えや必要性を、利用者と共有することができた。講座開催後、利用者からは「生活リハビリなど、普段、聞くことのない話を聞くことができた」「職員が考えていることを知ることができ、自立支援について誤解していたことに気づかされた」などの感想が聞かれ、今回の活動が、利用者が自らの自立について考えるきっかけとなったと考える。
そして、介護職とリハビリ専門職が協働して1つの課題に取り組んだことで、双方のスキルアップにもつながったと考える。スキルアップしたことの1つとして、講座資料を作成する際はリハビリ専門職が中心となってリハビリの視点を介護職と共有したことで、エビデンスに基づくケアの提供の一助になったと考える。少子高齢化の進む日本において、介護保険分野においてもLIFEを中心としたエビデンスに基づく効果的な介護サービスの提供が求められている。職員は研修を受ける機会は多かったものの、今回、利用者へ向けて講座を開催する側として活動に取り組んだことで、自立支援についての考えが職員により意識づき、エビデンスに基づく介護を推進していくうえで、よい機会となったと考える。2つ目に、講座に関しては日ごろから集団レクリエーションを行っている介護職が中心となることで、利用者の反応をみながら、時には利用者に参加してもらうような双方向の講座を行う姿勢に、リハビリ専門職は学びを得ることができた。地域包括ケアシステムの構築を進めるうえで、今後、老健職員には自施設内の関わりだけでなく、地域に出ていくことも求められる。そうした際に、職員には専門的な技能だけでなく、それをわかりやすく伝えたり、講義を行ったりする、「地域に発信していく力」が必要となる。まずは、なじみの関係のある利用者の前で講師を務めたことは、今後、自立支援の活動を地域に発信していく際の前段階として、よい経験になったと考える。
今回の活動は、介護職とリハビリ専門職の双方に学びを得る良い機会となり、綿密な打ち合わせを行いながら実施したことで職種間の連携促進にもつながったと考える。利用者からも「また開催してほしい」との感想が多く聞かれ、知識の情報提供の場である講座開催の需要が高いことも感じた。今後も自立支援について考え、実践していくために、現在は入所の利用者へ向けた講座を開催している。また、新型コロナウイルス感染症の流行によって中止されていた利用者家族へ向けた教室の再開も予定されており、地域の方へ向けた発信を広めていきたいと考えている。委員会では、これからも利用者の自立を支援し、利用者が地域でいきいきと暮らすには何ができるのかを考え、それらを発信し、利用者の自立を支援する活動に取り組んでいきたい。