講演情報
[14-O-L008-02]当苑と全国のFIM利得の比較と考察
*藤浦 涼1、三浦 正1、リハビリテーション科 一同1 (1. 秋田県 介護老人保健施設ほのぼの苑)
令和5年に全国老人保健施設協会が発表したFIM利得と当苑のFIM利得を比較し、当苑の在宅復帰に向けた取り組みが有効であった可能性が示唆されたため報告する。当苑の過去4年間の自宅、または自宅扱いとなる施設へ退所した55名のFIM利得を算出し、全国の老健のFIM利得平均と比較した。その結果、全国平均は0.7、当苑は7.0であった。当苑の業務改善や利用者の能力を生かした生活を送ってもらう為の取り組みが効果的であったと考える。
【はじめに】
近年、リハビリテーション(以下リハビリ)において、提供時間等の過程を評価するいわゆるプロセス評価から、アウトカム評価の重要性が増しており、平成30年度の診療報酬・介護報酬の同時改定以降その傾向はさらに強くなっているように見受けられる。特に回復期病棟では、FIM利得が主要なリハビリ実績指数として使用され、病院の中にはホームページにこのデータを公開し、全国平均と比較して実績をアピールしているところも多数見受けられる。
介護保険の領域でも、デイサービスのADL向上加算や、令和3年度介護報酬改定に関する審議報告において、生活期リハビリテーションについてアウトカムに関する評価方法の検討を行った上で、通所リハビリテーションについてもアウトカム評価を組み合わせた総合的な評価方法の検討を行う事があげられるなど同様の傾向となってきている。しかし、介護老人保健施設(以下老健)の入所においては、回復期病棟やデイサービスと同様にFIM利得のように、ADL改善度などのリハビリの実績指数におけるアウトカム評価は現在まだ取り入れられていない。私たちがこのことに着目した時点では、老健施設における具体的なFIM利得の全国平均はまだ算出されておらず、施設独自でFIM利得を算出して公表している施設は見受けられなかったが、今後は老健においても、FIM利得を算出する事が在宅復帰を意識した中間施設としての役割を担う上で重要であると考えた。
このような経緯から、2年前、私たちは当苑のFIM利得を独自に算出することとした。その結果、当時の当苑のFIM利得は7.1であった。回復期リハビリテーション病棟協会から発表されていた当時の回復期病棟の全国平均は24.1であり、当苑の数値はこれを大きく下回ったが、病期の違いやリハビリ頻度を考慮すると低い数値ではないのではないかと結論付け自法人内で開催する学術大会にて全職員に発表・報告をした。
すると昨年3月、全国老人保健施設協会から『介護老人保健施設の目的・特性を踏まえた施設の在り方に関する調査研究事業報告書』が発行され、その中に全国のFIM利得平均、全国の超強化型老健と強化型老健のFIM利得平均が掲載されていた。
そこで今回、再度当苑のFIM利得を算出し、全国平均、全国の超強化型、強化型老健の平均と比較し、その結果を考察することとした。これにより当苑の強みを認識するのではないかと考えた。
【目的】
全国の老健からみた在宅復帰における当苑の強みを明確にし、改善の一助とする。
【方法】
研究対象者は令和2年4月から令和6年6月にかけて当苑から自宅または在宅扱いの施設に退所した54名で、そのうち女性36名、男性18名であり、平均年齢は82.9歳(標準偏差±7.6歳)、平均要介護度は2.9(標準偏差±1.1)であった。FIM利得は、退所時のFIM総得点の総和から入所時のFIM総得点の総和を引き、退所した利用者数で割ることで算出した。
【結果】
当苑のFIM利得は7.0であった。対して全国平均は0.7、超強化型と強化型老健の平均は2.2であった。
【考察】
当苑のFIM利得が全国の老健および強化型老健よりも大きかったのは、当苑の取り組みによるものが大きいと考える。集計した入所者の多くが病院や施設からの転所であり、これらの方々は入所前には能力に合わない低いADLで過ごしてきた傾向があった。医療機関では、疾病の治療が優先され、リハビリテーションの時間以外は安静にされていることが多い。
当苑では業務負担増大をきっかけに、6年前から大幅な業務改善を行っている。3つの居室エリアを、利用者のADL自立度別に分け、またそれに伴い職員配置を見直すことで、支援方法の統一が図られた。その中でリハビリテーション科職員は3職種のタスクシェアを意識し、ADL場面に多くの時間を介入する方向に業務を変更した。タスクシェアの実施により職員間の情報共有が容易になり、利用者のADLに反映することが出来ている。多職種で利用者の残存能力の情報を共有し合うことで、利用者個々のニーズに合わせたケアの提供が可能となり、利用者の能力を最大限に引き出した日常生活の自立を促進している。
また、3年前から多職種で行う生活リハをテーマとしたCBRワーカー養成研修を開催し、多くの当苑スタッフも参加している。多職種でより協働してADL場面に関わりながら、それらにリハビリの要素を取り入れるという意識が浸透してきている。
