講演情報

[14-O-P207-04]外国人労働者が働きやすい環境を作る為にEPA職員の日本語能力向上向上を目指して

*海老原 拓弥1 (1. 長野県 介護老人保健施設グレイスフル下諏訪)
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4ヶ月間の期間中、1ヶ月ごとに取り組む内容を決め、不得意とする記録情報の入力をできるようにする。言葉のやり取りに関しては、日本人職員に話し方等のポイントを伝え実践していく。4ヶ月後に6つの記録の項目を入力することが可能になった。分かりやすい伝え方を知ることができた。記録の入力に関する教育面で優れた結果が出たが特記入力には時間を要する。成果から得たことを実践するには、継続的なアプローチが必要である。
【目的】昨年12月にEPA職員(フィリピン国籍)が入職した。それ以前にもEPA職員の受け入れを行っていた中での反省点を踏まえ、入職してから日々の業務を教えていく中で、本人は何が分かって、何が分からないのか。日本人職員としても本人に伝えたことをどこまで理解しているか、どのようにして伝えると分かりやすいのか。また、EPA職員が介護業務をどこまで行えているのか分からない部分もあった為、記録の入力を通して日本語能力の習得を図ることを目的として、少しでも働きやすい職場環境を作るために良いのではないかと考え取り組むこととした。【対象・方法】2023年度12月25日にEPA職員:フィリピン国籍が1名入職となる。同事業所内では、2021年度にフィリピン国籍の入職者が2名あり、現在も就労している。今回の取り組みは初めて受け入れを行うフロアでの取り組みの報告を行う。4ヶ月間の期間を設定し、月毎に記録に関する業務の習得を目標に取り組む内容を決めて進めていく。1ヶ月目、日本人職員がEPA職員に聞き取りを行いながら、記録(以下、記録=ケアカルテ)に入力を行う。記録は「排泄、食事、水分補給、おむつ、バイタル、巡回」の項目に絞る。2ヶ月目、日本人職員が見ている所で一緒に記録の入力を行う。3ヶ月目、EPA職員に独りで記録の入力をしてもらい、ケアカルテに送信する前に日本人職員にて入力の間違えがないかなどの確認を行う。4ヶ月目、EPA職員が入力し、ケアカルテに送信した後に日本人職員がパソコンで最終の確認を行う。上記の取り組み以外に、取り組みを進めていく中で、EPA職員が何を難しいと感じているか、仕事の様子を見ていて、日本人職員が感じることなどの情報共有を行うために一冊のノートを活用して日本人職員内での情報共有を行う。日本語教師と連携し、毎月実施している授業の状況、業務の進捗状況、生活面等の情報共有を行う。先輩EPA職員より、日本人職員向けに外国職員との関り方に関する勉強会を開催する。【結果】4ヶ月後に、EPA職員に1ヶ月目の時とできるようになったことのアンケートを実施した。1ヶ月目の時は、記録の入れ方を全く理解することが出来ず、文字もほとんど読めていない為、入力することができていなかった。2ヶ月目からは徐々に記録の入力の仕方が分かるようになり、「排泄、食事、水分補給、おむつ、バイタル、巡回」の6つの項目に関しての入力を可能にすることが出来た。日本人職員側から見ていても、1ヶ月目より入力漏れが少なくなり、日本人職員に相談しなくても本人自身で入力が出来るようになったと感じた。また、EPA職員が記録に関して、何が難しいと感じているかアンケートを実施したところ、生活特記や排泄特記といった「特記(文章)入力」が難しい。記録と関連した「業務日誌」や「伝言板」(PC内の情報共有ツール)を読み、理解するのが難しいとの事だった。情報共有用のノートを使用したことで、業務の進捗状況やそれぞれが伝えたことや気になった点等を共有することができ、日本人職員による伝え方の違いを解消することにも繋がった。日本語教師とも情報共有を行い、日本語の習得面に限らず、本人の精神面でのサポートや生活面の様子も把握することができた。勉強会を実施したことにより、日本人職員側からの伝え方の注意点を見直す機会、EPA職員がどういった気持ち、受け取り方をしているのか知る機会になった。【考察】今回の取り組みを通してやはり言語の壁は大きいものだというのを一番に感じた。「話す、聞く、読む、書く」とある中で、話す、聞くは習得を進めることができたが、聞く場面ではまず日本人職員側の伝え方が非常に重要であることを理解した。伝え方を理解していても状況によっては実践することができない場面も見られた。記録はスマホ端末やパソコンでの入力であり、言葉を検索しながら文章を組み立てていくことができるが、実際に書く機会は限りなく少ない。読むことは関しては可能な限りルビを振ることにより対応している。普段目にする介護用語であれば、ある程度を理解することができるが、そうでない用語に関しては理解に悩む場面が多く、文章内容を誤って理解する恐れもある。状況に応じて電子辞書等の翻訳できる機器の活用も検討の余地がある。電話でのやり取りは特に難しいと感じる為、伝える側の配慮が必要である。EPA職員はもちろん日本人職員(教える側にも)も不安を感じていることが多い中で、取り組みを段階的に進めることにより、理解しながら習得していくことができた。どのように伝えると分かりやすいのか、職員間での情報共有やEPA職員へのアプローチが必要だと感じた。今後もEPA職員も日本人職員も双方にとって働きやすい環境を作るため、互いに意見を出し合いながらより良い環境を作って行きたい。同法人内の他事業所においても多くのEPA職員を受け入れ、様々な取り組みを行っている為、共有しながら自事業所でも展開をしていきたい。※日本人職員=EPA職員と同フロアで勤務する介護職員を指す。