講演情報
[14-O-L009-02]当施設におけるリハビリ効果の傾向と機能的役割意識
*小林 正明1、佐藤 大貴1 (1. 東京都 介護老人保健施設アルカディア)
当施設におけるリハビリの効果を明らかにすることを目的に、初期と3ヶ月後においてADLの変化をICFステージングにて比較検討した。対象者55名について調査した結果、移動及びADL、認知機能、周辺症状に改善が認められた。一方で、移動及びADLはできるADLとしているADLにも差が認められた。したがってリハビリの効果を生活面に適応していく必要があり、これが当施設の今後の課題及び機能的役割の1つであると考えられる。
【研究背景】
リハビリのアウトカムは、回復期など医療現場ではFIM利得やFIM効率などの指標を用いられ、リハビリの効果について明らかにされている。一方で老健施設でのアウトカムはICFステージングでの指標が老健協会から推奨されているが、ICFステージングの要約指標を用いたリハビリの効果についての報告はまだ少ない状況である。今回我々は3ヶ月間の短期集中・認知症リハビリの介入のあったケースについて、3ヶ月に及ぶリハビリの効果について検証したので、ここに報告する。
【研究目的】
3ヶ月間の短期集中・認知症リハビリの介入のあったケースについて、ADLの変化やリハビリの効果を把握し、在宅復帰に必要なADLやリハビリの課題について考え、今後の業務の一助とすることを目的とした。
【倫理的配慮】
研究に関わる関係者は、研究対象者の個人情報保護について適用される法令・条例を順守する。開示すべき利益相反関係にある企業等はない。
【方法】
2022年4月1日から2023年3月31日に入所かつ、3ヶ月間の短期集中・認知症リハビリを実施した55名の、入所後の初期評価と3ヶ月後再評価のICFステージングから、要約指標を求め比較した。なお、各項目の差の検定はstudentのt検定を用い、有意水準を5%として判定した。
【対象者の特徴】
年齢:85.4歳(6.0) 介護度:3.1(1.2) 在所日数:262.9日(138.3)
入所元:病院37名 自宅16名 老健2名 退所先:自宅13名(37.1%) その他22名
【結果】
入所後の初期評価と3ヶ月後再評価のICFステージングの要約指標を表1に示した。
移動およびADLでは、『している』は11.8(入所後)が12.1(3ヶ月後)、『できる』は12.3(入所後)が12.7(3ヶ月後)に変化した。『している』・『できる』ともに、入所後と3ヶ月後ではそれぞれ有意差(p<0.05)が認められた。入所後・3ヶ月後ともに、『している』と『できる』ではそれぞれ有意差(p<0.05)が認められ、実生活と能力において差が生じていることが明らかとなった。食事およびセルフケアでは、『している』は18.0(入所後)が18.1(3ヶ月後)、『できる』は18.1(入所後)が18.2(3ヶ月後)に変化した。『している』・『できる』ともに、入所後と3ヶ月後ではそれぞれ有意差は認められなかった。入所後・3ヶ月後ともに、『している』と『できる』ではそれぞれ有意差(p<0.05)が認められ、実生活と能力において差が生じていることが明らかとなった。認知機能では、『している』は10.7(入所後)が10.9(3ヶ月後)、『できる』は10.9(入所後)が11.2(3ヶ月後)に変化した。『している』は入所後と3ヶ月後では有意差は認められなかった。『できる』は入所後と3ヶ月後では有意差(p<0.05)が認められた。入所後・3ヶ月後ともに、『している』と『できる』ではそれぞれ有意差(p<0.05)が認められた。社会参加では、『している』は5.1(入所後)が5.3(3ヶ月後)、『できる』は5.3(入所後)が5.4(3ヶ月後)に変化した。『している』・『できる』ともに、入所後と3ヶ月後ではそれぞれ有意差は認められなかった。入所後・3ヶ月後ともに、『している』と『できる』ではそれぞれ有意差(p<0.05)が認められ、実生活と能力において差が生じていることが明らかとなった。周辺症状では、『している』は0.7(入所後)が0.4(3ヶ月後)に変化した。入所後と3ヶ月後では有意差(p<0.05)が認められ、周辺症状が緩解した。
【考察】
1)移動およびADLの改善について
移動およびADLが3ヶ月のリハビリを経て改善していることが明らかとなった。一方で、生活面で『している』能力とリハビリ場面で発揮される『できる』能力の間にも有意に差が生じており、生活面での伸びしろがあると考えられる。リハビリで獲得された能力を、いかにして生活面に落とし込んでいくかが重要となる。
2)認知機能の改善について
『できる』評価において、3ヶ月のリハビリにより周辺症状の緩解が有意に認められた。このことはリハビリの介入回数だけではなく、多職種協働による生活支援なども含まれていると考えられ、生活環境の整備や心身の支援が効果的であったことが考えられる。一方で、認知機能の評価に乖離が生じる事はないはずだが、有意差ありの結果を踏まえると、課題が残った。
3)老健でのリハビリ効果と在宅復帰について
リハビリの介入により、ADLの改善が認められたが、改善の割合は低かった。しかしながら、自宅への退所は約40%であり、在宅復帰を支援するにあたって、必ずしもADLの改善が大きなテーマになるとは一概には言えず、家族への介護指導や介護負担に対しての心理的サポートにより、自宅復帰を促進できる可能性を示唆している。
【今後のミッション】
今回の研究により、以下の4つが当施設の今後のミッションであり、機能的役割意識であると考えられた。
1)リハビリの効果を生活面に落とし込んでいくチームアプローチの構築
