講演情報
[14-O-P204-01]フロア全体で取り組む離職ゼロを目指して~安心して働ける環境づくり~
*加藤 治子1 (1. 埼玉県 介護老人保健施設一心館)
当施設では、2020年度より離職率0%を目指し、教育体制を見直した。現在、専任の教育担当者を1名配置しているが、受け入れ人数によっては個別に対応ができないという課題があった。そこで、複数名の入職者にも適切に対応できるように、教育担当者を2名体制にし、所属部署で育成できる環境を整え、部署配属後も継続的に指導できる体制を考え、取り組みを行ったのでここに報告する。
【はじめに】
介護労働実態調査結果より、2022年度の介護職の離職率は14.4%となっており、ピークの2007年の21.6%から比べると低下傾向にある。しかし、高齢者率は2025年にピークを迎え、介護業界では深刻な担い手不足が問題となっている。
一心館(以下当施設)の2023年度の離職率は11.6%であるが、2020年度は14.7%であり、特に入職1年以内の退職者は18.7%であった。
そこで、新人・中途入職者の入職後1年以内の離職率0%を目指し、2020年度より教育体制を見直し、新人・中途入職者が安心して働けるように、専任の教育担当者を配置した。入職後1か月間は、介護基本技術を習得する指導方法に変えたところ、3年間離職率が0%まで低下した。
しかし、専任の教育担当者は施設で1名であったため、新人・中途入職者の受け入れ人数によっては個別に対応ができないことと配属部署ではないフロアでの指導になってしまうことが課題であった。
そこで、複数名の入職者にも適切に対応できるように、教育担当者を2名体制にし、所属部署で育成できる環境整備を考え、取り組みを行ったので、ここに報告する。
【目的】
〈1〉教育担当者を2名に増員して、新人・中途入職者が不安なく配属部署で指導を受けることができる。
〈2〉所属長が教育体制を理解し、新人・中途入職者の部署配属後、継続的に指導できる体制を整える。
【方法】
1. 教育担当者を選出し、半年間の指導計画を立案し指導する。
〈取り組み〉
・介護看護部教育運用規定第1版作成
・介護看護管理者会議にて、教育担当者の選出
・専任の教育担当者から新教育担当者へ、介護看護部教育運用規定を用いて、新人・中途入職者教育体制についての説明
・実際の指導場面の見学
・運用規定や介護日常業務手順書を用いて指導方法と声掛けの統一
2. アンケートを用いて所属長の教育体制の理解度を確認し、課題に向け取り組む。
〈取り組み〉
・所属長へのアンケート実施
・課題抽出と指導
・所属長と専任教育担当者、新人・中途入職者の3者面談の定期開催
・介護技術の統一化をはかるため介護看護管理者会での協議
【結果】
教育担当者を1名から2名に増員したことで、配属フロアに分かれて指導ができるようになった。複数名の同時入職者に対して、配属部署での指導が可能になり、個別に合わせた指導ができるようになった。新人・中途入職者からは「自分の配属部署で、配属前にマンツーマンで介護基本技術を自分のペースで出来るようになるまで教えてくれるので本当に良かった」「こんなに丁寧に教えてくれる施設は初めて、画期的」との声が聞かれ、入職後の不安が軽減した。
そして、2人の教育担当者で分担することで、2か所のフロアを同時に見る事ができるため、ルールや介護基本技術がフロア独自のやり方になってしまった場合でも、早い段階で気付くことができ、施設全体での修正ができるようになった。
また、アンケートを用いて所属長の認識を確認することで、所属長への説明内容が明確になり、所属長への理解に繋がった。新人・中途入職者の部署配属前に、教育担当者からの指導内容チェック表を用いて、引き継ぎを受け、情報を共有し、3者面談をルール化したことで、所属長としての教育の役割を認識することができた。所属長からは「進む道が明確になった」「3者面談を通じて日常の会話だけでは気付けない事が聞けるのでよかった」との声が聞かれた。新人・中途入職者とのコミュニケーションも増え、定期面談では、取り組み前よりも新人・中途入職者の不安や気持ちの変化を聞くことができるようになった。
【考察】
今回の取り組みで、教育担当者の配置を2名に増員し複数名の新人・中途入職者に対して個別の指導ができるようになったことで、新人・中途入職者の安心につながり、離職率0%(入職後1年間)の維持ができたと考えられる。
教育体制に対する所属長の理解度をアンケートから現状把握し、理解度を上げるために教育運用規定やルール作りに取り組んだことにより、理解度を上げることができ、所属長の役割を認識することができた。
しかし、介護経験の長い入職者にとっては、すべての介護技術について、見られている、否定されるのではないか、という不安に繋がる可能性もある。そのため、経験年数や技術チェック表を用いて、個別のマンツーマン指導期間を考えることも大事である。
新人・中途入職者に限らず、全ての職員が安心して働けるように、所属長はマネジメント力をあげ、全体を見れるようになることが必要だと考える。
【おわりに】
今回の取り組みにより、教育担当者を1名から2名に増員したことで、新人・中途入職者は配属前に、複数名の同時入職時に配属予定部署での指導が受けられるようになり、入職時からの不安軽減に繋がった。
