講演情報
[14-O-L006-06]バランス強化を目指して!セラピー犬のリハビリ介入
*前田 晴香1 (1. 岡山県 介護老人保健施設おとなの学校岡山校)
今回体幹、下肢筋力低下、また腰痛も伴い、バランスが取りにくい状態にある利用者様が立位の状態から動作をつけながらバランスを強化するリハビリに取り組まれた。そのリハビリにセラピー犬「つむぎ」を介入させて頂いた。その結果、利用者様とセラピー犬との関係性、利用者様の取り組みへの意欲の向上が見られ、バランスの強化にも繋がった。今回は、そのリハビリ介入の活動を報告する。
【はじめに】
介護老人保健施設おとなの学校岡山校では3か月間入所して頂いた後、退所日にその生活の様子をご家族、他の利用者様の前で成果発表会という形で発表をしている。Y様は普段から犬達のことを可愛がって下っていることもありドッグセラピストが成果発表会の担当をすることとなった。
【目的】
Y様は入所中、『身体機能を維持して張りのある生活を送ること』を目標に過ごされていた。Y様は体重が後ろに乗りやすく、また体幹、下肢筋力低下、腰痛も伴い、バランスを取りにくい状態であったため、立位の状態での動作を行うバランス強化のリハビリに既に取り組まれていた。Y様はセラピー犬達へ積極的に声をかけ、いつも可愛がって下さっていた。そのため、リハビリ活動にセラピー犬「つむぎ」も介入できないかと考え取り組みを始めた。「つむぎ」とのリハビリ介入の目標は「立位と動作時のバランスの強化」と設定し、立位の状態でもふらつきなく動作ができるよう取り組んだ。
【方法】
数十センチメートル離れた場所から、Y様に「つむぎ」を呼んで頂く。「つむぎ」がY様の元へ来た後、立位の状態で「つむぎ」の首へ花飾りをかけて頂いた。1回の練習時間は15~20分を目安に行った。
【活動期間】
2023年12月6日~2024年2月25日の約3か月間、計15回「つむぎ」との練習に取り組んだ。
【活動内容】
<練習1~2回目>初回はお互いが集中しやすい、刺激が少ない環境で、「つむぎ」とのコミュニケーションを図るため、また「つむぎ」がリハビリを始める合図と理解するために車椅子に座った状態で「つむぎちゃん」と名前を呼んで頂いた。「つむぎ」がY様の近くまで来たら褒めておやつを与えて頂いた。また「つむぎ」は元々首に飾りをかけることが好きだったため、花飾りを1つ「つむぎ」にかけて頂いた。
<練習4~5回目>「つむぎ」を呼んでY様の近くへ来たら「おすわり」の合図をかけて頂き、Y様が「つむぎ」に花飾りをかけやすいようにした。練習後にお礼をお伝えすると、「なんぼでもするで」と前向きなお言葉を頂いた。
<練習6回目>リハビリスタッフに協力して頂き、Y様が手すりを使用した立位の状態で動作の練習を開始した。Y様に立位の状態で「つむぎ」を呼んで頂き、花飾りをかけて頂いた。花飾りをかけて頂く際にはふらつきが見られた。「ぼくも練習中じゃけんな」「またしような」と声をかけて下さった。
<練習8~9回目>リハビリスタッフが「つむぎ」に「おて・おかわり」の合図をしている姿を見て、Y様自らセラピー犬に「おて・おかわり」の合図を出して下さった。Y様から自発的な行動が見られたため、「つむぎ」を呼んで花飾りをかけて頂いた後に「おて・おかわり」の合図をかけ、おやつをあげて頂くコミュニケーションを取り入れた。花飾りをかける際も以前より安定してかけて頂けるようになった。練習後にはY様自ら手すりを持って車椅子から立ち上がり「つむぎ」を撫でて下さる様子もあった。
<練習11回目>今まで立位の状態で「つむぎ」を呼んで頂いていた。しかし、立位の状態の場合「つむぎ」が圧迫感を感じ、Y様の近くまで寄れずY様と「つむぎ」との間に距離ができてしまっていた。そのため、Y様が車椅子に座った状態で「つむぎ」を先に呼んでいただき、その後Y様が立ち上がり、「つむぎ」に花飾りをかけ、車椅子に座ってから「おて・おかわり」をして頂くようにした。また、花飾りをかける動作が安定してきたこともあり、花飾りを1つかけた後、一度姿勢を起こし、もう1つ花飾りをかけて頂いた。
