講演情報
[14-O-L008-01]入所から6か月間の身体機能の調査
*筒井 隆裕1、山田 隆二1、清井 崇行1 (1. 北海道 介護老人保健施設 友愛ナーシングホーム)
短期集中リハ終了後,リハビリテーションマネジメントにより身体機能が維持できているか検証することを目的とし,対象者99名の,入所時と,入所から3か月目,入所から6か月目の握力/体重,CS-30,TUG,BBSを評価し比較した.その結果,全ての値が3か月目に比べ6か月目で低下しておらず,リハビリテーションマネジメントには効果があることが示唆された.今後は入所に至った原因により対象者を分類すべきと考える.
【はじめに】
介護老人保健施設(以下,老健)の個別リハビリテーション(以下,個別リハビリ)の介入頻度は,入所から3か月間は短期集中個別リハビリ(以下,短期集中リハ)の適用となるため週3~7日だが,入所から3か月が過ぎると週2~3日と減少することが多い.
筆者らは理学療法専門評価をアウトカムとして,短期集中リハ後に入所者の身体機能が有意に向上することを報告した(筒井隆裕・他:介護老人保健施設の短期集中個別リハビリテーション前後における身体機能の変化,北海道理学療法.2023;40:40-46.)が,その後の身体機能の経過は不明である.友愛ナーシングホーム(以下,当施設)では,短期集中リハが終了する際に,リハビリテーションマネジメントの観点による多職種協働での支援を強化することで,短期集中リハ終了後の身体機能の維持に努めている.
【目的】
入所から6か月間の身体機能の変化を調査し,現状のリハビリテーションマネジメントにより,短期集中リハ終了後に身体機能が維持できているか検証することを目的とした.
【対象】
2018年5月~2022年1月の期間に当施設に入所し,6か月以上在所していた114名のうち,転倒や体調不良等により状態が変化した15名を除外し,99名を解析対象とした.
本研究はヘルシンキ宣言に則り,被験者又はその家族へ研究の目的と内容を説明し,書面にて同意を得て実施した.守秘義務に基づき個人情報を厳重に管理すること,同意して頂けなくても何の不利益も被らないことを伝えた.
【方法】
個別リハビリの頻度は,短期集中リハ期間は週6日とし,短期集中リハ終了後は週3日とした.個別リハビリの内容は,短期集中リハ期間中も,それ以降も主に筋力強化運動,バランス練習,歩行練習を実施した.
リハビリテーションマネジメントに関しては,対象者の個別性に応じて,支援内容と,その開始時期をリハビリテーション会議により他職種協働で検討した.具体例として,集団活動物品の準備・片付け,おやつの取り分け・配膳,階段昇降練習,歩行練習,立ち上がり・立位保持練習,集団活動等が挙げられる.これらの支援は看介護職員が毎日実施することを基本とした.当施設は入所定員100名に対して,約15名前後の看介護職員が日勤帯に出勤している.
入所者の身体機能評価の実施時期は,入所後1週間以内(以下,入所時評価),短期集中リハ終了日1週間前後(以下,3か月目評価),入所から6か月経過時(以下,6か月目評価)とした.
評価項目は,握力,30秒椅子立ち上がりテスト(以下,CS-30),Timed up & go test (以下,TUG),Berg Balance Scale(以下,BBS)とした.基本属性として,性別,年齢を調査した.
握力は,座位にて左右ともに3回計測し,それぞれの最大値の平均値(kg)を体重(kg)で除した値(以下,握力/体重)を採用値とした.重度片麻痺や上肢切断などにより一側しか計測できない場合は欠損値とした.
CS-30の計測では,1回も立ち上がれない者の記録は0回としたが,立位保持が不可能な者は欠損値とした.
TUGは最大努力で5回計測し,最速値を採用値とした.歩行補助具は,各対象者の最大能力にて可能なものを使用した.各評価時期の歩行補助具は同じものを使用した.
各評価項目について,重度の認知症や失語により指示に従えない場合は欠損値とした.TUG,BBSに関して,視覚障害により対象物を視認できない場合は欠損値とした.
入所から6か月間の身体機能の変化を検討するため,入所時評価,3か月目評価,6か月目評価の結果を比較した.
