講演情報

[14-O-P204-02]離職者とストレスとの関連性

*稲葉 志保1、榊原 和真1、新徳 利江子1 (1. 愛知県 介護老人保健施設 メディコ阿久比)
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生産年齢人口が減少していく一方、介護需要が増大していく中において、介護人材の確保が喫緊の課題となっている。介護労働実態調査の結果から、「労働条件・仕事の悩み」では人手不足が最も多く、「離職理由」においては職場の理念や運営方針への不満、人間関係などのストレス要因が多く占めている。今回、年に一度実施している看護・介護を対象としたアンケート結果を基に、ストレスと離職の関連について調査したため報告する。
【はじめに】
 生産年齢人口が減少していく一方、介護需要が増大していく中において、介護人材の確保が喫緊の課題となっている。介護労働実態調査の結果から、「労働条件・仕事の悩み」では人手不足が最も多く、「離職理由」においては職場の理念や運営方針への不満、人間関係などのストレス要因が多く占めている。離職を防ぎ人材の安定を図るため、退職につながる要因を調査し、早期に対応する必要がある。今回、年に一度、腰痛対策研修のために実施している看護・介護を対象としたアンケート結果を基に、ストレスと離職の関係について調査した。
【方法】
 対象は、2020年4月から2023年5月の間に、毎年1回実施しているアンケートに回答のあった職員のうち回答の得られた職員(現職者:106名、離職者39名)。離職者については退職日前に実施した最終のアンケート結果を集計。現職者は2023年5月に実施したアンケート結果を集計した。
 アンケートの調査内容は年齢、性別、職種、嗜好歴、運動習慣、腰痛の有無、自覚的な腰痛の重症度、仕事のストレス、仕事以外のストレス、ストレスの発散状況、ストレスの内容、身長、体重、ユレイヒト・ワークエンゲイジメント尺度(以下:UWES)を聴取した。この中から今回は、ストレスに関する情報を中心に集計した。プライバシー保護のため、アンケートはID管理にて実施し、ID管理表とアンケート集計表は別々に管理しており、それぞれの担当者が閲覧できないようにし、個人情報が特定できないようにしている。
【結果】
仕事のストレスは、「まったくない」「ほとんど感じない」「やや感じる」「かなり感じる」「精神的に参るほど感じる」の5段階で聴取し、離職者はそれぞれ9%、18%、49%、22%、2%であった。現職者はそれぞれ6%、25%、55%、10%、4%となった。仕事以外のストレスも同様の方法で聴取し、離職者は16%、12%、48%、20%、4%となり、現職者は16%、36%、39%、8%、1%であった。
 ストレスの発散については、「できている」「まあまあできている」「どちらともいえない」「あまりできていない」「まったくできていない」の5段階で聴取し、離職者はそれぞれ16%、33%、33%、13%、5%であった。現職者は21%、45%、26%、5%、3%となった。 ストレスの内容については、「仕事内容・労働環境」「職場の人間関係」「金銭面」「将来への不安」「家事」「子育て」「やりたい仕事ができない」「社風や職場になじめない」「家族との関係」「その他」の10項目を複数選択式で聴取。離職者はそれぞれ33%、41%、21%、23%、10%、5%、3%、3%、15%、26%となった。現職者はそれぞれ36%、30%、18%、15%、14%、14%、13%、13%、22%となった。
 勤務形態について、離職者は常勤65%、非常勤35%。現職者は常勤74%、非常勤26%となった。男女比については、離職者は男性16%、女性84%。現職者は男性13%、女性87%であった。
【考察】
 主観的なストレスに関する質問項目で、仕事のストレスに関しては、「かなり感じる」の回答が離職者に多い傾向であった。仕事以外のストレスに関しても「かなり感じる」の回答が離職者に多い傾向がみられ、「ほとんど感じない」の回答は現職者に多い傾向がみられた。離職者の多くが仕事のストレス、仕事以外のストレスの両方を抱えている傾向がみられる。
ストレスの発散に関する項目においても、離職者は「どちらともいえない」「あまりできていない」「まったくできていない」の回答が半数以上を占めており、現職者は「できている」「まあまあできている」の回答が3分の2以上を占める結果となった。現職者はうまくストレスが発散できており、離職者はストレスを抱えたまま仕事に従事している傾向が考えられる。
ストレスの内容については、離職者、現職者ともに同じような結果であったが、離職者の方が「職場の人間関係」の割合がやや高い傾向であった。令和4年度に実施された公益財団法人介護労働安定センターによる介護労働実態調査の結果からも、離職理由として「職場の人間関係に問題があったため」の回答が27.5%と最も多いことから、職場の人間関係で生じるストレスから離職につながった方もいることが考えられる。退職理由については個人の特定をできない形式で調査を実施しているため、詳細はわからない。
 勤務形態について、離職者は非常勤スタッフが多い結果となった。これは、定年後の再雇用後の退職も今回の調査結果に含まれているため、非常勤スタッフの割合が高くなったと思われる。
 以上より、離職に至りやすい要因として、仕事と仕事以外のストレスを抱えやすい傾向の方が多いという点と、ストレスの発散ができていない点が挙げられる。業務上で抱えるストレスに関しては「人間関係」が最も多いことから、「おあしす運動」や、スタッフの意見を聴取しながらチーム内の人間関係を調整する役割がリーダーに求められることが改めて感じられた。
 ストレス解消方法についてはさまざまであり、個々のプライベートに立ち入ることも難しいため、個々のストレス要因との向き合い方について考えてもらう機会を作る必要があると思われる。当施設においてもアンガーマネジメントやコーピングの研修は実施しており、今後もスタッフの意見を聞きながら個々のストレス要因が改善できるよう働きかけていきたい。
【まとめ】
 離職者と現職者のストレスについてアンケート結果を基に考察した。
 離職者は仕事と仕事以外のストレスを抱えている方が多く、ストレスの発散についてもうまく出来ていない方が多かった。研修やスタッフの意見を聞きながら、個々のストレス要因が改善できるよう働きかけていきたい。