講演情報
[14-O-P205-06]EPA・特定技能スタッフの業務状況の自己評価
*樫本 康生1、藤井 実1 (1. 大阪府 介護老人保健施設はまさき)
当グループは2法人、7施設、616床を有し、従業員は425名で、そのうちEPA・特定技能スタッフは98名である。今回、介護職と看護職へのアンケート調査で、ご自身の業務状況の自己評価を求めたところ、勤務年数が長い程、自己評価が高くなり、かつ、EPA・特定技能スタッフの方が、EPA・特定技能以外のスタッフよりも、その傾向が顕著であった。長く勤務できる職場環境が重要であると思われた。
【目的】
医療法人健正会と社会福祉法人健正福祉会に介護職・看護職として勤務しているEPA・特定技能スタッフ(以下「EPA」)の業務状況の自己評価を、EPA・特定技能スタッフ以外(以下「EPA以外」)の介護職・看護職と比較検討した結果を報告する。
【対象と方法】
医療法人健正会は浜崎医院、介護老人保健施設はまさき1、同はまさき2、同はまさき3、同はまさき4、社会福祉法人健正福祉会は特別養護老人ホーム カサブランカ、同別館の合計7施設、616床、従業員425名(2024年1月現在)で構成されている。
2008年からEPA(経済連携協定)により介護福祉士候補生を受け入れ、2020年からは技能実習生・特定技能も受け入れている。2024年1月の時点でEPA看護師(6名)・介護福祉士(51名)・介護福祉士候補生(33名)、技能実習生(4名)・特定技能(4名)、合計98名であり、介護職での「EPA」の割合は約33%であった。
今回、介護職・看護職全員345名を対象に、2024年4月1日から2週間、アンケート調査を実施し、ご自身の業務状況の自己評価について回答を求め、勤務年数による違いを「EPA」と「EPA以外」とで比較した。アンケートは無記名式で、設問は次の通りである。
属性 「EPA」か「EPA以外」か、所属施設、介護職か看護職か、勤務年数
質問1スタッフや利用者様へのあいさつ
質問2スタッフ間の報連相(報告・連絡・相談)
質問3スタッフが記入したカルテをあなたが閲覧した時、専門用語等の理解
質問4あなた自身が行う直接的な身体介護
質問5利用者様の急変時(転倒等)に、あなた自身が適切に行動出来ているか
質問6利用者様、ご家族様からのあなた自身の介護業務に対しての反応
質問7スタッフ間の職場の雰囲気(休憩時間等)
質問8所属している施設の EPA・特定技能スタッフの割合
質問9「EPA以外」に対してのみ、EPA(経済連携協定)の認知度
質問の回答肢は、質問1~質問7に関しては「出来ている」「おおむね出来ている」「あまり出来ていない」「出来ていない」を基本型とする4択(表現は質問に対応して適切に調節)、質問8に関しては「多い」「少ない」「ちょうどよい」の3択、質問9に関しては「以前から知っていた」「当施設で知った」「知らなかった」の3択とした。
なお、「以上伺ったことの他に不安なことや要望等があれば記入」の自由記載欄を設けた。
【結果と考察】
介護職と看護職の計263名から回答を得た(回答率約76%)。その内訳は、「EPA」介護職92名中の57名、「EPA」看護職6名中の3名、「EPA以外」介護職184名中の145名、「EPA以外」看護職63名中の38名であった。なお、「介護職か看護職か」未記入のものが「EPA」に7名、「EPA以外」に13名存在した。勤務年数の未記入や質問によって記入がない場合もあり「不明」の回答分類を設けた。
以降に示す結果集計の基本方針は次の通りである。
(1)「EPA」と「EPA以外」に分けた。
(2)看護職が少人数であり、分離しても特徴が見えず、介護職と看護職を一括した。
(3)勤務年数を0-4年、5-9年、10年以上、不明に分けて、自己評価の傾向を観察した。
抄録では主要な介護業務で、かつ、特徴的な結果を示した3質問について記述する。なお、発表時には、そのほかの質問結果も報告・考察する。