また、所属長が新しい教育体制を理解した事で、プリセプター中心となっていた教育環境から、所属長中心に育成できる教育環境へと変化している。
今後は、新人・中途入職者指導から全体の教育システムを構築し、働きやすい職場にしていきたいと考える。
介護労働実態調査結果より、2022年度の介護職の離職率は14.4%となっており、ピークの2007年の21.6%から比べると低下傾向にある。しかし、高齢者率は2025年にピークを迎え、介護業界では深刻な担い手不足が問題となっている。
一心館(以下当施設)の2023年度の離職率は11.6%であるが、2020年度は14.7%であり、特に入職1年以内の退職者は18.7%であった。
そこで、新人・中途入職者の入職後1年以内の離職率0%を目指し、2020年度より教育体制を見直し、新人・中途入職者が安心して働けるように、専任の教育担当者を配置した。入職後1か月間は、介護基本技術を習得する指導方法に変えたところ、3年間離職率が0%まで低下した。
しかし、専任の教育担当者は施設で1名であったため、新人・中途入職者の受け入れ人数によっては個別に対応ができないことと配属部署ではないフロアでの指導になってしまうことが課題であった。
そこで、複数名の入職者にも適切に対応できるように、教育担当者を2名体制にし、所属部署で育成できる環境整備を考え、取り組みを行ったので、ここに報告する。
【目的】
〈1〉教育担当者を2名に増員して、新人・中途入職者が不安なく配属部署で指導を受けることができる。
〈2〉所属長が教育体制を理解し、新人・中途入職者の部署配属後、継続的に指導できる体制を整える。
【方法】
1. 教育担当者を選出し、半年間の指導計画を立案し指導する。
〈取り組み〉
・介護看護部教育運用規定第1版作成
・介護看護管理者会議にて、教育担当者の選出
・専任の教育担当者から新教育担当者へ、介護看護部教育運用規定を用いて、新人・中途入職者教育体制についての説明
・実際の指導場面の見学
・運用規定や介護日常業務手順書を用いて指導方法と声掛けの統一
2. アンケートを用いて所属長の教育体制の理解度を確認し、課題に向け取り組む。
〈取り組み〉
・所属長へのアンケート実施
・課題抽出と指導
・所属長と専任教育担当者、新人・中途入職者の3者面談の定期開催
・介護技術の統一化をはかるため介護看護管理者会での協議
【結果】
教育担当者を1名から2名に増員したことで、配属フロアに分かれて指導ができるようになった。複数名の同時入職者に対して、配属部署での指導が可能になり、個別に合わせた指導ができるようになった。新人・中途入職者からは「自分の配属部署で、配属前にマンツーマンで介護基本技術を自分のペースで出来るようになるまで教えてくれるので本当に良かった」「こんなに丁寧に教えてくれる施設は初めて、画期的」との声が聞かれ、入職後の不安が軽減した。
そして、2人の教育担当者で分担することで、2か所のフロアを同時に見る事ができるため、ルールや介護基本技術がフロア独自のやり方になってしまった場合でも、早い段階で気付くことができ、施設全体での修正ができるようになった。
また、アンケートを用いて所属長の認識を確認することで、所属長への説明内容が明確になり、所属長への理解に繋がった。新人・中途入職者の部署配属前に、教育担当者からの指導内容チェック表を用いて、引き継ぎを受け、情報を共有し、3者面談をルール化したことで、所属長としての教育の役割を認識することができた。所属長からは「進む道が明確になった」「3者面談を通じて日常の会話だけでは気付けない事が聞けるのでよかった」との声が聞かれた。新人・中途入職者とのコミュニケーションも増え、定期面談では、取り組み前よりも新人・中途入職者の不安や気持ちの変化を聞くことができるようになった。
【考察】
今回の取り組みで、教育担当者の配置を2名に増員し複数名の新人・中途入職者に対して個別の指導ができるようになったことで、新人・中途入職者の安心につながり、離職率0%(入職後1年間)の維持ができたと考えられる。
教育体制に対する所属長の理解度をアンケートから現状把握し、理解度を上げるために教育運用規定やルール作りに取り組んだことにより、理解度を上げることができ、所属長の役割を認識することができた。
しかし、介護経験の長い入職者にとっては、すべての介護技術について、見られている、否定されるのではないか、という不安に繋がる可能性もある。そのため、経験年数や技術チェック表を用いて、個別のマンツーマン指導期間を考えることも大事である。
新人・中途入職者に限らず、全ての職員が安心して働けるように、所属長はマネジメント力をあげ、全体を見れるようになることが必要だと考える。
【おわりに】
今回の取り組みにより、教育担当者を1名から2名に増員したことで、新人・中途入職者は配属前に、複数名の同時入職時に配属予定部署での指導が受けられるようになり、入職時からの不安軽減に繋がった。
また、所属長が新しい教育体制を理解した事で、プリセプター中心となっていた教育環境から、所属長中心に育成できる教育環境へと変化している。
今後は、新人・中途入職者指導から全体の教育システムを構築し、働きやすい職場にしていきたいと考える。