【解析】
Shapiro-Wilk検定により正規性を確認し,反復測定の分散分析,もしくはFriedman検定を用いた.有意差が認められた場合は,反復測定分散分析では対応のあるt検定をShafferの方法で修正した多重比較法を用い,Friedman検定では対応のあるウィルコクソンの検定をHolmの方法で修正した多重比較法を用いた.統計処理にはR4.3.1を使用し有意水準は5%とした.
【結果】
データが正規分布する場合は平均値±標準偏差を,しない場合は中央値[四分位範囲]を記載する.
対象者は女性64名,男性35名であった.年齢は,全体86[82-90]歳,女性86.5±6.3歳,男性85[76-88.5]歳であった.
6か月間の身体機能の変化を表1に示す.握力(kg)/体重(kg)は入所時評価と3か月目評価,3か月目評価と6か月目評価の比較で有意差は認められず,入所時評価に比べ6か月目評価で有意に高値であった(0.27±0.1 vs 0.29±0.1).
CS-30は入所時評価に比べ3か月目評価で有意に高値であり(3[0-6]回 vs 5[0-9]回),3か月目評価に比べ6か月目評価で有意に高値であった(5[0-9]回 vs 6[0-9]回).
TUGは入所時評価に比べ3か月目評価で有意に低値であり(18.2[11.2-31.4]秒 vs 15.4[10.3-25.6]秒),3か月目評価と6か月目評価の比較では有意差は認められず,入所時評価に比べ6か月目評価では有意に低値であった(18.2[11.2-31.4]秒 vs 14.1[9.5-28.4]秒).
BBSは入所時評価に比べ3か月目評価で有意に高値であり(36[23.5-47.5]点 vs 43[27-49]点),3か月目評価と6か月目評価の比較では有意差は認められず,入所時評価に比べ6か月目評価では有意に高値であった(36[23.5-47.5]点 vs 43[30.5-49.5]点).
【考察】
全ての評価項目において,3か月目評価に比べ6か月目評価は低下しておらず,リハビリテーションマネジメントの取り組みに効果があることが示唆された.
CS-30は3か月目以降も向上しており,本研究で示した取り組みにより3か月目以降も下肢筋力が向上することが示唆された.
【課題】
老健への入所に至る原因は多岐にわたるが,本研究ではそれによって対象者を分類していない.今後は,入所に至った原因疾患等により対象者を分類し,解析することで,それぞれの特徴を明らかにし,支援を検討するための一助を得たいと考える.
介護老人保健施設(以下,老健)の個別リハビリテーション(以下,個別リハビリ)の介入頻度は,入所から3か月間は短期集中個別リハビリ(以下,短期集中リハ)の適用となるため週3~7日だが,入所から3か月が過ぎると週2~3日と減少することが多い.
筆者らは理学療法専門評価をアウトカムとして,短期集中リハ後に入所者の身体機能が有意に向上することを報告した(筒井隆裕・他:介護老人保健施設の短期集中個別リハビリテーション前後における身体機能の変化,北海道理学療法.2023;40:40-46.)が,その後の身体機能の経過は不明である.友愛ナーシングホーム(以下,当施設)では,短期集中リハが終了する際に,リハビリテーションマネジメントの観点による多職種協働での支援を強化することで,短期集中リハ終了後の身体機能の維持に努めている.
【目的】
入所から6か月間の身体機能の変化を調査し,現状のリハビリテーションマネジメントにより,短期集中リハ終了後に身体機能が維持できているか検証することを目的とした.
【対象】
2018年5月~2022年1月の期間に当施設に入所し,6か月以上在所していた114名のうち,転倒や体調不良等により状態が変化した15名を除外し,99名を解析対象とした.
本研究はヘルシンキ宣言に則り,被験者又はその家族へ研究の目的と内容を説明し,書面にて同意を得て実施した.守秘義務に基づき個人情報を厳重に管理すること,同意して頂けなくても何の不利益も被らないことを伝えた.
【方法】
個別リハビリの頻度は,短期集中リハ期間は週6日とし,短期集中リハ終了後は週3日とした.個別リハビリの内容は,短期集中リハ期間中も,それ以降も主に筋力強化運動,バランス練習,歩行練習を実施した.
