講演情報

[14-O-P201-06]eラーニングを活用した施設内研修の継続

*木村 安子1、上田 紗千子1 (1. 三重県 介護老人保健施設あのう)
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介護保険施設では、各種法令で定められた研修を行うことが義務付けられている。施設で研修会を開催することは、その準備から日々の業務と並行し多大な負担となっている。しかし、この研修を行うことの意義は大きく、質の高い介護の提供には欠かせない。そこで私たちは、令和4年4月より研修内容を動画として作成、eラーニングを活用した新しい研修システムの構築に取り組んだ。その後の経過と今後の取り組みについて報告する。
【はじめに】
 私たち介護士の給料は介護報酬の中から支払われている。介護報酬とは、介護事業者が利用者に介護サービスを提供した場合に、その対価として事業者に支払われる報酬である。そのためにも、介護サービスの提供においては、介護職員の専門性や能力を向上させるためにも、各種法令に基づく適切な研修を行うことが必要とされる。法定研修を実施しないと、運営基準上、要件を満たしていていないと判断され、介護報酬の減算につながる。今年度の介護報酬の改定で導入された「高齢者虐待防止措置未実施減算」の要件にも、高齢者虐待防止のための年1回以上の研修を行うこと。いう内容も含まれている。しかし、施設で研修会を開催することは、その準備から開催まで日々の業務と並行し、多大な負担となっている。また、集団でかかわる介護から個々でかかわる介護へと時代は変わりつつある中で、様々な勤務体制の中で職員が集まることが困難な状況となっている。しかし、数々の研修を行うことの意義は大きく、質の高い介護の提供には欠かせないものである。そこで、私たちは、新型コロナ感染症が流行し、皆が集まることが難しくなった頃より、eラーニングを活用した、個々で参加できる研修方法に取り組み始めた。その取り組みから3年目となる今、継続性を重視した質の高い介護を提供するために、再度検討と取り組みをおこなった。その継続内容の取り組みを報告させていただく。
【方法】
 集まることなく研修会に参加するためにはどうすればよいのか。私たちは、eラーニングシステムを活用し、職員が作成した研修資料をもとに動画を作成した。研修への参加方法としては、まず研修動画を視聴し、動画時間は15分程度。視聴後は動画内容から3問の問題を出題し、それに回答する。あと、100文字程度の感想を記入する。という方法である。eラーニング上で問題に回答、感想を記入することにより、動画視聴の確認もでき、スマートフォンで手軽に受講することができるようになっている。取り組みから3年目となる今回は、今以上に質の高い研修動画にするため、参加職員に向けて、アンケート調査を実施した。アンケート内容は、誰もが回答しやすいように簡単な内容にした。アンケート内容としては、(1)利用のしやすさについて(2)その回答理由(3)法定研修eラーニングについての意見・要望とした。結果は、利用しやすいが55%、どちらでもないが40%、利用しにくいが5%であった。また、管理者からは、「職員の参加状況が悪い。そのため集計に時間がかかる。」などの声もあった。「どちらでもない。利用しにくい。」と回答した職員からの意見は、「パソコンに慣れない職員、特に中高年者は表示されている文字が見えにくい。ホームページからの移動に時間がかかる。どこをクリックして、どこに入っていくのかが分からない。」などの問題点だった。そこで、改善点として、動画内容については、一部イラストなどを追加し見やすくした。また、一番の問題点となるホームページからのコース表記とアクセス方法に関しては、面倒なクリック作業を減らし、1~2ページで完結できるように変更した。
【結果】
 アンケート結果をもとに、内容については見やすくするため一部イラストなどを追加した。また、ホームページにおいてはコース表記、アクセス方法も見直し改善もおこなった。その結果、職員からは、「研修ページに入りやすく手間がかからなくなった。研修動画の内容も分かりやすくなった。」など、法定研修への参加意欲も高まり参加状況もよくなった。管理者からも、「参加状況が改善されたことにより、職員が期限内にeラーニングに入ることが出来、研修受講を終えられるため、集計などの管理業務にも時間がかからなくなった。」などのプラスの意見もあった。このシステムを活用することにより、全職員が一同に集まる必要がなく各自の都合のよい時間に受講でき、施設で研修資料を作成するなどの負担も軽減された。そして、動画研修を何度も見直すことができるため、自己研鑽にもつながっている。動画作成にあたり、基本的な知識、技術の確認は当然であるが、明瞭簡潔な画面作成、それを補足説明するナレーションの聞き取りやすさ、などに配慮をおこなった。文字と音声の両方で伝えることで、見逃し、聞き逃しを最小限にし、理解を深められるようにもなった。
【まとめ】
 eラーニングを活用した新しい研修システムに含まれる内容は、法令を遵守し安全・安心に施設運営を行っている証となるものであり、介護報酬を得るために必ず実施しなければならない内容になっている。必要な研修をしっかりと実施することは、介護人材を育成するということだけでなく、介護サービスの質を向上させることにも繋がる。ただ、私たちのこの法定研修動画はまだ多くの方に伝えることが出来ていない。今後は8月以降、研修動画を一斉にYouTubeにて公開する予定となっている。この研修動画は、無料で誰でも視聴していただくことが出来るが、視聴のみでは、研修に参加したことにはならない。大切なのは記録に残すことであり、全体のその管理が重要となる。このeラーニングシステムでは、管理者に管理権限のあるパスワードを設定し、全体の参加状況や内容が確認できるようにもなった。これらのシステムは他法人の方にもご利用いただけるようになっている。これからも皆に伝わりやすく、興味をもち、楽しめる研修動画を作成していきたい。