講演情報

[14-O-P204-05]「ありがとう」を伝えよう~サンクスカードの取り組みについて~

*椎名 拓馬1、平野 達也1 (1. 茨城県 介護老人保健施設大宮フロイデハイム)
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サンクスカードの取り組みを約3年間行い、その取り組みの中感じたことや職員の意識の変化、職場内の空気の変化がみられたため報告する。回収BOXを用意し月に一度カードを回収し、集計後カードを届け先の職員に配布した。その結果年間500枚を超えるサンクスカードが送られコミュニケーションの向上につながる事ができたと考えられる。
【はじめに】
当法人ではサンクスカードというものに約3年取り組んでいる。これは職員同士で相手に感謝の気持ちを伝えることによって業務へのモチベーション、チームとしてのパフォーマンスやコミュニケーションの向上を目指すというものである。以下にサンクスカードを行ってきた中での成果やこれからの展望について報告する。
【取り組み内容】
1 日頃の業務内で職員に手伝ってもらったり、助けてもらったことなど感謝を伝えたいことがあればサンクスカード(縦横10センチの用紙)に記入しカード回収BOXに投函
2 月に一度接遇委員がBOX内よりカードを回収し、集計後カードを届け先の職員に配布する。カードの受け渡しは同じ部署内にとどまらず同グループ内を対象とし、活動促進の目的として一年に一度サンクスカードを受け取った枚数の多かった10番目までの職員と、サンクスカードを多く送った職員の3番目までを対象とし朝礼にて表彰の上、賞金の贈呈を行っている。
・始めの内は活動の趣旨も浸透しておらず、サンクスカードを送る恥ずかしさもあったためか参加率が良くなかった。そのため活動参加への趣旨を伝えるべく声掛けをしたり、いつでも、どこでも書く事ができるようサンクスカードを渡すなどし、活動の促進に努めた。まずは、ひとり1枚書いてもらう事で次第に取り組みの良さが広まりだした。
・具体的な感謝を送る。「ありがとう」だけのメッセージよりも「○○を手伝って頂きありがとうございます」といった具体的なメッセージにするとより感謝の気持ちが伝わる。
・「気づいたら書く」長時間経ちサンクスカードを書くのではサンクスカードを書く側も受け取る側も記憶が薄れるため、感謝の言葉に対する熱量も下がる前に書く事が大切。日頃の生活の中で感謝を伝えやすい環境を 作り、サンクスカードを書きやすい様に声掛けをしていく。 
・感謝の伝え方についてロールプレイングを行う時間を生活の中に取り入れていく。
○実際私が貰ったサンクスカードの一例としては以下の様な物があった
・入浴の際、利用者様をストレッチャーに移乗する際手伝って頂きありがとうございます。
・体調を崩した私に代わって勤務変更して頂きありがとうございます。
・イベントの計画や準備を手伝って頂きありがとうございます。
○また私はこういった内容でサンクスカードを送った
・悩みに対し相談に乗ってくださりありがとうございます。
・仕事の抜けがあった時に代わりにやっておいてくれてありがとうございます。助かりました。
・勤務中体調を崩してしまった時、心配して自分の分まで仕事をしてもらいありがとうございます。
○実際にサンクスカードを受けとった職員から出た意見として
・何気なく行っていた仕事をきちんと見てくれている人がおり、感謝してもらえることがすごく嬉しかった。
・自分1人で働いているのではなく、チームの中の1人なのだということが実感出来た。
・普段あまり話さない職員からもらったことでその人を知ろうとしたり、良い所を見つけようというきっかけになった
・手書きのメッセージを貰うことも減ったため温かみが感じられて良かった
・より良い仕事をしていこうというやる気につながった
との意見が挙がり
また送る側の職員の意見として
・サンクスカードを送ろうと日々の業務を振り返ることで、たくさんの職員に支えられている事を実感出来た。
・先輩や上司などに気兼ねなく感謝の気持ちを伝えられることができて良かった。
・直接伝えるのが恥ずかしいことも文章でなら感謝を伝えることが出来た。
等の意見が挙がった。
まとめ
令和4年度介護労働実態調査による介護職の離職率は14、4%となっているが令和5年における当法人の離職率は9.1%という結果であった。一つの要因としてサンクスカードの効果があったのではないかと考える。老健においてチームケアや他職種連携は欠かせないものであり、そのためには職員同士の人間関係も良好であることが求められる。また同調査の結果にて介護職の離職理由の一番として人間関係が挙げられている。人間関係を良好に保つ秘訣として感謝を伝えることは有効な手段と言われている。また人は感謝されると、その気持に報いたいと思うようになるため仕事のモチベーションの維持や人材育成においてもサンクスカードの取り組みは非常に意義のあるものと考える。課題として送る側の職員が固定気味になってしまっていること、多く貰えている職員と貰えていない職員とでモチベーションの差に繋がってしまわないかの懸念があることが考えられる。それぞれに対し検討しより良い取り組みとなるよう改善していきたい。