<練習12~13回目>動作が安定してきたため、発表に向けて成果発表会に近い環境で、まずたちあっぷを使用し、練習を行った。リハビリスタッフの協力もあり、たちあっぷを使用しても安定して行えていた。13回目は廊下での練習後に本番と同じ環境でも練習を行った。「つむぎ」は環境が変わったことでY様の声掛けに中々反応できなかった。しかし、Y様が「つむぎ」が来るまで諦めず何度も呼んで下さったことで、Y様の近くまで来れるようになった。Y様は普段の練習よりも多く行っていたため立位の際に少しふらつきが見られた。しかし、リハビリスタッフの声掛けの下、ゆっくりと姿勢を整えて練習に取り組んで下さった。
<練習15回目>Y様は立位の状態も安定しており、スムーズに花飾りをかけて下さった。「つむぎ」も一連の流れを理解し、Y様が花飾りをかける際に花飾りがかかりやくなるよう「つむぎ」自ら頭を下にさげる様子が見られた。Y様と練習を重ねたことで「つむぎ」のY様に対する気持ちの変化が感じ取れた。[成果発表会本番]Y様はふらつきなく安定して取り組まれ、「つむぎ」も落ち着いてスムーズに行うことが出来た。成果発表会後にY様から「つむぎ」へ「ようやったな」と声をかけて下さった。また職員、利用者様からも「とてもよかった」と声をかけて頂いた。また、家族様からY様に「ぐらぐらせずに犬に輪っかをかけれよったが」「かしこい犬じゃな」とお話ししてくださっていた。
【まとめ】
Y様は元々後ろに重心がかかっており、車椅子等への移乗に軽介助が必要だった。前重心を意識したリハビリと合わせてセラピー犬が介入し、より良い関係で練習に取り組んだ結果、自立での車椅子等への移乗動作、立位と動作時のバランスの向上に繋げる事が出来た。
【終わりに】
リハビリにセラピー犬が介入することで、前向きにリハビリに取り組んで頂け、結果的にY様の自発的な行動を引き出す事が出来た。今後もこの活動を活かし、セラピー犬に癒され楽しみながら自然とリハビリに繋がるセラピー活動を行い、利用者様の自律支援のサポートができるようにしたい。
介護老人保健施設おとなの学校岡山校では3か月間入所して頂いた後、退所日にその生活の様子をご家族、他の利用者様の前で成果発表会という形で発表をしている。Y様は普段から犬達のことを可愛がって下っていることもありドッグセラピストが成果発表会の担当をすることとなった。
【目的】
Y様は入所中、『身体機能を維持して張りのある生活を送ること』を目標に過ごされていた。Y様は体重が後ろに乗りやすく、また体幹、下肢筋力低下、腰痛も伴い、バランスを取りにくい状態であったため、立位の状態での動作を行うバランス強化のリハビリに既に取り組まれていた。Y様はセラピー犬達へ積極的に声をかけ、いつも可愛がって下さっていた。そのため、リハビリ活動にセラピー犬「つむぎ」も介入できないかと考え取り組みを始めた。「つむぎ」とのリハビリ介入の目標は「立位と動作時のバランスの強化」と設定し、立位の状態でもふらつきなく動作ができるよう取り組んだ。
【方法】
数十センチメートル離れた場所から、Y様に「つむぎ」を呼んで頂く。「つむぎ」がY様の元へ来た後、立位の状態で「つむぎ」の首へ花飾りをかけて頂いた。1回の練習時間は15~20分を目安に行った。
【活動期間】
2023年12月6日~2024年2月25日の約3か月間、計15回「つむぎ」との練習に取り組んだ。
【活動内容】
<練習1~2回目>初回はお互いが集中しやすい、刺激が少ない環境で、「つむぎ」とのコミュニケーションを図るため、また「つむぎ」がリハビリを始める合図と理解するために車椅子に座った状態で「つむぎちゃん」と名前を呼んで頂いた。「つむぎ」がY様の近くまで来たら褒めておやつを与えて頂いた。また「つむぎ」は元々首に飾りをかけることが好きだったため、花飾りを1つ「つむぎ」にかけて頂いた。
