講演情報
[14-O-P201-04]施設内研修会参加率向上を目指す教育委員会の取り組み
*伊東 親正1 (1. 三重県 介護老人保健施設トマト)
教育委員会は施設内研修会について、職員に関心のあるテーマや集合しない方法を模索し、研修形態を変えて参加率向上を目指した企画の取組をしたので報告する。1.動画配信の視聴、2.DVD視聴、3.資料配付の方法で実施し、研修後記名式でレポート提出とした。その結果、動画配信、DVD、資料配付の研修は、いずれも昨年度の集合研修より高い参加率となった。自由な時間での研修、集まらない研修が参加率の向上に繋がった。
【はじめに】
介護老人保健施設においては各種法令等に基づき法定研修の実施が義務付けられている。施設内研修会の狙いは、個人の成長に期待し、組織においては体系的効率性を基本にした知識やスキルを身につけることである。しかし、数年前からの新型コロナウイルス感染症の流行における行動制限が研修の企画を臆病にし、研修を受講する側にとっても知識やスキルを身につける以上に感染の不安が高まり、研修への期待感が低迷する状況が続いた。研修企画側である教育委員会は、職員に関心のある教育テーマ選びや集合しなくてもよい方法などを模索した。そこで、令和5年度は研修形態に変化をもたらし、研修会への参加率向上を目指した企画の取り組みをしたため報告する。
【目的】
施設内研修における職員のスキルアップを目的に、令和4年度の集合して行う研修方法を見直し、テーマに合わせた個人学習を実施することで参加率向上を目指す取り組みを行った。
【研修対象】
令和5年4月から令和6年3月まで当施設に在職している職員93名とした。
【実施方法】
教育委員会では令和5年度の研修会について、実施月の2か月前からテーマに沿った内容を選択し、当施設においての実施方法を検討した。開催日は一年の企画の中に組み込み、1.動画配信の視聴、2.DVD視聴、3.資料配付の3方法で各1回研修会を実施し、研修期間は5日間とした。研修後提出のレポートについては記名式とし、理解度を3段階(理解できた、どちらでもない、理解できなかった)で問いかけ、個人が何を学び、感じたか、自分の課題は何かなどについて、理由欄を設けて記入依頼した。また、参加率は参加確認を行った際の参加者の職員全体に占める割合とした。
【結果】
令和4年度の集合研修と令和5年度の3方法の各テーマと参加率の比較は、「救急対応」については、令和4年度の集合研修(以下、集合研修)は39.5%、動画配信の視聴89.8%、「人権」については、集合研修39.5%、DVD視聴は59.6%、「認知症」については、集合研修29.1%、資料配付は84.8%となり、各研修会において令和4年度の集合研修を上回った。
救急対応のレポートの質問は、印象に残った内容、自分の課題、動画配信の視聴研修についての意見であった。この研修では、動画による指導であったため手順が分かりやすかった、自分のタイミングで研修ができてよいという意見と、実際にできるのか不安である、実技練習をしたいとの意見が多かった。参加者は79名で、理解できたと答えた人は全体の81%、どちらでもない3%、理解できなかった0%、無回答16%であった。
人権のレポートの質問は、印象に残った内容、昨今のニュースになっている高齢者の虐待事件についての感想、自分の課題、DVD視聴研修についての意見であった。このレポートは、利用者側の目線での回答と、介護現場で働く職員としての回答に分かれ、職員側からは「ストレス」という言葉が多く聞かれた。また、DVDの貸出を行わなかったため、会議室での決められた時間の視聴となり、時間枠を増やしてほしいとの意見が多かった。参加者は53名で、理解できたと答えた人は全体の94%、どちらでもない、理解できなかったはいずれも0%、無回答6%であった。
認知症のレポートの質問は、印象に残った内容、事実ではないことを話す利用者への日頃の対応、過去の認知症利用者の印象に残っていること、自分の課題、資料配付研修についての意見であった。レポートの内容は、認知症利用者への対応について、職員個人の力量の差がでた回答となった。また、研修資料が手元に残ってよいとの意見が多かった。参加者は78名で、理解できたと答えた人は全体の81%、どちらでもない8%、理解できなかった0%、無回答11%であった。3方法の研修について、理解できなかったと回答した者は一人も認めなかった。しかし、無回答が動画配信の視聴16%、DVD視聴6%、資料配付11%を認め、研修について何らかの不満や興味のなさが伺える結果となった。
さらに、3方法の研修について、どの研修が参加しやすいか、複数回答可で質問をしたところ、動画配信の視聴35名(45%)、DVD視聴25名(32%)、資料配付41名(53%)となった。
【考察】
動画配信の視聴研修では、時間や場所の制限がないために参加率が向上し、DVD視聴研修では、DVDの個人貸出を行わなかったため時間や場所の制限があることで、動画配信の視聴研修より参加率が低くなったと考えられる。各個人に資料配付をした研修は自己学習研修であったが、資料が手元に残り何度も見直しができることから、参加しやすいという回答が多くなったと考えられる。いずれの研修も令和4年度と比較すると参加率の上昇が認められ、個人の自由な時間での研修、感染を気にせず集まらなくてもよい研修が参加率の向上に繋がったと考える。しかし、参加をしなかった職員及び無回答者については、理由が不明瞭な点があり、参加率のさらなる向上を目指すためにはこれらの理由についても解析が必要であると考える。
【終わりに】