リハビリテーションマネジメントに関しては,対象者の個別性に応じて,支援内容と,その開始時期をリハビリテーション会議により他職種協働で検討した.具体例として,集団活動物品の準備・片付け,おやつの取り分け・配膳,階段昇降練習,歩行練習,立ち上がり・立位保持練習,集団活動等が挙げられる.これらの支援は看介護職員が毎日実施することを基本とした.当施設は入所定員100名に対して,約15名前後の看介護職員が日勤帯に出勤している.
入所者の身体機能評価の実施時期は,入所後1週間以内(以下,入所時評価),短期集中リハ終了日1週間前後(以下,3か月目評価),入所から6か月経過時(以下,6か月目評価)とした.
評価項目は,握力,30秒椅子立ち上がりテスト(以下,CS-30),Timed up & go test (以下,TUG),Berg Balance Scale(以下,BBS)とした.基本属性として,性別,年齢を調査した.
握力は,座位にて左右ともに3回計測し,それぞれの最大値の平均値(kg)を体重(kg)で除した値(以下,握力/体重)を採用値とした.重度片麻痺や上肢切断などにより一側しか計測できない場合は欠損値とした.
CS-30の計測では,1回も立ち上がれない者の記録は0回としたが,立位保持が不可能な者は欠損値とした.
TUGは最大努力で5回計測し,最速値を採用値とした.歩行補助具は,各対象者の最大能力にて可能なものを使用した.各評価時期の歩行補助具は同じものを使用した.
各評価項目について,重度の認知症や失語により指示に従えない場合は欠損値とした.TUG,BBSに関して,視覚障害により対象物を視認できない場合は欠損値とした.
入所から6か月間の身体機能の変化を検討するため,入所時評価,3か月目評価,6か月目評価の結果を比較した.
【解析】
Shapiro-Wilk検定により正規性を確認し,反復測定の分散分析,もしくはFriedman検定を用いた.有意差が認められた場合は,反復測定分散分析では対応のあるt検定をShafferの方法で修正した多重比較法を用い,Friedman検定では対応のあるウィルコクソンの検定をHolmの方法で修正した多重比較法を用いた.統計処理にはR4.3.1を使用し有意水準は5%とした.
【結果】
データが正規分布する場合は平均値±標準偏差を,しない場合は中央値[四分位範囲]を記載する.
対象者は女性64名,男性35名であった.年齢は,全体86[82-90]歳,女性86.5±6.3歳,男性85[76-88.5]歳であった.
6か月間の身体機能の変化を表1に示す.握力(kg)/体重(kg)は入所時評価と3か月目評価,3か月目評価と6か月目評価の比較で有意差は認められず,入所時評価に比べ6か月目評価で有意に高値であった(0.27±0.1 vs 0.29±0.1).
CS-30は入所時評価に比べ3か月目評価で有意に高値であり(3[0-6]回 vs 5[0-9]回),3か月目評価に比べ6か月目評価で有意に高値であった(5[0-9]回 vs 6[0-9]回).
TUGは入所時評価に比べ3か月目評価で有意に低値であり(18.2[11.2-31.4]秒 vs 15.4[10.3-25.6]秒),3か月目評価と6か月目評価の比較では有意差は認められず,入所時評価に比べ6か月目評価では有意に低値であった(18.2[11.2-31.4]秒 vs 14.1[9.5-28.4]秒).
BBSは入所時評価に比べ3か月目評価で有意に高値であり(36[23.5-47.5]点 vs 43[27-49]点),3か月目評価と6か月目評価の比較では有意差は認められず,入所時評価に比べ6か月目評価では有意に高値であった(36[23.5-47.5]点 vs 43[30.5-49.5]点).
【考察】
全ての評価項目において,3か月目評価に比べ6か月目評価は低下しておらず,リハビリテーションマネジメントの取り組みに効果があることが示唆された.
CS-30は3か月目以降も向上しており,本研究で示した取り組みにより3か月目以降も下肢筋力が向上することが示唆された.
【課題】
老健への入所に至る原因は多岐にわたるが,本研究ではそれによって対象者を分類していない.今後は,入所に至った原因疾患等により対象者を分類し,解析することで,それぞれの特徴を明らかにし,支援を検討するための一助を得たいと考える.