講演情報

[14-O-L007-04]多職種で取り組む『フロアリハビリ』

*山本 唯奈1 (1. 神奈川県 介護老人保健施設リハビリケア湘南かまくら)
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当施設は超強化型老健であり在宅復帰を目標とする利用者が多くいる。在宅復帰に向けて利用者の身体機能向上を図るため、セラピストによる個別リハビリ以外に介護士が利用者に個別対応した『フロアリハビリ』を導入した。集団のみならず、個別対応したフロアリハビリを行うことで活動量が向上し、歩行能力の改善に繋がった。今回の取り組みで多職種による情報共有がカギとなり、機能改善したケースについて報告する。
【はじめに】
当施設は超強化型老健として利用者の機能維持・向上を図り、在宅復帰に向けて支援する大きな役割がある。しかし、利用者はセラピストによる個別リハビリ以外の時間での活動量が少なくなる傾向にあるため、身体機能及び動作能力の獲得に支障をきたしている。そこで在宅復帰方向の利用者に対して、個別リハビリ以外の時間で運動機会を増やすことが出来ないかを検討した。介護士が利用者に個別対応した『フロアリハビリ』の取り組みを開始した。

【目的】
・利用者の身体機能・動作能力の改善と向上
・フロアリハビリ継続のために多職種での情報共有

【方法】
1)フロアリハビリ会議
ケアマネジャー、介護士、看護師、セラピストでフロアリハビリ会議を月1回の割合で実施。現在の身体状況や施設での生活状況や退所先の住環境と予測される退所後の生活につい多職種で情報共有を行う。
2)フロアリハビリでのプログラムを作成
フロアリハビリ対象者の担当セラピストは、身体機能・問題点を考慮した具体的なプログラムを立案する。実施プログラムには注意点を加え介護士とセラピストの共有シートとした。
3)フロアリハビリの実施 1回10~15分程度、週に2回以上実施した。
4)実施内容の記録カレンダーに実施した日付、実施者、実施メニューを記載する。カレンダーに実施した日付、実施者、実施メニューを記載する。

 【実施事例】
1)事例紹介
82歳 男性 要介護3 MMSE:18/30点
傷病名:第11.12胸椎、第1.3腰椎圧迫骨折による経皮的椎体形成術後。
既往歴:認知症 正常圧水頭症
入所時ADL(12/28)・・・BI 40/100点 トイレ/見守り 移動/歩行器歩行見守り
2)経過
入所日(12/28)~:早期退所を希望されていたが、入所時は腰痛や下肢筋力の低下があり、離床時間が短い傾向にあったが、夜間は頻回にトイレの希望があり、独歩で歩き出すなど転倒リスク高い状況であった。入所1週間後にフロアリハビリ会議を実施した。腰痛もあり、歩行器歩行もすぐに前傾姿勢となり易疲労、歩行耐久性低いことが課題として挙がった。施設内の食堂やトイレまで1人で移動できることを目標に、フロア内を30m歩行器で歩くことをフロアリハビリとして開始した。
1ヶ月後~: 少しずつ耐久性が向上し、トイレ動作、フロア内の歩行器歩行が自立レベルとなった。2回目のフロアリハビリ会議を実施。利用者の自宅は廊下が狭く、移動は杖歩行を目標としていたため、杖歩行の強化として、フロアリハビリプログラムを変更した。退所までの1か月間で10m杖歩行を2~3セットをフロアリハビリとして実施した。

【結果】
退所時ADL(3/2)・・・BI :60/100点 トイレ:自立  移動:歩行器歩行自立
退所までは、転倒リスクを考慮しフロア内は歩行器で移動し、個別リハビリ、フロアリハビリ時のみ杖歩行訓練を実施した。自宅退所後は多点杖歩行で移動しており、転倒なく過ごされている。認知機能の低下や本人の意欲の低下があり、自主トレーニングを提示しても自身で行うことが困難であったが、介護士が声掛け・見守りをすることで運動へのきっかけができ、活動量を向上したことで早期に自宅退所することが可能となった。

【考察】
利用者の活動量を向上させることは常に課題となっており、集団体操やレクリエーションなどに取り組んできた。今回の事例に関しては早期退所を希望されており、自宅退所に向けて機能訓練の強化が必要であった。施設という環境への適合や転倒リスク等の課題がある場合、身体のみならず認知機能にも注意しながら時間をかけて進めるが、介護士が個別対応することでフロアリハビリプログラムの幅が広がり、直接的に歩行能力の向上に繋がったと考える。介護士からはフロアリハビリ行うことで、より密に多職種と連携が取れ、予測される退所後の生活イメージができ在宅復帰に向けた支援が容易になったといった声も聞かれた。会議で利用者の住環境や生活背景など情報を共有したことでフロアリハビリとしてより効果的なアプローチができたと推察する。
今後もフロアリハビリの方法や活動量を随時把握していく必要があり、各プロフェッショナル達の目が介在している多職種協働を超強化型老健の役割として推進していきたい。