2)認知症への取り組みをさらに高める為の、健康や生活支援・生活環境の整備などのアプローチの充実化
3)在宅復帰に関して、要介護者・家族介護者双方への心理的・教育的支援の実施
4)地域でのネットワークを充実し、在宅での問題を早期に対応でき、安心して暮らせる地域づくり
リハビリのアウトカムは、回復期など医療現場ではFIM利得やFIM効率などの指標を用いられ、リハビリの効果について明らかにされている。一方で老健施設でのアウトカムはICFステージングでの指標が老健協会から推奨されているが、ICFステージングの要約指標を用いたリハビリの効果についての報告はまだ少ない状況である。今回我々は3ヶ月間の短期集中・認知症リハビリの介入のあったケースについて、3ヶ月に及ぶリハビリの効果について検証したので、ここに報告する。
【研究目的】
3ヶ月間の短期集中・認知症リハビリの介入のあったケースについて、ADLの変化やリハビリの効果を把握し、在宅復帰に必要なADLやリハビリの課題について考え、今後の業務の一助とすることを目的とした。
【倫理的配慮】
研究に関わる関係者は、研究対象者の個人情報保護について適用される法令・条例を順守する。開示すべき利益相反関係にある企業等はない。
【方法】
2022年4月1日から2023年3月31日に入所かつ、3ヶ月間の短期集中・認知症リハビリを実施した55名の、入所後の初期評価と3ヶ月後再評価のICFステージングから、要約指標を求め比較した。なお、各項目の差の検定はstudentのt検定を用い、有意水準を5%として判定した。
【対象者の特徴】
年齢:85.4歳(6.0) 介護度:3.1(1.2) 在所日数:262.9日(138.3)
入所元:病院37名 自宅16名 老健2名 退所先:自宅13名(37.1%) その他22名
【結果】
入所後の初期評価と3ヶ月後再評価のICFステージングの要約指標を表1に示した。
移動およびADLでは、『している』は11.8(入所後)が12.1(3ヶ月後)、『できる』は12.3(入所後)が12.7(3ヶ月後)に変化した。『している』・『できる』ともに、入所後と3ヶ月後ではそれぞれ有意差(p<0.05)が認められた。入所後・3ヶ月後ともに、『している』と『できる』ではそれぞれ有意差(p<0.05)が認められ、実生活と能力において差が生じていることが明らかとなった。食事およびセルフケアでは、『している』は18.0(入所後)が18.1(3ヶ月後)、『できる』は18.1(入所後)が18.2(3ヶ月後)に変化した。『している』・『できる』ともに、入所後と3ヶ月後ではそれぞれ有意差は認められなかった。入所後・3ヶ月後ともに、『している』と『できる』ではそれぞれ有意差(p<0.05)が認められ、実生活と能力において差が生じていることが明らかとなった。認知機能では、『している』は10.7(入所後)が10.9(3ヶ月後)、『できる』は10.9(入所後)が11.2(3ヶ月後)に変化した。『している』は入所後と3ヶ月後では有意差は認められなかった。『できる』は入所後と3ヶ月後では有意差(p<0.05)が認められた。入所後・3ヶ月後ともに、『している』と『できる』ではそれぞれ有意差(p<0.05)が認められた。社会参加では、『している』は5.1(入所後)が5.3(3ヶ月後)、『できる』は5.3(入所後)が5.4(3ヶ月後)に変化した。『している』・『できる』ともに、入所後と3ヶ月後ではそれぞれ有意差は認められなかった。入所後・3ヶ月後ともに、『している』と『できる』ではそれぞれ有意差(p<0.05)が認められ、実生活と能力において差が生じていることが明らかとなった。周辺症状では、『している』は0.7(入所後)が0.4(3ヶ月後)に変化した。入所後と3ヶ月後では有意差(p<0.05)が認められ、周辺症状が緩解した。
【考察】
1)移動およびADLの改善について
移動およびADLが3ヶ月のリハビリを経て改善していることが明らかとなった。一方で、生活面で『している』能力とリハビリ場面で発揮される『できる』能力の間にも有意に差が生じており、生活面での伸びしろがあると考えられる。リハビリで獲得された能力を、いかにして生活面に落とし込んでいくかが重要となる。
2)認知機能の改善について
『できる』評価において、3ヶ月のリハビリにより周辺症状の緩解が有意に認められた。このことはリハビリの介入回数だけではなく、多職種協働による生活支援なども含まれていると考えられ、生活環境の整備や心身の支援が効果的であったことが考えられる。一方で、認知機能の評価に乖離が生じる事はないはずだが、有意差ありの結果を踏まえると、課題が残った。
3)老健でのリハビリ効果と在宅復帰について
リハビリの介入により、ADLの改善が認められたが、改善の割合は低かった。しかしながら、自宅への退所は約40%であり、在宅復帰を支援するにあたって、必ずしもADLの改善が大きなテーマになるとは一概には言えず、家族への介護指導や介護負担に対しての心理的サポートにより、自宅復帰を促進できる可能性を示唆している。
【今後のミッション】
今回の研究により、以下の4つが当施設の今後のミッションであり、機能的役割意識であると考えられた。
1)リハビリの効果を生活面に落とし込んでいくチームアプローチの構築
2)認知症への取り組みをさらに高める為の、健康や生活支援・生活環境の整備などのアプローチの充実化
3)在宅復帰に関して、要介護者・家族介護者双方への心理的・教育的支援の実施
4)地域でのネットワークを充実し、在宅での問題を早期に対応でき、安心して暮らせる地域づくり