質問3「スタッフが記入したカルテをあなたが閲覧した時、専門用語等の理解」
「理解できる」又は「おおむね理解できる」と回答した者は、「EPA以外」では、0-4年で約69%、5-9年で約79%、10年以上で約97%であった。それに対して、「EPA」では、0-4年で約88%、5-9年で100%、10年以上で100%であった。即ち、0-4年のところに「あまり理解できない」が約7%、「不明」が約5%存在したのみであり、「EPA」の自己評価が極めて高かった。
質問4「あなた自身が行う直接的な身体介護」
「出来ている」又は「おおむね出来ている」と回答した者は、「EPA以外」では、0-4年で約79%、5-9年で約79%、10年以上で約96%であった。それに対して、「EPA」では、0-4年で約98%、5-9年で100%、10年以上で100%であった。即ち、0-4年のところに「不明」が1名、「あまり出来ていない」のところに勤務年数「不明」が1名存在したのみであり、「EPA」のほぼ全員が「出来ている」・「おおむね出来ている」と回答していた。
質問5「利用者様の急変時(転倒等)に、あなた自身が適切に行動出来ているか」
「出来ている」又は「おおむね出来ている」と回答した者は、「EPA以外」では、0-4年で約71%、5-9年で約76%、10年以上で約96%であった。それに対して、「EPA」では、0-4年で約85%、5-9年で100%、10年以上で100%であった。即ち、「あまり出来ていない」のところに0-4年が約15%と勤務年数「不明」が1名存在したのみであり、「EPA」の自己評価は高いが、勤務年数が浅い場合には、「EPA」でも「EPA以外」でも、困難を感じる者がある程度は存在していた。
【まとめ】
全体的に「EPA」の方が「出来ている」等の高評価の割合が多かったため、当グループのEPA・特定技能スタッフは自信をもって業務にあたっていると考えられた。当グループのEPA 受け入れの時期が早かったことの反映でもあるが、「EPA」・「EPA以外」ともに勤務年数が長くなると業務に関して「出来ている」の回答が増加するため、長く勤務できる職場環境の利点が大きいと思われた。この職場環境を維持向上できるように、改善点等があれば対策をしていくことが重要であろうと考える。
医療法人健正会と社会福祉法人健正福祉会に介護職・看護職として勤務しているEPA・特定技能スタッフ(以下「EPA」)の業務状況の自己評価を、EPA・特定技能スタッフ以外(以下「EPA以外」)の介護職・看護職と比較検討した結果を報告する。
【対象と方法】
医療法人健正会は浜崎医院、介護老人保健施設はまさき1、同はまさき2、同はまさき3、同はまさき4、社会福祉法人健正福祉会は特別養護老人ホーム カサブランカ、同別館の合計7施設、616床、従業員425名(2024年1月現在)で構成されている。
2008年からEPA(経済連携協定)により介護福祉士候補生を受け入れ、2020年からは技能実習生・特定技能も受け入れている。2024年1月の時点でEPA看護師(6名)・介護福祉士(51名)・介護福祉士候補生(33名)、技能実習生(4名)・特定技能(4名)、合計98名であり、介護職での「EPA」の割合は約33%であった。
今回、介護職・看護職全員345名を対象に、2024年4月1日から2週間、アンケート調査を実施し、ご自身の業務状況の自己評価について回答を求め、勤務年数による違いを「EPA」と「EPA以外」とで比較した。アンケートは無記名式で、設問は次の通りである。
属性 「EPA」か「EPA以外」か、所属施設、介護職か看護職か、勤務年数
質問1スタッフや利用者様へのあいさつ
質問2スタッフ間の報連相(報告・連絡・相談)
質問3スタッフが記入したカルテをあなたが閲覧した時、専門用語等の理解
質問4あなた自身が行う直接的な身体介護
質問5利用者様の急変時(転倒等)に、あなた自身が適切に行動出来ているか
