講演情報

[14-O-P201-03]新入介護職員への教育システムの改善~夜勤(独り立ち)を目指して~

*松尾 美津子1、宮本 圭輔1、宮原 雅人1、大西 公子1 (1. 兵庫県 介護老人保健施設シルバーハウス)
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新入介護職員の目標期間で夜勤開始が難しくなってきている状況を改善するため、教育システムの見直しを行い、夜勤開始の達成率が飛躍的に改善できたので報告する。プリセプターの増員、面談の実施、悩みが聞ける環境づくり、観察指標マニュアルの作成、業務マニュアルの見える化、指導方法の統一とあらゆる方面から教育のアプローチを行った。結果、業務の習得期間の短縮、また精神的な負担の軽減につながった。
【はじめに】
当施設は超強化型老健で96床、利用者様の平均年齢は88.2歳で、平均要介護度3.55、要介護度4又は5の割合が62%になり年々重症度が高くなっている。
シルバーハウスでは新入介護職員(以下新入職員)に寄り添った指導を目指してプリセプター制度を実施しており、入職後、3ヶ月で夜勤が開始できることを新入職員の独り立ちの最終ステップとして設定している。
新入職員の中には年齢も20代から60代と様々で介護未経験者、介護の経験はあるが夜勤をしたことがない方が入職してくる中で利用者様の重症度が進み、対応力や情報量、介護量の増加により、目標である入職後3ヶ月での夜勤開始が難しくなってきている。
そこで教育期間内の3ヶ月でいかに夜勤業務が習得できるのかを考え教育システムの改善に取り組んだので報告する。
【研究目的】
目標期間内での夜勤業務の習得
【研究期間】
2020年1月~2024年3月
【対象者数】
入職者数20代~60代の36名
介護未経験者14名
介護経験者22(夜勤経験者12名、夜勤未経験者10名)
【方法】
1.マニュアル、チェックリストの見直し
日勤業務一覧表で1日の業務の流れを説明しながら教育を行ってきたが、チェックリスト項目を設けどこまで教育が進んでいるのかをお互いが把握しやすくした。
業務マニュアルに画像を挿入し誰がみても理解しやすいように変更した。
観察指標のマニュアルを作成し新入職員が利用者様の状態変化に素早くきづけるようにした。
2.プリセプター制度の充実
プリセプターの人数を2名から6名に増員し新入職員1人に対して1人のプリセプターが担当。
看護師のプリセプターも1名増員することで医療面での相談、看護師の視点での教育も行っている。
個々にあった指導計画を立てて業務習得まで担当プリセプターを中心にスタッフがペアとしてつき、マンツーマンで指導を行っている。
新入職員の悩みの相談、また業務の進捗状況が分るようにプリセプター同士で情報の共有を月に1回の会議で行い、新入職員の状況を把握できるようにした。
3.面談の実施
入職後1ヶ月後と3ヶ月後には看護師長、介護主任との面談を行っていたが、新入職員の状況をその都度細かく把握できるように面談の回数を3回から7回に変更した。
夜勤業務開始前には看護師長、プリセプターとの三者面談を行い、新入職員が不安なく夜勤業務が開始できるようにした。
4. 夜勤前の急変時や看取りのシュミレーションの実施
夜勤の急変時に素早く動けるよう夜勤前に看護師による急変時の対応、また看取り委員よるエンゼルケアの勉強会を行った。
【結果】
2020~2022年
新入職員24名中18名が夜勤業務の開始ができましたが、目標である3ヶ月以内に夜勤業務が開始できたのは6名だった。
中には半年、1年たっても夜勤業務の開始ができなかったスタッフが3名いた。
改善後の2023年1月~2024年3月
12名中10名が教育期間内の3ヶ月で夜勤業務の開始をすることができた。
改善後は3ヶ月での夜勤開始の達成率が25%→83%と飛躍的にアップさせることができた。
今回の研究期間には外国人スタッフの方も含まれており、利用者様とのコミュニケーションで少し戸惑った部分もあったが、同じ教育システムで夜勤業務の開始まで行うことができた。
【考察】
新入職員の夜勤業務開始の遅れの原因を考えた結果、指導者側が考えている以上に指導方法のばらつきによる精神的な負担が新入職員の業務習得に大きく影響していたことが分かった。
プリセプターを増員したことで指導する側にゆとりが生まれ、面談も適宜おこなうことができ、困っていることや分からない事、精神面を含めた悩みも早い段階で解決に向けてのフォローができたと考える。
今回の改善により業務マニュアルに画像を挿入することで見える化を図り指導方法の統一化、また観察指標を使用することで利用者の状態変化に努めることができ、業務の習得期間の短縮に繋がったと思う。
日勤業務一覧のチェックリスト化についてもプリセプターを含み、全職員が新入職員の現在の教育状況を把握するのに有効であり、誰もが新入職員に合わせて教育を実施できるようになった。
プリセプターの増員、面談の実施、悩みが聞ける環境作り、観察指標のマニュアルの作成、業務マニュアルの見える化、指導方法の統一とあらゆる方面からアプローチしてきたことが精神的な負担の解消、業務の習得期間の短縮に繋がったと思われる。
【おわりに】
今後も認知症利用者への対応、身体提介護や精神的介護の必要性が高まっていくと予測される。
年々他業種から来られる方もいれば介護未経験の方や介護経験はあるが夜勤を経験したことがない新入職員が多くなっているのが現状である。
業務だけではなく新入職員がうまく職場に溶け込むことができるのか、他のスタッフとうまく連携が取れるのかという部分もプリセプターは考えていきたい。
そのため新入職員1人1人に合わせた教育システムをさらに築いていきたいと考える。