講演情報
[14-O-L009-01]当施設の自宅復帰に向けたリハビリの取り組み
*滝 友実1 (1. 静岡県 介護老人保健施設エスコートタウン静清)
当施設では、超在宅強化型を算定しリハビリテーションに力を入れて取り組んでいる。自宅退所した利用者と自宅以外に退所した利用者を対象に調査を行い、自宅退所した群の方がよりFIMが向上したことが明らかになった。リハビリの量と質の向上、リハビリカンファレンスの導入、個別リハビリ以外での活動が自宅退所につながった要因と考えられる。そのため自宅復帰を促進する取り組みをこれからも継続して行っていく。
【はじめに】当介護老人保健施設では介護老人保健施設の区分として「超在宅強化型」を算定し、リハビリテーション(以下リハビリ)においても在宅復帰に力を入れてきた。リハビリでは短期集中リハビリテーションの算定基準の条件である入所日から起算して3月以内の期間に20分以上の個別リハビリをおおむね1週間に3日以上実施するとされているところ、当施設では1週間に6回、20分以上実施。また、6か月経過した利用者に対し運営基準の機能訓練としての入所者1人について少なくても週2回程度行うとされているところ、3か月経過した機能訓練として週3回で20分以上実施し、基準よりも多くのリハビリを実施している。その中で自宅へ退所する利用者様に対し個別リハビリに加え、「自主トレーニング」や生活場面でのリハビリを進め、在宅復帰を目指してきた。そこでリハビリの取り組みの経過と成果、今後の展望を報告する。
【対象】R5年9月~R6年6月の10か月までに当施設へ入所した利用者(対象89名、年齢82.5±10.4、男性36名、女性53名)の中で自宅退所した利用者と自宅以外(救急搬送を除き、在宅系施設を含む)に退所した利用者を対象とした。(対象38名、年齢81.0±11.0歳、男性14名、女性24名)
【方法】入所時に退所後の希望先として「自宅」または「検討中」と希望した利用者、54名に対し優先的に個別のリハビリテーションに加え、自主トレーニングの提示や個別リハビリ以外での取り組みとして集団体操や集団離床を行った。自主トレーニングとしては空圧式筋力トレーニングマシンHUR(以下HUR)での下肢の筋力強化やスリングエクササイズセラピーツールレッドコード(以下RC)を使用した体幹トレーニング、歩行練習、その他個別メニューなどを各個人の能力に応じて提示した。HURの乗り降りや操作、道具の準備など本人のできる能力に応じて参加させた。RCはテレビ前に椅子を並べ映像を見ながら行った。なお、これらの動作は自主トレとして行えるまでに担当のリハビリスタッフが指導している。認知機能面に関して単純計算や塗り絵などを本人へ渡し、リハビリ時間外での作業を促した。集団体操では各階に週1回リハビリ時間以外での体操を約30分実施し、集団離床では重度介助者を中心に離床させ、週4回カラオケを聴きながら、1時間ほどの離床を促し、その他の利用者も歌い手・聞き手として参加させる取り組みを実施した。またR5年9月から短期集中リハビリテーションを算定している利用者には1か月に1度リハビリカンファを行い、利用者のリハビリ内容や時間数が適切であるか等、リハビリスタッフでカンファレンスを行い利用者にあったリハビリ方法を検討した。そして、3か月後のADLの変化をFIM利得にて検証し、統計解析はt検定を用いた。
【結果】自宅退所した群はFIM利得11.7±12.8、自宅以外に退所した群は FIM利得9.15±5.6となり、両方とも退所時のFIMが向上したという結果となった。またt検定により2つのデータには有意差が認められ、自宅退所した群は自宅以外に退所した群よりもFIMの向上が認められた。
【考察】今回のリハビリの取り組みを実施し自宅退所した群のFIMが向上した理由としてはリハビリの基準値とされている回数や時間を増加させることによるリハビリの量の向上、リハビリカンファレンスの導入によりリハビリの質の向上、個別リハビリ時間以外での活動時間の向上が考えられる。厚生労働省の介護老人保健施設の参考資料より在宅復帰率50%超えの施設でリハビリ専門職の数が5人を超えている施設は37%(n=289)とされており、多くのリハビリ専門職を配置することで在宅復帰が向上しているといえる。そのため当施設では満床120名に対しリハビリ専門職が8名(内2名が通所リハビリと兼務、1名は非常勤職員)、週に1回言語聴覚士による介入を行うことで、人員を多く配置し在宅復帰に取り組んでいる。またリハビリカンファレンスを月に1回開催することで、他職種で行うカンファレンスよりもより専門性を活かし利用者の状態把握も行え、担当制であったリハビリもチーム全体で行えるようになったため、リハビリの量と質を向上させることができ、FIMが向上したと考えられる。さらに、個別リハビリ以外での活動として自主トレーニングの提示や集団体操・集団離床を個別リハビリ時間以外で行うことで個別リハビリの時間に加え活動する時間が増えることや利用者の能動的な活動を促すことができ、FIMが向上したと考える。特に自宅退所した利用者のFIMの数値を小項目に分けFIM利得をみたところ1.0以上の向上がみられた項目はトイレ動作、排尿管理、トイレ移乗、移動、階段であった。先行研究よりトイレの一連の動作や移動の数値が高いことが自宅退所に有意であるという報告がされているため、上記項目のFIMが向上したことにより自宅退所につながったと考える。そして、自宅退所した群はFIM利得11.7±12.8、自宅以外に退所した群は FIM利得9.15±5.6と両方で向上がみられたが、t検定により自宅以外に退所した群よりも有意差がみとめられ、自宅退所した群へのリハビリの取り組みは有用であったと考える。
