講演情報
[14-O-P207-06]特定技能外国人教育の取り組み
*森 朋美1 (1. 京都府 はーとふる東山)
当施設では2023年10月よりインドネシア人スタッフの受け入れを開始した。まずは日本語検定N3の取得と正しい介護技術取得を目的として教育を行い、その途中経過を報告する。目標シート作成、介護技術の研修実施、日本語学習サポートを行った。その結果、日本語の習得は難しく、合同研修では自身の課題発見、自信にも繋がった。今後も継続的に日本語を学ぶ必要があり、サポートすることが彼らとの信頼関係構築にも繋がった。
1.はじめに
昨今の介護人材不足を受けて、当法人でも2008年より外国人労働者を受け入れている。フィリピン、スリランカ、中国、ベトナムの方々を中心に受け入れていたが2023年10月よりインドネシア人スタッフの受け入れも開始となった。
当法人の一施設である「はーとふる東山」では、外国人スタッフはフィリピン人スタッフのみであったが、同じく10月よりインドネシア人スタッフの受け入れとなった。フィリピン人スタッフとは簡単な英語でのコミュニケーションを図ることが出来ていたが、インドネシア人スタッフはインドネシア語しか話すことができない。そのため、スタッフ間でどのように教育・コミュニケーションをとったら良いのかと不安の声が上がっていた。
情報収集として2023年開催の全国介護老人保健施設大会に参加し、そこで見つけた共通項として、どの施設もなんらかの日本語学習のサポートを必要とし、対策を行っていた。そのため、当施設でも、まずは日本語検定N3を取得することを目標とし、日本語学習サポートを行う。そして、正しい介護技術を習得してもらうことも目的に教育に取り組むことにした。その途中経過を報告する。
2.目的
インドネシア人スタッフに日本語検定N3の取得のため、日本語学習のサポートを行う。且つ、正しい介護技術の習得を目的に教育を行う。
3.方法
1)目標シートの活用
まず達成すべき長期目標として「日本語検定N3の取得及び基本的な介護技術の習得」を挙げた。その目標を達成するため、病棟目標・介護目標・本人目標と3種類に目標を分け、目標をインドネシア人スタッフに考えてもらい、日本語でシートに記載してもらうことにした。そして、1ヶ月後、本人評価を行い、最後にスタッフが評価を行った。
目標記入の際、誤字などがあれば日本人スタッフが訂正した。また、スタッフ評価の際には、彼らのモチベーションが維持出来るようポジティブで簡易な日本語で記載するようにした。
2)日本語教育サポートの為に、介護用のテキストを用いて日本語学習の実施
登録支援機関と情報共有を行い、彼らのテスト成績など今現在の立ち位置を把握し、学習課題について聞いた。そして、登録支援機関より提供されたテキストを用い、1セクションを1月で終わらせるように計画を立て取り組んだ。
テキストに記載されている介護用の言葉の意味・読み方を一緒に学習する。その後、インドネシア人スタッフ各自で練習問題に取り組んでもらい、最終、確認テストを行い、理解度を図るようにした。
実際の申し送りの聞き取りも出来るように、擬似入所者を想定し、学習した単語を使用した簡単な申し送りを聞き取るという問題もテストに組み込んだ。なお、純粋な耳だけの聞き取りとするため、日本語の問題用紙は伏せてもらい、聞き取り後に問題を見ても良いと指示した。テストはおおよそ9割正答して、合格とした。
3)介護技術の習得のため、研修の立案・実施
3棟合同でケアリーダーを中心に、施設内で一番重要とされる移乗技術を正しく習得する研修を入職後3ヶ月に実施した。ケアリーダーに、今の技術が合格レベルに達しているかをそれぞれ確認してもらい、各自の課題も伝えるようにした。
4.結果
長期目標であるN3の取得に関しては、まだ演題締め切りの段階で合否が発表されていないため、到達できたかは現時点で不明である。ただ、目標シートを日本語で書くようにしたことで、文章を書く練習に繋がり、少しずつ内容のある目標シートの作成が出来るようになってきている。