<練習4~5回目>「つむぎ」を呼んでY様の近くへ来たら「おすわり」の合図をかけて頂き、Y様が「つむぎ」に花飾りをかけやすいようにした。練習後にお礼をお伝えすると、「なんぼでもするで」と前向きなお言葉を頂いた。
<練習6回目>リハビリスタッフに協力して頂き、Y様が手すりを使用した立位の状態で動作の練習を開始した。Y様に立位の状態で「つむぎ」を呼んで頂き、花飾りをかけて頂いた。花飾りをかけて頂く際にはふらつきが見られた。「ぼくも練習中じゃけんな」「またしような」と声をかけて下さった。
<練習8~9回目>リハビリスタッフが「つむぎ」に「おて・おかわり」の合図をしている姿を見て、Y様自らセラピー犬に「おて・おかわり」の合図を出して下さった。Y様から自発的な行動が見られたため、「つむぎ」を呼んで花飾りをかけて頂いた後に「おて・おかわり」の合図をかけ、おやつをあげて頂くコミュニケーションを取り入れた。花飾りをかける際も以前より安定してかけて頂けるようになった。練習後にはY様自ら手すりを持って車椅子から立ち上がり「つむぎ」を撫でて下さる様子もあった。
<練習11回目>今まで立位の状態で「つむぎ」を呼んで頂いていた。しかし、立位の状態の場合「つむぎ」が圧迫感を感じ、Y様の近くまで寄れずY様と「つむぎ」との間に距離ができてしまっていた。そのため、Y様が車椅子に座った状態で「つむぎ」を先に呼んでいただき、その後Y様が立ち上がり、「つむぎ」に花飾りをかけ、車椅子に座ってから「おて・おかわり」をして頂くようにした。また、花飾りをかける動作が安定してきたこともあり、花飾りを1つかけた後、一度姿勢を起こし、もう1つ花飾りをかけて頂いた。
<練習12~13回目>動作が安定してきたため、発表に向けて成果発表会に近い環境で、まずたちあっぷを使用し、練習を行った。リハビリスタッフの協力もあり、たちあっぷを使用しても安定して行えていた。13回目は廊下での練習後に本番と同じ環境でも練習を行った。「つむぎ」は環境が変わったことでY様の声掛けに中々反応できなかった。しかし、Y様が「つむぎ」が来るまで諦めず何度も呼んで下さったことで、Y様の近くまで来れるようになった。Y様は普段の練習よりも多く行っていたため立位の際に少しふらつきが見られた。しかし、リハビリスタッフの声掛けの下、ゆっくりと姿勢を整えて練習に取り組んで下さった。
<練習15回目>Y様は立位の状態も安定しており、スムーズに花飾りをかけて下さった。「つむぎ」も一連の流れを理解し、Y様が花飾りをかける際に花飾りがかかりやくなるよう「つむぎ」自ら頭を下にさげる様子が見られた。Y様と練習を重ねたことで「つむぎ」のY様に対する気持ちの変化が感じ取れた。[成果発表会本番]Y様はふらつきなく安定して取り組まれ、「つむぎ」も落ち着いてスムーズに行うことが出来た。成果発表会後にY様から「つむぎ」へ「ようやったな」と声をかけて下さった。また職員、利用者様からも「とてもよかった」と声をかけて頂いた。また、家族様からY様に「ぐらぐらせずに犬に輪っかをかけれよったが」「かしこい犬じゃな」とお話ししてくださっていた。
【まとめ】
Y様は元々後ろに重心がかかっており、車椅子等への移乗に軽介助が必要だった。前重心を意識したリハビリと合わせてセラピー犬が介入し、より良い関係で練習に取り組んだ結果、自立での車椅子等への移乗動作、立位と動作時のバランスの向上に繋げる事が出来た。
【終わりに】
リハビリにセラピー犬が介入することで、前向きにリハビリに取り組んで頂け、結果的にY様の自発的な行動を引き出す事が出来た。今後もこの活動を活かし、セラピー犬に癒され楽しみながら自然とリハビリに繋がるセラピー活動を行い、利用者様の自律支援のサポートができるようにしたい。