講演情報

[14-O-P202-07]働きたい職場の作り方

*鈴木 智恵1、川江 一世1 (1. 静岡県 医療法人岡崎会 老人保健施設 ハイマート有玉)
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長年の人員不足から働きやすさを求めて取り組んだ結果、離職率の低下に繋がった事例を報告する。働きにくいと感じる原因を分析、原因の一つと考えられる心理的安全性の確保について採用活動に注力した。その結果人員が増え、教育・処遇・感染対策等が飛躍的に改善。様々な心理的安全性が確保されたことにより、職員の心に余裕が生まれ意欲が向上。個人の長所が生かされる職場風土となり、離職率の低下につながったと考えられる。
【はじめに】私たちが取り組んだテーマは働きたい職場の作り方である。長年の人員不足から業務を優先することが第一目標となり身体的にも精神的にも疲弊している状態であった。その状態から脱却するため、働きやすさを求め取り組んだ結果離職率の低下に繋がった事例を報告する。
【目的】離職率の低下につながった具体的な要因を探るため。また、今後地域に選ばれた施設を目指すため、振り返ることにより今後の病棟運営に役立てたい。
【方法】職員の年齢分布、離職率、有給消化率のデータを人材確保が困難であった2年前と現在を比較する。以前の職員の年齢分布は40代以下が約25%、離職率は12%であった。有給消化率は26%と低く有給は取りにくい状態であった。教育体制もおろそかで他部署との連携も取れていない状態であった。さらに職員同士のコミュニケーション不足もおこり自己優先的な考えのもと、職場の雰囲気が悪く新人職員が孤立してしまう環境であった。 働きにくいと感じられる原因分析を行った結果、外的要因と心理的安全性の低下が問題として上がった。 
外的要因として安全管理体制・感染対策がままならない状態で、評価システムに透明性がなく人員不足も加速、介護負担が高い状態であった。 心理的安全性の低下については、職員に余裕がなく、新人の不安や困っていることに対し対応が疎かになり、その結果、離職に繋がるという負の連鎖であった。職員が増えないことで施設への期待や希望もなく絶望的な状態であった。
そのような中で、R5年5月より始めに外的要因の改善に取り組んだ。オンライン研修導入により教育面改善。評価システム透明化や給与・待遇面などなどの処遇改善。介護補助機器導入(ピュアット)による介護スタッフの負担軽減。アルコールボトル全職員配備による感染対策強化。職員の採用活動の強化を行った。 この中で特に力をいれたのが採用活動である。具体的には面接するときからすでに始まり、この施設で働きたくさせる多彩なトークによる太田(師長)magicをかけ、welcome感を演出するとともに、新入職員オリエンテーションでは、岡崎会の理念や施設の概要を浸透させ現場に配属後は全職員が明るい挨拶で迎えた。また以前は新入職員を孤立させていたが、「飴ちゃん食べなよ」とお菓子で声をかけ配慮してくれる先輩、同年代の先輩からは「自身の体験・失敗談」を聞くことで、新入職員の安心感につながった。
【結果】新しいハイマート有玉では離職率が12%から8%に下がり有給消化率は58%に大幅に増え、職員の満足度では、 職場の人間関係・やりがい・精神的な不安の項目で5段階中1ポイント以上改善した。それにともない職員も定着し心理的な余裕も生まれたことに加え他部署との連携強化や、介護プロジェクトにより教育体制を整えた。また他職種との連携やオンライン研修による教育も充実させることで意欲の向上に繋がった。さらに40代以下の若い世代のスタッフが25%から40%に増え、施設全体に活気があふれ未来に期待を持てるようになった。職員の増加と共に稼働も右肩上がりで上昇している。
【結論】これらのことからハイマートにおける働きたい職場の作り方は、外的環境を整えることと、心理的安全性を確保できる体制を作ることであった。現在では、離職率も下がり、風通しのよい組織となり、上下ではなく一つのチームとして個々の人間性を重視した文化を醸成することができるハイマート有玉に生まれかわったと考えられる。