介護技術の習得に関しては、研修時にリーダーが技術達成度の確認を行い、合格レベルに到達していた。また、個人の癖や改善点も伝えた。また、3棟合同でインドネシア人スタッフ同士が集まったので、日々お互いが思っていることを話し、リラックスした時間も提供することが出来た。
日本語の学習時には、「排泄」「排便」「下剤」等日常業務でも医療用の言葉は飛び交っているが、本人たちがきちんと理解し、使いこなせるかどうかは別であることが共に学習してわかった。また、耳だけの聞き取りはかなり難しいようで、合格するまで2回再テストを必要とした。
彼らは登録支援機関からも宿題が出されており、追加での日本語学習を行っているため、彼らにとって負担だと考えていた。しかし、彼らは不満を言うわけではなく、「いつも日本語を教えてくれてありがとう。」といつも感謝の言葉を述べており、仕事も楽しいと彼らはやりがいを感じている。
5.考察
まず日本語はかなり高難易度であり、アメリカ合衆国国務省の言語習得ランクでは日本語がカテゴリー5に位置し、英語基準の評価ではあるが外国人にとって日本語の習得はかなり難しいといえ、イン ドネシア人スタッフにとっても同様と考える。
そのため、業務をこなしながらも、日本語を意識的に学ぶ必要がある。更に、テストを定期的に行ない客観的な評価も継続し、単語・文法・聴解などの日本語能力を上昇させていく必要がある。また、その学習サポートの時間こそが、彼らとの信頼関係の構築にも繋がり、お互いに良い影響をもたらした。
技術練習も同様に、自分のやり方をなんとなく定着させるのではなく、第3者の目から正しく評価してもらうことで、自分自身の技術に自信を持つことが出来、次の課題を見つけ出し、更なるステップアップに繋がった。また合同研修を行うことは、仲間同士の交流にも繋がり、リレーションシップの形成にも有効であった。
6.最後に
インドネシア人スタッフは素直で真面目に仕事に取り組んでおり、介護技術も吸収し、出来る範囲で、他スタッフのサポートができるくらいに成長してきている。そのため、今や居なくてはならない存在になっている。
まずは、N3を取得し、最終的にN2レベルまでを目指し、介護福祉士の資格がとれるよう、施設全体で継続的にサポートをしていこうと考えている。
昨今の介護人材不足を受けて、当法人でも2008年より外国人労働者を受け入れている。フィリピン、スリランカ、中国、ベトナムの方々を中心に受け入れていたが2023年10月よりインドネシア人スタッフの受け入れも開始となった。
当法人の一施設である「はーとふる東山」では、外国人スタッフはフィリピン人スタッフのみであったが、同じく10月よりインドネシア人スタッフの受け入れとなった。フィリピン人スタッフとは簡単な英語でのコミュニケーションを図ることが出来ていたが、インドネシア人スタッフはインドネシア語しか話すことができない。そのため、スタッフ間でどのように教育・コミュニケーションをとったら良いのかと不安の声が上がっていた。
情報収集として2023年開催の全国介護老人保健施設大会に参加し、そこで見つけた共通項として、どの施設もなんらかの日本語学習のサポートを必要とし、対策を行っていた。そのため、当施設でも、まずは日本語検定N3を取得することを目標とし、日本語学習サポートを行う。そして、正しい介護技術を習得してもらうことも目的に教育に取り組むことにした。その途中経過を報告する。
2.目的
インドネシア人スタッフに日本語検定N3の取得のため、日本語学習のサポートを行う。且つ、正しい介護技術の習得を目的に教育を行う。
3.方法
1)目標シートの活用
まず達成すべき長期目標として「日本語検定N3の取得及び基本的な介護技術の習得」を挙げた。その目標を達成するため、病棟目標・介護目標・本人目標と3種類に目標を分け、目標をインドネシア人スタッフに考えてもらい、日本語でシートに記載してもらうことにした。そして、1ヶ月後、本人評価を行い、最後にスタッフが評価を行った。
