講演情報

[14-O-P203-07]職員のためのアロマセラピー香りを通して心を元気に!

*小山路 幸恵1 (1. 福岡県 介護老人保健施設ヴィラくしはら)
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職員のストレス軽減とリラクゼーションを目的としたアロマセラピー導入に向けた活動を振り返り報告する。信頼関係の構築・体験会や講座の開催、現場での活用、対話と香りのモニターの実践を行った。活動を通して、アロマセラピーに対する興味・関心が高まり、香りによるリラクゼーション効果を体感することに繋がった。アロマセラピーは、職員の心の健康のために活用できるのではないかと考える。
【はじめに】
 アロマセラピーは、「芳香療法」としてリラクゼーション効果が期待できる。嗅覚を通して脳を刺激し心身へもたらされる影響もあり、医療・介護現場での活用事例も増えてきた。
私自身も香りの影響を実感した経験から、介護現場にアロマセラピーを活用したい、香りを通して元気になってもらいたいと思い活動してきた。職員に向けて体験会を実施した際、「自分自身に使いたい」という声が多く聞かれ、職員のための癒しの時間・場所が必要だと感じた。 
今回、職員のストレス軽減とリラクゼーションを目的としたアロマセラピー導入に向けた活動を振り返り報告する。
【方法】
(1)期間:令和3年4月~令和6年6月
(2)対象者:施設職員
(3)実践内容
 1)入職後~信頼関係を築く、職場の理解を得るための行動
  2)令和4年12月 アロマセラピー体験会開催
 3)令和5年8月  香りとタッチングについての講座開催
 4)施設内でアロマセラピーの活用(アロマシール・アロマスプレー)
 5)令和6年5月より対話と香りのモニター開始
【活動の実際】
1)職場の理解を得る・職員との信頼関係を築くことを目標に行動した。職員とのコミュニケーションを図り、信頼を得る努力を行った。入職時から、アロマセラピストであること、介護の現場にアロマセラピーを活用したいことを伝えた。その結果、アロマセラピストであることが認識されるようになり、香りに興味がある職員が声をかけてくれるようになった。
2)アロマセラピーへの興味・関心を高めることを目的としてアロマセラピー体験会を実施した。22名の職員が参加、ほとんどの参加者がアロマセラピー初体験であった。好きな香りを選んで、オリジナルのアロマスプレー作りを行った。「楽しかった、癒された」という声が聞かれ、笑顔がみられた。
今後アロマセラピーを使用してみたいかの質問には、全員が「はい」と答え、「自分自身に使いたい」という声が多く聞かれた。
3)アロマセラピーへの理解を深めることを目的に講座を開催した。座学、少人数で2日間に分けて開催、14名の職員が参加した。香りが心身にもたらす影響を伝え、柑橘系の精油を使用したアロマスプレー作成を行った。説明に真剣に耳を傾ける姿がみられ、「香りを嗅いで癒された」という声が聞かれた。
4)香りを気軽に楽しんでもらうために、ステーション内に精油を置いた。当初は活用されてなかったが、アロマシールを置き使用方法を伝えると、アロマシールを名札やユニフォームに使用する姿が見られ、使用量が増えた。
また、数種類の精油をブレンドしたアロマスプレーを置いたところ、空間や自分自身に使用する姿があり、「気分で使いたい香りが違います」と好みの香りを選んで使用していると話をしてくれた。
5)個別ケアを行いたいと思い、令和6年5月より対話と香りのモニターを実施した。モニターを募集した際、34名の職員が参加を希望した。一人ずつ対面で話をし、その方に必要な香りを作成する。体験前後には気分スケールをチェックし、自分の心と体の状態を知る。約1時間程度のセッションである。
参加した職員からは、「話を聞いてもらえただけでも気持ちが楽になった。今の自分に必要な香りを作ってもらえて嬉しかった」「自分と向き合う時間になった」という声が聞かれた。
睡眠前に香りを活用した方が最も多く、実際に香りを使用した後には、「嗅いでいたらいつの間にか眠っていた」「ぐっすり眠れた」「心が軽くなった」との声や、「またこのような機会を作ってほしい」という声も多く聞かれた。「今までで一番好きな香り、また作ってほしい」と香りをリピートされる方もいた。
【考察】
 アロマセラピーを職場で実践していくためには、職場の理解を得ることが一番大切である。次に職員がアロマセラピーに興味・関心を持つこと、香りの影響を実感することが必要である。
積極的に職員とコミュニケーションを図ったこと、思いを伝えていったことが信頼関係の構築・理解に繋がったのではないかと考える。体験会や講座を通して楽しんでもらうこと、香りに親しんでもらうことができ、実際に使用したことで香りによる影響を体感することにも繋がった。
取り組みを通して、香りが好きな職員から声がかかるようになり、アロマスプレーや精油を手に取って活用する人も増えた。継続的に活動を行ったことで、アロマセラピーに対する興味・関心を高めることができたのではないかと考える。
メンタルヘルスケアのためには個別ケアが必要と考え対話と香りのモニターを実践したが、自分の思いを話すこと、香りがあることでリラクゼーション効果を実感することができたと思う。「こういう機会をまた作ってほしい」という声も多く聞かれることから、自分の思いを吐き出す場所、自身と向き合う時間を必要としているのではないかと考える。
活動を通して、アロマセラピーが職員のためのケアとして活用できると実感できた。
【おわりに】
 厚生労働省は、2006年より事業所に対し「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を定めている。
職員は自身の不調に気づいても自分のことを後回しにする傾向がある。職員のメンタルヘルスケアに対して取り組みを行うことは、個人の精神状態を健康に保つことに繋がり、職場の環境改善、ケアの質の向上に繋がるのではないかと思う。アロマセラピーはその一つの方法として活用できると考える。
職員の心の健康のために、アロマセラピーを用いたケアを継続できるよう働きかけていきたい。