質問6利用者様、ご家族様からのあなた自身の介護業務に対しての反応
質問7スタッフ間の職場の雰囲気(休憩時間等)
質問8所属している施設の EPA・特定技能スタッフの割合
質問9「EPA以外」に対してのみ、EPA(経済連携協定)の認知度
質問の回答肢は、質問1~質問7に関しては「出来ている」「おおむね出来ている」「あまり出来ていない」「出来ていない」を基本型とする4択(表現は質問に対応して適切に調節)、質問8に関しては「多い」「少ない」「ちょうどよい」の3択、質問9に関しては「以前から知っていた」「当施設で知った」「知らなかった」の3択とした。
なお、「以上伺ったことの他に不安なことや要望等があれば記入」の自由記載欄を設けた。
【結果と考察】
介護職と看護職の計263名から回答を得た(回答率約76%)。その内訳は、「EPA」介護職92名中の57名、「EPA」看護職6名中の3名、「EPA以外」介護職184名中の145名、「EPA以外」看護職63名中の38名であった。なお、「介護職か看護職か」未記入のものが「EPA」に7名、「EPA以外」に13名存在した。勤務年数の未記入や質問によって記入がない場合もあり「不明」の回答分類を設けた。
以降に示す結果集計の基本方針は次の通りである。
(1)「EPA」と「EPA以外」に分けた。
(2)看護職が少人数であり、分離しても特徴が見えず、介護職と看護職を一括した。
(3)勤務年数を0-4年、5-9年、10年以上、不明に分けて、自己評価の傾向を観察した。
抄録では主要な介護業務で、かつ、特徴的な結果を示した3質問について記述する。なお、発表時には、そのほかの質問結果も報告・考察する。
質問3「スタッフが記入したカルテをあなたが閲覧した時、専門用語等の理解」
「理解できる」又は「おおむね理解できる」と回答した者は、「EPA以外」では、0-4年で約69%、5-9年で約79%、10年以上で約97%であった。それに対して、「EPA」では、0-4年で約88%、5-9年で100%、10年以上で100%であった。即ち、0-4年のところに「あまり理解できない」が約7%、「不明」が約5%存在したのみであり、「EPA」の自己評価が極めて高かった。
質問4「あなた自身が行う直接的な身体介護」
「出来ている」又は「おおむね出来ている」と回答した者は、「EPA以外」では、0-4年で約79%、5-9年で約79%、10年以上で約96%であった。それに対して、「EPA」では、0-4年で約98%、5-9年で100%、10年以上で100%であった。即ち、0-4年のところに「不明」が1名、「あまり出来ていない」のところに勤務年数「不明」が1名存在したのみであり、「EPA」のほぼ全員が「出来ている」・「おおむね出来ている」と回答していた。
質問5「利用者様の急変時(転倒等)に、あなた自身が適切に行動出来ているか」
「出来ている」又は「おおむね出来ている」と回答した者は、「EPA以外」では、0-4年で約71%、5-9年で約76%、10年以上で約96%であった。それに対して、「EPA」では、0-4年で約85%、5-9年で100%、10年以上で100%であった。即ち、「あまり出来ていない」のところに0-4年が約15%と勤務年数「不明」が1名存在したのみであり、「EPA」の自己評価は高いが、勤務年数が浅い場合には、「EPA」でも「EPA以外」でも、困難を感じる者がある程度は存在していた。
【まとめ】
全体的に「EPA」の方が「出来ている」等の高評価の割合が多かったため、当グループのEPA・特定技能スタッフは自信をもって業務にあたっていると考えられた。当グループのEPA 受け入れの時期が早かったことの反映でもあるが、「EPA」・「EPA以外」ともに勤務年数が長くなると業務に関して「出来ている」の回答が増加するため、長く勤務できる職場環境の利点が大きいと思われた。この職場環境を維持向上できるように、改善点等があれば対策をしていくことが重要であろうと考える。