目標記入の際、誤字などがあれば日本人スタッフが訂正した。また、スタッフ評価の際には、彼らのモチベーションが維持出来るようポジティブで簡易な日本語で記載するようにした。
2)日本語教育サポートの為に、介護用のテキストを用いて日本語学習の実施
登録支援機関と情報共有を行い、彼らのテスト成績など今現在の立ち位置を把握し、学習課題について聞いた。そして、登録支援機関より提供されたテキストを用い、1セクションを1月で終わらせるように計画を立て取り組んだ。
テキストに記載されている介護用の言葉の意味・読み方を一緒に学習する。その後、インドネシア人スタッフ各自で練習問題に取り組んでもらい、最終、確認テストを行い、理解度を図るようにした。
実際の申し送りの聞き取りも出来るように、擬似入所者を想定し、学習した単語を使用した簡単な申し送りを聞き取るという問題もテストに組み込んだ。なお、純粋な耳だけの聞き取りとするため、日本語の問題用紙は伏せてもらい、聞き取り後に問題を見ても良いと指示した。テストはおおよそ9割正答して、合格とした。
3)介護技術の習得のため、研修の立案・実施
3棟合同でケアリーダーを中心に、施設内で一番重要とされる移乗技術を正しく習得する研修を入職後3ヶ月に実施した。ケアリーダーに、今の技術が合格レベルに達しているかをそれぞれ確認してもらい、各自の課題も伝えるようにした。
4.結果
長期目標であるN3の取得に関しては、まだ演題締め切りの段階で合否が発表されていないため、到達できたかは現時点で不明である。ただ、目標シートを日本語で書くようにしたことで、文章を書く練習に繋がり、少しずつ内容のある目標シートの作成が出来るようになってきている。
介護技術の習得に関しては、研修時にリーダーが技術達成度の確認を行い、合格レベルに到達していた。また、個人の癖や改善点も伝えた。また、3棟合同でインドネシア人スタッフ同士が集まったので、日々お互いが思っていることを話し、リラックスした時間も提供することが出来た。
日本語の学習時には、「排泄」「排便」「下剤」等日常業務でも医療用の言葉は飛び交っているが、本人たちがきちんと理解し、使いこなせるかどうかは別であることが共に学習してわかった。また、耳だけの聞き取りはかなり難しいようで、合格するまで2回再テストを必要とした。
彼らは登録支援機関からも宿題が出されており、追加での日本語学習を行っているため、彼らにとって負担だと考えていた。しかし、彼らは不満を言うわけではなく、「いつも日本語を教えてくれてありがとう。」といつも感謝の言葉を述べており、仕事も楽しいと彼らはやりがいを感じている。
5.考察
まず日本語はかなり高難易度であり、アメリカ合衆国国務省の言語習得ランクでは日本語がカテゴリー5に位置し、英語基準の評価ではあるが外国人にとって日本語の習得はかなり難しいといえ、イン ドネシア人スタッフにとっても同様と考える。
そのため、業務をこなしながらも、日本語を意識的に学ぶ必要がある。更に、テストを定期的に行ない客観的な評価も継続し、単語・文法・聴解などの日本語能力を上昇させていく必要がある。また、その学習サポートの時間こそが、彼らとの信頼関係の構築にも繋がり、お互いに良い影響をもたらした。
技術練習も同様に、自分のやり方をなんとなく定着させるのではなく、第3者の目から正しく評価してもらうことで、自分自身の技術に自信を持つことが出来、次の課題を見つけ出し、更なるステップアップに繋がった。また合同研修を行うことは、仲間同士の交流にも繋がり、リレーションシップの形成にも有効であった。
6.最後に
インドネシア人スタッフは素直で真面目に仕事に取り組んでおり、介護技術も吸収し、出来る範囲で、他スタッフのサポートができるくらいに成長してきている。そのため、今や居なくてはならない存在になっている。
まずは、N3を取得し、最終的にN2レベルまでを目指し、介護福祉士の資格がとれるよう、施設全体で継続的にサポートをしていこうと考えている。