今後は、試みた3方法とこれら以外の研修方法についてもさらに検討を行い、レポートの職員の意見を大切にし、職員が関心をもって研修会に参加できるよう教育委員会としての役割を認識して、目標を達成する研修企画を考えたい。また、実技訓練を必要とするテーマや職員の知識や技術に格差がある場合の対応としては、少人数での部署別研修の開催やグループワークを取り入れ、職員間に問題意識を共有させるなど今後の課題も見つけることができた。当施設がより良い老健施設となるよう学びを深め、個人が成長し、組織として職場の活性化を図れるよう努めていきたい。
介護老人保健施設においては各種法令等に基づき法定研修の実施が義務付けられている。施設内研修会の狙いは、個人の成長に期待し、組織においては体系的効率性を基本にした知識やスキルを身につけることである。しかし、数年前からの新型コロナウイルス感染症の流行における行動制限が研修の企画を臆病にし、研修を受講する側にとっても知識やスキルを身につける以上に感染の不安が高まり、研修への期待感が低迷する状況が続いた。研修企画側である教育委員会は、職員に関心のある教育テーマ選びや集合しなくてもよい方法などを模索した。そこで、令和5年度は研修形態に変化をもたらし、研修会への参加率向上を目指した企画の取り組みをしたため報告する。
【目的】
施設内研修における職員のスキルアップを目的に、令和4年度の集合して行う研修方法を見直し、テーマに合わせた個人学習を実施することで参加率向上を目指す取り組みを行った。
【研修対象】
令和5年4月から令和6年3月まで当施設に在職している職員93名とした。
【実施方法】
教育委員会では令和5年度の研修会について、実施月の2か月前からテーマに沿った内容を選択し、当施設においての実施方法を検討した。開催日は一年の企画の中に組み込み、1.動画配信の視聴、2.DVD視聴、3.資料配付の3方法で各1回研修会を実施し、研修期間は5日間とした。研修後提出のレポートについては記名式とし、理解度を3段階(理解できた、どちらでもない、理解できなかった)で問いかけ、個人が何を学び、感じたか、自分の課題は何かなどについて、理由欄を設けて記入依頼した。また、参加率は参加確認を行った際の参加者の職員全体に占める割合とした。
【結果】
令和4年度の集合研修と令和5年度の3方法の各テーマと参加率の比較は、「救急対応」については、令和4年度の集合研修(以下、集合研修)は39.5%、動画配信の視聴89.8%、「人権」については、集合研修39.5%、DVD視聴は59.6%、「認知症」については、集合研修29.1%、資料配付は84.8%となり、各研修会において令和4年度の集合研修を上回った。
救急対応のレポートの質問は、印象に残った内容、自分の課題、動画配信の視聴研修についての意見であった。この研修では、動画による指導であったため手順が分かりやすかった、自分のタイミングで研修ができてよいという意見と、実際にできるのか不安である、実技練習をしたいとの意見が多かった。参加者は79名で、理解できたと答えた人は全体の81%、どちらでもない3%、理解できなかった0%、無回答16%であった。
人権のレポートの質問は、印象に残った内容、昨今のニュースになっている高齢者の虐待事件についての感想、自分の課題、DVD視聴研修についての意見であった。このレポートは、利用者側の目線での回答と、介護現場で働く職員としての回答に分かれ、職員側からは「ストレス」という言葉が多く聞かれた。また、DVDの貸出を行わなかったため、会議室での決められた時間の視聴となり、時間枠を増やしてほしいとの意見が多かった。参加者は53名で、理解できたと答えた人は全体の94%、どちらでもない、理解できなかったはいずれも0%、無回答6%であった。
認知症のレポートの質問は、印象に残った内容、事実ではないことを話す利用者への日頃の対応、過去の認知症利用者の印象に残っていること、自分の課題、資料配付研修についての意見であった。レポートの内容は、認知症利用者への対応について、職員個人の力量の差がでた回答となった。また、研修資料が手元に残ってよいとの意見が多かった。参加者は78名で、理解できたと答えた人は全体の81%、どちらでもない8%、理解できなかった0%、無回答11%であった。3方法の研修について、理解できなかったと回答した者は一人も認めなかった。しかし、無回答が動画配信の視聴16%、DVD視聴6%、資料配付11%を認め、研修について何らかの不満や興味のなさが伺える結果となった。
さらに、3方法の研修について、どの研修が参加しやすいか、複数回答可で質問をしたところ、動画配信の視聴35名(45%)、DVD視聴25名(32%)、資料配付41名(53%)となった。
【考察】
動画配信の視聴研修では、時間や場所の制限がないために参加率が向上し、DVD視聴研修では、DVDの個人貸出を行わなかったため時間や場所の制限があることで、動画配信の視聴研修より参加率が低くなったと考えられる。各個人に資料配付をした研修は自己学習研修であったが、資料が手元に残り何度も見直しができることから、参加しやすいという回答が多くなったと考えられる。いずれの研修も令和4年度と比較すると参加率の上昇が認められ、個人の自由な時間での研修、感染を気にせず集まらなくてもよい研修が参加率の向上に繋がったと考える。しかし、参加をしなかった職員及び無回答者については、理由が不明瞭な点があり、参加率のさらなる向上を目指すためにはこれらの理由についても解析が必要であると考える。
【終わりに】
今後は、試みた3方法とこれら以外の研修方法についてもさらに検討を行い、レポートの職員の意見を大切にし、職員が関心をもって研修会に参加できるよう教育委員会としての役割を認識して、目標を達成する研修企画を考えたい。また、実技訓練を必要とするテーマや職員の知識や技術に格差がある場合の対応としては、少人数での部署別研修の開催やグループワークを取り入れ、職員間に問題意識を共有させるなど今後の課題も見つけることができた。当施設がより良い老健施設となるよう学びを深め、個人が成長し、組織として職場の活性化を図れるよう努めていきたい。