講演情報

[14-O-P205-05]「LIFE」を活用した特定技能実習生と新人職員への教育アセスメントから利用者の介護実践課程を学ぶ

*牧 美樹1、澤田 稚香子1 (1. 北海道 グリーンコート三愛)
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外国人介護職員の受け入れを開始するなか、今年度より在留資格「特定技能」の受け入れを開始した。特定技能職員は在留資格「介護」の職員と比較すると多くの課題が浮き彫りになった。特にルーチンとなる介護業務の習得はしやすい反面、利用者個々の個別性を見出す教育に課題感が生じた。そこで介護計画実践で既に使用していたLIFE項目からアセスメントツールを更にブラッシュアップし、介護実践課程へ繋げた事例について報告する。
【はじめに】
当法人では2020年より外国人介護職員の受入れを開始し、初年度は「介護」10名、翌年度は5名の受
入れを継続的に行ってきた。その中で、今年度より在留資格「特定技能」の受入れを始め、現在5名の特
定技能職員が当事業で働いている。
しかし、特定技能職員は在留資格「介護」の職員と比較し、日本語能力は基より介護スキルに関しても学
習が浅いことから、介護現場での実践には多くの教育が必要である。特に、ルーチンとなる介護業務の習
得は進みやすい反面、利用者個々に準じた個別的介護の実践の習得が難航していた。
そこで、特定技能職員に向けた教育ツールを検討するなか、当事業所で介護計画実践で既に使用していた
LIFE項目を活用したアセスメントツールを、より咀嚼した内容にブラッシュアップを行い、活用した事
例について報告する。

【目的】
特定技能職員及び新入職員へ利用者のアセスメントに対しLIFE入力項目を用いて実施することで、
1.利用者の全体像の深度を深める
2.標準様式を用いることで利用者全体像の把握を統一出来るようにする
3.利用者への介護計画実践課程における介護計画の立案と実行が出来るようにする
3つの効果を得ることを目的とした。

【方法】
1.対象となる利用者と特定技能職員のマッチングを行う
2.LIFE自立支援促進加算/科学的介護の項目から、より利用者の全体像が把握できる任意の項目を抜
粋し独自様式を作成し説明を行う
3.特定技能職員へアンケートを実施し意識とスキルがどう変化したかを評価する

【対象者】
特定技能職員5名、日本人新入職員1名

【具体的な内容】
2024年より、特定技能職員5名を新規雇用し介護教育を行うにあたり、従前より使用しているクリニカ
ルラダー制度に基づく介護評価表とは別に、より簡易的な業務指導表(以下特定技指導表)を作成し教育
を行ってきた。
当事業所には既に在留資格「介護」で勤務する職員が配置されていたため、業務指導自体に言語の壁はさ
ほど支障なく進めていく事が出来ていた。
しかし、一方で利用者個々のアセスメントについては、標準様式であるR4を用いて実践を行うも、表面
的なアセスメントしか取ることしか出来ず、利用者の状態変化や細かな評価幅を具象化することが出来
ずにいた。さらに、その事を指導者自身も言語化して伝えるも齟齬が多く、双方のズレを感じていた。
そこで当事業所で既に介護計画に取り込み実践を行っていたLIFEのうち科学的介護推進体制加算と自
立支援促進加算に該当する一部項目をアセスメントに活用出来ないか検討を行った。

【方法】
1.介護計画に用いていた項目のうち、特定技能職員が理解しやすいものを更に抜粋しアセスメント独自
2.特定技能職員に担当利用者1~2名をマッチング
3.独自様式を使用しない状態で担当利用者のアセスメントを口頭で確認した
4.担当利用者のアセスメント理解度についてアンケートを実施
5.指導者2名に対し、利用者の個別性をどのように説明しているかアンケートを実施

【結果】
1回目のアンケート結果として、介護業務自体は覚えることが明確であり達成度も可視化しやすいという
意見である反面、利用者の個別性については、その日の体調やその時々で変化するニーズに十分な理解と
対応が出来ないことが挙げられた。
次に独自様式を用いて、アセスメントの方法や利用者個別の抑えるべきポイントなどを説明し、特定技能
職員自身でアセスメントを作成してもらった。独自様式を使用開始当初は、アセスメントの深堀りが難し
く、一辺倒の回答も多く見られたが、指導者が2か国語を使いながら説明を繰り返したことで、アセス
メントの意味を理解し始め、徐々に形になっていくのを感じた。
その後、2回目のアンケートを実施し、利用者の個別性への理解度を確認したところ、利用者自体を見る
視点に変化が感じられた。
さらに1ヶ月後、再アセスメントを実施したところ今まで見えていなかった利用者の個別性やニーズに
対する根拠が理解できる職員も出始めた。そのため、利用者のニーズにどのような根拠で接すれば良いの
か、特定技能職員自身が考えるようになり、明らかにケアの質が向上したことを指導者間で感じられてい
た。現在も独自様式を用いてアセスメントを行っているが、今後の展開として、特定技能職員が担当利用
者の介護計画立案算定から再評価まで出来るようになることを一つの目標に掲げている。

【考察】
多様化する介護現場において、ケア水準を統一標準化するのは年々難しくなってきていると感じている。
そのために、私たち介護職員は何かしらの指標を用いてケアを言語化し教育していくことが求められて
いるなかで、今回特定技能職員という「介護スキル未経験」+「日本語能力N4」という、従来の教育方
法では対応することが出来ない職員を受入れたことは、教育のバージョンアップを否応なしに迫られ、結
果このような新たな教育体制を敷くことが出来た。

【今後の課題】
LIFE項目を抜粋した独自様式は利用者の個別性をより可視化することが可能になったが、ケア実践へと
繋げられる教育が必要だと感じている。今回作成したアセスメント独自様式は今後の改良を重ねていく
と同時に、今度は新たなフィードバック評価表も介護現場に落とし込みながら、ケアサービス向上に努め
ていきたい。