FIM利得の効果的な介入戦略について研究した佐々木らは、より効果的・効率的にFIM利得を向上させるには、職種を越えて病棟スタッフ、チーム間で情報共有し、臨床や実際のADL場面に協働して関わることが重要と述べている。結果的にではあるが、我々が行ってきた取り組みが、佐々木らが重要と述べた要素をかなえることに繋がっていた。
このような取り組みにより、当苑のFIM利得が他の施設よりも大きくなったと考える。
近年、リハビリテーション(以下リハビリ)において、提供時間等の過程を評価するいわゆるプロセス評価から、アウトカム評価の重要性が増しており、平成30年度の診療報酬・介護報酬の同時改定以降その傾向はさらに強くなっているように見受けられる。特に回復期病棟では、FIM利得が主要なリハビリ実績指数として使用され、病院の中にはホームページにこのデータを公開し、全国平均と比較して実績をアピールしているところも多数見受けられる。
介護保険の領域でも、デイサービスのADL向上加算や、令和3年度介護報酬改定に関する審議報告において、生活期リハビリテーションについてアウトカムに関する評価方法の検討を行った上で、通所リハビリテーションについてもアウトカム評価を組み合わせた総合的な評価方法の検討を行う事があげられるなど同様の傾向となってきている。しかし、介護老人保健施設(以下老健)の入所においては、回復期病棟やデイサービスと同様にFIM利得のように、ADL改善度などのリハビリの実績指数におけるアウトカム評価は現在まだ取り入れられていない。私たちがこのことに着目した時点では、老健施設における具体的なFIM利得の全国平均はまだ算出されておらず、施設独自でFIM利得を算出して公表している施設は見受けられなかったが、今後は老健においても、FIM利得を算出する事が在宅復帰を意識した中間施設としての役割を担う上で重要であると考えた。
このような経緯から、2年前、私たちは当苑のFIM利得を独自に算出することとした。その結果、当時の当苑のFIM利得は7.1であった。回復期リハビリテーション病棟協会から発表されていた当時の回復期病棟の全国平均は24.1であり、当苑の数値はこれを大きく下回ったが、病期の違いやリハビリ頻度を考慮すると低い数値ではないのではないかと結論付け自法人内で開催する学術大会にて全職員に発表・報告をした。
すると昨年3月、全国老人保健施設協会から『介護老人保健施設の目的・特性を踏まえた施設の在り方に関する調査研究事業報告書』が発行され、その中に全国のFIM利得平均、全国の超強化型老健と強化型老健のFIM利得平均が掲載されていた。
そこで今回、再度当苑のFIM利得を算出し、全国平均、全国の超強化型、強化型老健の平均と比較し、その結果を考察することとした。これにより当苑の強みを認識するのではないかと考えた。
【目的】
全国の老健からみた在宅復帰における当苑の強みを明確にし、改善の一助とする。
【方法】
研究対象者は令和2年4月から令和6年6月にかけて当苑から自宅または在宅扱いの施設に退所した54名で、そのうち女性36名、男性18名であり、平均年齢は82.9歳(標準偏差±7.6歳)、平均要介護度は2.9(標準偏差±1.1)であった。FIM利得は、退所時のFIM総得点の総和から入所時のFIM総得点の総和を引き、退所した利用者数で割ることで算出した。
【結果】
当苑のFIM利得は7.0であった。対して全国平均は0.7、超強化型と強化型老健の平均は2.2であった。
【考察】
当苑のFIM利得が全国の老健および強化型老健よりも大きかったのは、当苑の取り組みによるものが大きいと考える。集計した入所者の多くが病院や施設からの転所であり、これらの方々は入所前には能力に合わない低いADLで過ごしてきた傾向があった。医療機関では、疾病の治療が優先され、リハビリテーションの時間以外は安静にされていることが多い。
当苑では業務負担増大をきっかけに、6年前から大幅な業務改善を行っている。3つの居室エリアを、利用者のADL自立度別に分け、またそれに伴い職員配置を見直すことで、支援方法の統一が図られた。その中でリハビリテーション科職員は3職種のタスクシェアを意識し、ADL場面に多くの時間を介入する方向に業務を変更した。タスクシェアの実施により職員間の情報共有が容易になり、利用者のADLに反映することが出来ている。多職種で利用者の残存能力の情報を共有し合うことで、利用者個々のニーズに合わせたケアの提供が可能となり、利用者の能力を最大限に引き出した日常生活の自立を促進している。
また、3年前から多職種で行う生活リハをテーマとしたCBRワーカー養成研修を開催し、多くの当苑スタッフも参加している。多職種でより協働してADL場面に関わりながら、それらにリハビリの要素を取り入れるという意識が浸透してきている。
FIM利得の効果的な介入戦略について研究した佐々木らは、より効果的・効率的にFIM利得を向上させるには、職種を越えて病棟スタッフ、チーム間で情報共有し、臨床や実際のADL場面に協働して関わることが重要と述べている。結果的にではあるが、我々が行ってきた取り組みが、佐々木らが重要と述べた要素をかなえることに繋がっていた。
このような取り組みにより、当苑のFIM利得が他の施設よりも大きくなったと考える。