講演情報
[14-O-L007-02]当施設における家屋評価の見直しについて
*小野 瑞稀1、京谷 裕介1 (1. 北海道 社会医療法人文珠会介護老人保健施設グランドサン亀田)
介護保険診療報酬改定に伴い、家屋調査の見直しを行った。評価用紙を修正することで、職種や経験年数による差異の解消を図り、今後のサービス向上や業務効率改善に向けた取り組みを報告する。セラピストに対して聞き取り調査をもとに評価用紙の修正を行った。その結果、身体機能評価への偏りがあり認知機能面が不足していた。認知機能面や生活場面を想定した評価用紙へ修正することでサービスや業務効率の向上につながると考える。
【1.はじめに】
今年度の介護保険診療報酬改定に伴い、認知症短期集中リハビリテーション加算(1)の算定要件に訪問による生活環境の把握が組み込まれた。これまで以上に在宅復帰にむけて、家屋調査の重要性が高まっていると考えている。今回の改定を機にこれまでの家屋調査を振り返り・見直しを行ったところ、改善すべき点がいくつか挙げられた。今後のリハビリテーションの質向上と業務効率改善のために、当施設で行った取り組みを以下に報告する。
【2.目的】
職種や経験年数による差異を解消し、幅広い視点で行えるように評価用紙の見直しを行い改善することを目的とした。家屋調査を行う上で必要な情報を把握・精査することは、ある程度の経験や専門的な知識を要する。当施設に在籍するセラピストは理学療法士4名、作業療法士3名、言語聴覚士1名で構成され、経験年数の幅として4年目から30年目となっている。家屋調査は勤務や業務状況に応じて、8名のスタッフ全員が行う機会があり、職種や熟練性によって評価内容に差異が生じる。
そのため、対応したスタッフやセラピストの視点や考えによって報告書の着眼点や計測箇所が異なることが多く、動作方法や代償手段の提案がセラピスト毎に大きく異なる場面も少なくない。これまでは、当施設での家屋調査は身体機能面の評価が中心となっている。
ご家族や利用者のニーズ及び問題点を把握しきれていない可能性が考えられた。家屋調査における職種やスタッフ毎による差異を解消し幅広い視点での評価用紙の作成を行い、リハビリテーション提供におけるサービス向上や業務効率の改善を目的に実施した。
【3.方法】
1)当施設で勤務している3職種のセラピスト8名に対し、家屋調査における視点や考え方について聞き取り調査を実施。
2)1)で得られた意見の集約を実施。
3)現行の評価用紙の修正を実施。
4)修正した評価用紙を用いて実際に家屋調査を実施。
5)家屋調査を行ったセラピストより評価用紙について聞き取り等でのフィードバックを行い使用感の確認。
6)フィードバックの結果をもとに評価用紙の修正を行う。
7)4)から6)までを繰り返し行う。
上記の内容をPDCAサイクルに則って行った。
【4.結果】
理学療法士の視点では、4年目からは生活場面での移動手段や必要とされる距離が挙げられ、身体機能が中心となっていた。10年目以上では加えて、生活上の導線の把握やご本人様の耐久性等が聞かれ、身体機能に加え生活における安全性への配慮が挙げられた。作業療法士の視点では、日常生活を遂行する場所や使用物品、福祉用具の確認などが挙げられ、より生活場面に即したものが聴取された。言語聴覚士の視点では、食事場面における環境や食形態についての確認と認知機能面として、日課や趣味活動の遂行状況、服薬等の自己管理面について挙げられた。現行の家屋評価用紙では身体機能が中心となっており、言語聴覚士より聴取された認知機能面での評価が不足していた。聞き取り調査にて得られた意見をもとに評価用紙の修正を行った。
当施設では5月末より施設内での新型コロナウイルスの感染が拡大し、新規入居者の受け入れが行えず退所も滞ってしまったため、修正した評価用紙を用いての家屋評価を実施できなかった。今後、感染状況が落ち着き次第、在宅復帰の可能性がある新規入居者や入所者が退所となる際は修正した家屋評価用紙を用いた家屋調査を行っていく。
【5.考察】
本研究では感染症対策などの影響により修正した評価用紙を用いての家屋調査は行えていない。そのため、セラピストより聴取した家屋調査における視点をもとに家屋調査評価用紙における改善点について考察を行う。当施設で使用している家屋調査評価用紙では身体機能面を中心とした記載が主となっており、言語聴覚士より聴取された認知機能面での評価部分が疎かになっていた。原因として、介護診療報酬改定以前の認知症短期集中リハビリテーション算定要件として、訪問による生活環境の把握が必須ではなかったことや、家屋調査を実施するうえで当施設では理学療法士および作業療法士が主として行っていたため、身体機能への評価に偏りが生じていたと考える。当施設では認知症短期集中リハビリテーションを言語聴覚士が担っており、対象者の在宅復帰を目指すためには日課の把握や趣味活動、物の配置など認知機能面や生活場面を想定した内容を評価用紙へ追加することで、生活の安全性向上やご家族様の介護負担軽減へとつながりサービス向上になると考えた。
家屋調査を行う方法として、言語聴覚士と理学療法士または作業療法士の2名での訪問を実施することで、身体機能および認知機能を含めたその場での家屋評価は可能と考える。しかし、今後、家屋調査の件数は増加することが予測され、当施設での現状ではセラピスト1人当たりの業務量と比較した際に、業務効率の低下につながるため現実的な方法ではないと考える。当施設では業務量の点から家屋調査時の人数を制限する場合もある。また、他施設やご家族様から感染予防を含め、大人数での来訪を遠慮される件数が増加している。そのため、評価用紙を修正し職種や経験年数による、評価内容の差異を減少させることが業務効率の改善にも影響があると考える。
【6.終わりに】
