講演情報

[14-O-P203-05]「アシスタント」の力に感謝!感謝!感謝!win-winな関係の構築に向けて

*中村 千穂1、光井  宏1 (1. 東京都 医療法人社団英世会介護老人保健施設カトレア)
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定年後も働きたいニーズと介護職員不足の解決を目的として「アシスタント」という新たな職種での募集を試みた。
採用に繋がっても「想像以上に大変」「命令に納得がいかない」等の理由で退職者が続いた。ミーティングの開催や意見に早急に対応する等を続け、3年目にして離職者が減少した。
お互いが気持ちよく働ける環境を作ることの大切さを実感しここに報告する。
【はじめに】 介護職員の離職率は20%を超えていた時もあるが年々下がってきており、ここ数年は約15%と言われている。全産業と比較しても極めて高いとも言えず平均的な数値ではあるが、入職者数よりも離職者数の方が上回っており人材確保が厳しい業界である。
 当施設においても、介護職員及び送迎ドライバーの両職種において応募が困難な状況が続き、有資格者でなくても出来る業務を担当してくれる職員を「アシスタント」とし、アシスタント導入によりデイケアにもたらすメリットを期待し募集することとした。【目的】 当施設は定員80名の大規模通所リハビリテーション(以下デイケア)であり、ハイエース7台・軽自動車4台を2便から4便で送迎している。送迎業務で18名、フロア業務を合わせると一日約27名の職員が必要となる。送迎ドライバーとして朝夕4.5時間の条件で募集をしていたが、応募者の中には8時間勤務を希望される方も多く、介護職員の募集に対しても応募がない状況が続いていたため、募集内容を大きく見直すことにした。
 検討の結果、一日8時間の勤務とし、朝夕の送迎以外に有資格者でなくても出来る業務を担当してもらうこととした。アシスタントとして応募される方は前職で定年を迎え、セカンドキャリアとして応募してくることがほとんどである。年齢等も考慮して業務を決めたつもりではあったが、業務過多や指導不足による退職が続いてしまったため、改善策の構築が必要であると考えた。【方法】
 福祉の世界に初めて飛び込んだアシスタントができる基本業務を再度見直し、入職後の数日間は役職または業務改善委員が指導することとした。先輩アシスタントによるプリセプター制度も導入し、月に1度アシスタントミーティング・年に2回従業員アンケートを行うことにした。出してもらった意見に対しては、出来るだけ速やかに対応し、対応できない案件に対しても出来ない理由を必ず伝えることにした。
また、定年前に従事していた業務内容を考慮し、固定の業務以外にその人ならではの業務をお願いすることにした。【結果】
 上記解決策を続けることで、3年経ったころより退職者が減少した。また、個々の前職のキャリアを活かした業務を任せることにより、本人の自信につながりご利用者への関りにも良い影響が出てきた。ミーティングの内容も当初は不平不満が多く、指導することを「命令」と受け取る職員もいたが、「男性のご利用者にもレクに参加してもらえるように関わりたい」「ご利用者が安全に使えるように車椅子のメンテナンスをしたい」など、意見にも変化が現れてきた。【考察】
 アシスタントを「介護人財」として確保するためには、やはり配慮は必要だと感じている。これまでの仕事において定年まで勤めあげた方は、役職についていたり、部下を持っていたりという状況にある方がほとんどで、歳を重ねるごとに誰かに教えてもらう環境から離れていたと想像できる。自分より若い職員に教えてもらうこと自体に抵抗があり、受け止めることが出来ないことも珍しくない。
 当デイケアにおいては一日平均75名がご利用となり250名のご利用者が登録している。送迎ルートも固定されていないため、地図を頭に叩き込むことも大変な負担となる。
 アシスタントにお願いする業務は資格がなくてもできる業務としていたが、仕事を覚えてくると、業務の幅を広げてのお願いが出てきてしまうことがあった。例えば、入浴後の整容時に足を乾かしてから靴下をはかせてもらうのだが、「ついでに水虫の薬を塗っていて」と軽い気持ちで依頼してしまうなどがいい例であろう。こちらは「そのくらいいいだろう」という気持ちであるが、依頼されたアシスタントは「医療職でもない自分たちが薬の対応をしていいのだろうか」と疑問を持ち始める。そういった違和感を吐き出せずにいると、関係に歪が出てきてしまい居心地が悪くなってしまうのである。ミーティングを設けたことが、このような問題解決にも役に立っていると実感している。
 今年度より入所部門に設けられた「生産性向上推進体制加算」の要件にもあるように、アシスタントに業務を移行することで、介護職員が介護に集中できる時間を確保することは必要だと感じている。今後は通所部門の加算にも加わる可能性もあると考えられ、サービスの質の向上にもつなげていけるのではないかと考える。
 前職で医薬品業界に携わっていたアシスタントには内服薬の入力を、自動車教習所の教官をしていたアシスタントには社用車を運転する他部署の職員も含め運転技術確認を、緊急車両のメンテナンスをしていたアシスタントにはこれまで整備工場で直してもらっていた傷や不備の対応を、といったその人が持つ技術や知識を発揮してもらうことでモチベーションアップにつながり、多様な人財の活用がコストダウンや有資格者の負担軽減にもつながっていると考えられる。【終わりに】
 「その人らしさを大切に」と福祉業界ではよく使われる言葉ではあるが、この言葉は対ご利用者だけではなく一緒に働くチームメイトにも言えることではないだろうか。定年を迎えてもまだ働きたいと思っているアシスタントが活き活きと働ける環境を作り、日々業務に従事する仲間としてお互いに気持ちの良い挨拶や感謝の気持ちを伝え続けることのが大切なのではないだろうか。
 「助手」や「補助」として有資格者の指示に従うことを業務とする存在ではなく、一緒に働くチームメンバーであることを頭に置いておかなくてはならない。昨今、ITツールや介護ロボットの導入による作業の効率化、身体的負担の軽減が注目されているが、やはり最終的には人と人とのコミュニケーションが人財確保に繋がり顧客満足にも繋がっていくと考える。