講演情報
[14-O-L008-06]認知加算終了後の経過と今後の課題についてコロナ禍の経験
*村松 佑斗1、榊原 茎太1、大野 雅弘1、白井 沙織1、杉本 昌洋1 (1. 愛知県 老人保健施設ベルヴューハイツ)
認知症短期集中リハビリテーション加算算定中、及び算定終了後6ヶ月後の経過について報告する。HDS-RとFIMを用いて評価を実施。結果、ほぼ全員に認知機能の向上が見られたが、半年後には対象者の半数が開始前まで低下した。算定期間終了後の対象者との関わり方について、リハビリ時以外の時間も含めて再考する必要がある。
【はじめに】 認知症短期集中リハビリテーション加算(以下認知加算)は、認知症と診断されて入所された方の中から、リハビリテーションによって生活機能の改善が見込まれると判断され、Mini Mental State Examination(MMSE)または改訂長谷川式簡易知能評価スケール(以下HDS-R)において概ね5点~25点に相当する方が対象となる。 当施設では認知加算終了後に認知機能訓練を継続していく為、集団リハビリを実施していたがコロナ禍の影響で感染防止及びマンパワーの不足等によりやむを得ず行えない期間が何度かできてしまった。 そこで今回、認知加算終了後認知機能訓練が実施できなかった入所者の経過と今後の課題について検証した。【対象】 医師の指示の下、新規入所者又は今までに認知加算を算定した事のない再入所者計13名。内訳は男性0名、78歳~99歳の女性13名、平均年齢89.4歳、認知加算開始時のHDS-Rは7点~21点で平均13.8点だった。【方法】 身体機能訓練と並行して1回20分以上、計算や漢字の書き取りの課題、間違い探しや時計合わせ等のプリント、パズルやトランプ(神経衰弱)を中心に週3回3ヶ月間実施した。HDS-Rを認知加算開始時から終了までの1ヶ月毎の計4回、認知加算終了後は6ヶ月後に測定を実施した。加えてFunctional Independence Measure(以下FIM)を認知加算開始時と認知加算終了6ヶ月後にそれぞれ測定した。又、認知加算と短期集中リハビリ加算を同時に算定している入所者もあった。【結果】 認知加算終了後には開始時のHDS-Rの点数に関わらずほぼ全員に認知機能の向上が見られた。しかし、認知加算終了から半年後の検査では、ほぼ全員にHDS-Rの低下が見られ、低下の幅は1点~6点までだった。又、13名中の8名が開始時に近い点数まで低下していた。開始時より低下している入所者は7名だった。低下が見られた入所者の中でも身体機能が維持できていて、日常生活動作における自立度の高い入所者はHDS-Rの点数の低下幅が小さかった。一方で、認知加算算定中から認知加算終了後にFIMによる点数の低下が確認された対象者程、HDS-Rの低下幅が大きくなっていた。具体的には自立歩行が維持できている対象者はHDS-Rの低下幅が小さく、自立歩行から車椅子へと日常生活動作レベルの低下が見られた対象者は低下幅が大きくなった。【考察】 認知加算算定中は特に短期記憶や日時の見当識を中心に認知機能の向上が見られた。そこで認知加算算定中から自主訓練として脳トレプリントやパズルを実施、新聞を読む時間を作る、リハビリ時や他部署の協力を得てレクリエーション等で日時季節の見当識を再確認する等を習慣化していく事で認知機能の低下を少しでも防ぐ事ができたのではないかと考える。 また、HDS-RとFIMの推移から日常生活においても歩行を中心に自分で行えている能力を老健入所へと環境が変わってもしっかりと維持していけるかが重要である。【まとめ】 認知加算終了後コロナ対策における様々な制限期間もあり、ほとんどの対象者が認知加算開始時に近い点数まで戻ってしまった。認知加算終了後も認知機能低下予防に向け、リハビリだけではなく介護職や他部署の協力を得ながら取り組む事の重要性を再確認する機会となった。