【まとめ】今回は退所先の希望が「自宅」「検討中」の利用者に対し身体機能のみに着目したが、介護老人保健施設から自宅復帰するための要因についての先行研究では同居家族の有無、家族の介護力など運動能力のみならず利用者個人をとりまく環境についての把握も必要であるという研究がある。リハビリカンファレンスにおいても身体状況だけでなく、環境面についても話合いを行い自宅退所ができる利用者様を増やしていきたい。また短い期間であったが現時点でも有用性が確認できたため、今後もリハビリの取り組みを継続し「在宅復帰(在宅系施設含む)」ではなく「自宅復帰」が増えるようにしていきたいと考えている。
【対象】R5年9月~R6年6月の10か月までに当施設へ入所した利用者(対象89名、年齢82.5±10.4、男性36名、女性53名)の中で自宅退所した利用者と自宅以外(救急搬送を除き、在宅系施設を含む)に退所した利用者を対象とした。(対象38名、年齢81.0±11.0歳、男性14名、女性24名)
【方法】入所時に退所後の希望先として「自宅」または「検討中」と希望した利用者、54名に対し優先的に個別のリハビリテーションに加え、自主トレーニングの提示や個別リハビリ以外での取り組みとして集団体操や集団離床を行った。自主トレーニングとしては空圧式筋力トレーニングマシンHUR(以下HUR)での下肢の筋力強化やスリングエクササイズセラピーツールレッドコード(以下RC)を使用した体幹トレーニング、歩行練習、その他個別メニューなどを各個人の能力に応じて提示した。HURの乗り降りや操作、道具の準備など本人のできる能力に応じて参加させた。RCはテレビ前に椅子を並べ映像を見ながら行った。なお、これらの動作は自主トレとして行えるまでに担当のリハビリスタッフが指導している。認知機能面に関して単純計算や塗り絵などを本人へ渡し、リハビリ時間外での作業を促した。集団体操では各階に週1回リハビリ時間以外での体操を約30分実施し、集団離床では重度介助者を中心に離床させ、週4回カラオケを聴きながら、1時間ほどの離床を促し、その他の利用者も歌い手・聞き手として参加させる取り組みを実施した。またR5年9月から短期集中リハビリテーションを算定している利用者には1か月に1度リハビリカンファを行い、利用者のリハビリ内容や時間数が適切であるか等、リハビリスタッフでカンファレンスを行い利用者にあったリハビリ方法を検討した。そして、3か月後のADLの変化をFIM利得にて検証し、統計解析はt検定を用いた。
【結果】自宅退所した群はFIM利得11.7±12.8、自宅以外に退所した群は FIM利得9.15±5.6となり、両方とも退所時のFIMが向上したという結果となった。またt検定により2つのデータには有意差が認められ、自宅退所した群は自宅以外に退所した群よりもFIMの向上が認められた。
【考察】今回のリハビリの取り組みを実施し自宅退所した群のFIMが向上した理由としてはリハビリの基準値とされている回数や時間を増加させることによるリハビリの量の向上、リハビリカンファレンスの導入によりリハビリの質の向上、個別リハビリ時間以外での活動時間の向上が考えられる。厚生労働省の介護老人保健施設の参考資料より在宅復帰率50%超えの施設でリハビリ専門職の数が5人を超えている施設は37%(n=289)とされており、多くのリハビリ専門職を配置することで在宅復帰が向上しているといえる。そのため当施設では満床120名に対しリハビリ専門職が8名(内2名が通所リハビリと兼務、1名は非常勤職員)、週に1回言語聴覚士による介入を行うことで、人員を多く配置し在宅復帰に取り組んでいる。またリハビリカンファレンスを月に1回開催することで、他職種で行うカンファレンスよりもより専門性を活かし利用者の状態把握も行え、担当制であったリハビリもチーム全体で行えるようになったため、リハビリの量と質を向上させることができ、FIMが向上したと考えられる。さらに、個別リハビリ以外での活動として自主トレーニングの提示や集団体操・集団離床を個別リハビリ時間以外で行うことで個別リハビリの時間に加え活動する時間が増えることや利用者の能動的な活動を促すことができ、FIMが向上したと考える。特に自宅退所した利用者のFIMの数値を小項目に分けFIM利得をみたところ1.0以上の向上がみられた項目はトイレ動作、排尿管理、トイレ移乗、移動、階段であった。先行研究よりトイレの一連の動作や移動の数値が高いことが自宅退所に有意であるという報告がされているため、上記項目のFIMが向上したことにより自宅退所につながったと考える。そして、自宅退所した群はFIM利得11.7±12.8、自宅以外に退所した群は FIM利得9.15±5.6と両方で向上がみられたが、t検定により自宅以外に退所した群よりも有意差がみとめられ、自宅退所した群へのリハビリの取り組みは有用であったと考える。
【まとめ】今回は退所先の希望が「自宅」「検討中」の利用者に対し身体機能のみに着目したが、介護老人保健施設から自宅復帰するための要因についての先行研究では同居家族の有無、家族の介護力など運動能力のみならず利用者個人をとりまく環境についての把握も必要であるという研究がある。リハビリカンファレンスにおいても身体状況だけでなく、環境面についても話合いを行い自宅退所ができる利用者様を増やしていきたい。また短い期間であったが現時点でも有用性が確認できたため、今後もリハビリの取り組みを継続し「在宅復帰(在宅系施設含む)」ではなく「自宅復帰」が増えるようにしていきたいと考えている。