今回、評価用紙を改めて作成することで不足部分を補填することができた。しかしながら、実際に修正した評価用紙を用いた家屋調査を行うことができなかったため、今後もこの取り組みを継続することで、評価用紙の改善を図っていく。また、最終的にはセラピストのみならず多職種との連携強化を図り更なるサービスや業務効率の向上につなげていきたい。
今年度の介護保険診療報酬改定に伴い、認知症短期集中リハビリテーション加算(1)の算定要件に訪問による生活環境の把握が組み込まれた。これまで以上に在宅復帰にむけて、家屋調査の重要性が高まっていると考えている。今回の改定を機にこれまでの家屋調査を振り返り・見直しを行ったところ、改善すべき点がいくつか挙げられた。今後のリハビリテーションの質向上と業務効率改善のために、当施設で行った取り組みを以下に報告する。
【2.目的】
職種や経験年数による差異を解消し、幅広い視点で行えるように評価用紙の見直しを行い改善することを目的とした。家屋調査を行う上で必要な情報を把握・精査することは、ある程度の経験や専門的な知識を要する。当施設に在籍するセラピストは理学療法士4名、作業療法士3名、言語聴覚士1名で構成され、経験年数の幅として4年目から30年目となっている。家屋調査は勤務や業務状況に応じて、8名のスタッフ全員が行う機会があり、職種や熟練性によって評価内容に差異が生じる。
そのため、対応したスタッフやセラピストの視点や考えによって報告書の着眼点や計測箇所が異なることが多く、動作方法や代償手段の提案がセラピスト毎に大きく異なる場面も少なくない。これまでは、当施設での家屋調査は身体機能面の評価が中心となっている。
ご家族や利用者のニーズ及び問題点を把握しきれていない可能性が考えられた。家屋調査における職種やスタッフ毎による差異を解消し幅広い視点での評価用紙の作成を行い、リハビリテーション提供におけるサービス向上や業務効率の改善を目的に実施した。
【3.方法】
1)当施設で勤務している3職種のセラピスト8名に対し、家屋調査における視点や考え方について聞き取り調査を実施。
2)1)で得られた意見の集約を実施。
3)現行の評価用紙の修正を実施。
4)修正した評価用紙を用いて実際に家屋調査を実施。
5)家屋調査を行ったセラピストより評価用紙について聞き取り等でのフィードバックを行い使用感の確認。
6)フィードバックの結果をもとに評価用紙の修正を行う。
7)4)から6)までを繰り返し行う。
上記の内容をPDCAサイクルに則って行った。
【4.結果】
理学療法士の視点では、4年目からは生活場面での移動手段や必要とされる距離が挙げられ、身体機能が中心となっていた。10年目以上では加えて、生活上の導線の把握やご本人様の耐久性等が聞かれ、身体機能に加え生活における安全性への配慮が挙げられた。作業療法士の視点では、日常生活を遂行する場所や使用物品、福祉用具の確認などが挙げられ、より生活場面に即したものが聴取された。言語聴覚士の視点では、食事場面における環境や食形態についての確認と認知機能面として、日課や趣味活動の遂行状況、服薬等の自己管理面について挙げられた。現行の家屋評価用紙では身体機能が中心となっており、言語聴覚士より聴取された認知機能面での評価が不足していた。聞き取り調査にて得られた意見をもとに評価用紙の修正を行った。
当施設では5月末より施設内での新型コロナウイルスの感染が拡大し、新規入居者の受け入れが行えず退所も滞ってしまったため、修正した評価用紙を用いての家屋評価を実施できなかった。今後、感染状況が落ち着き次第、在宅復帰の可能性がある新規入居者や入所者が退所となる際は修正した家屋評価用紙を用いた家屋調査を行っていく。
【5.考察】
本研究では感染症対策などの影響により修正した評価用紙を用いての家屋調査は行えていない。そのため、セラピストより聴取した家屋調査における視点をもとに家屋調査評価用紙における改善点について考察を行う。当施設で使用している家屋調査評価用紙では身体機能面を中心とした記載が主となっており、言語聴覚士より聴取された認知機能面での評価部分が疎かになっていた。原因として、介護診療報酬改定以前の認知症短期集中リハビリテーション算定要件として、訪問による生活環境の把握が必須ではなかったことや、家屋調査を実施するうえで当施設では理学療法士および作業療法士が主として行っていたため、身体機能への評価に偏りが生じていたと考える。当施設では認知症短期集中リハビリテーションを言語聴覚士が担っており、対象者の在宅復帰を目指すためには日課の把握や趣味活動、物の配置など認知機能面や生活場面を想定した内容を評価用紙へ追加することで、生活の安全性向上やご家族様の介護負担軽減へとつながりサービス向上になると考えた。
家屋調査を行う方法として、言語聴覚士と理学療法士または作業療法士の2名での訪問を実施することで、身体機能および認知機能を含めたその場での家屋評価は可能と考える。しかし、今後、家屋調査の件数は増加することが予測され、当施設での現状ではセラピスト1人当たりの業務量と比較した際に、業務効率の低下につながるため現実的な方法ではないと考える。当施設では業務量の点から家屋調査時の人数を制限する場合もある。また、他施設やご家族様から感染予防を含め、大人数での来訪を遠慮される件数が増加している。そのため、評価用紙を修正し職種や経験年数による、評価内容の差異を減少させることが業務効率の改善にも影響があると考える。
【6.終わりに】
今回、評価用紙を改めて作成することで不足部分を補填することができた。しかしながら、実際に修正した評価用紙を用いた家屋調査を行うことができなかったため、今後もこの取り組みを継続することで、評価用紙の改善を図っていく。また、最終的にはセラピストのみならず多職種との連携強化を図り更なるサービスや業務効率の向上につなげていきたい。