講演情報

[14-O-P208-02]技能実習生として日本で働いて日本語難しい

*厳 夢蓮1、王 晶英1、張 貴美1、中山 広大1、樋口 彦衛1 (1. 滋賀県 介護老人保健施設長浜メディケアセンター)
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現在、滋賀県では多くの外国人が技能実習、特定技能として日本の介護を学んでいます。私も日本に来て2年が経過し、少し日本の生活や介護の仕事に慣れてきましたが、言葉や文化の違いで悩む事が多くありました。そこで、今回、県内の技能実習、特定技能で働く外国人や事業所が、どのような悩みや課題を感じているのかを知り、外国人へのアドバイスや事業所側への指導等に役立てたいと思いアンケート調査を実施しました。
【はじめに】
現在、日本では技能実習や特定技能など様々な制度を利用し55.665人の外国人が介護の分野で働き、その数は年々増えています。滋賀県のでも1.669人の介護事業所の内、解答が得られた491事業所の内17.5%が外国人介護職員を雇用しており343名の外国人が働いています。私は中国の湖南省から令和4年5月に来日し、技能実習生として2年が経過しました。少し日本の生活に慣れてきましたが、中国では自転車の乗る習慣がない、バスでは先にお金を払う、ゴミを分別する習慣がないなど、文化や習慣の違いに悩むことが多くありました。多くの外国人が活躍する一方で、国の違い、言葉や文化の違いで外国人介護職員も事業所側も多くの悩みがあります。今回、外国人介護職員の悩みや、事業所の悩みを知り、今後日本に来る外国人へのアドバイスや事業所の指導に役立てたいと思い、県内の外国人介護職員及び事業所に対してアンケート調査を実施したので、その結果について報告します。
【アンケート調査】
外国人介護職員に対しては、出身国、日本の対在期間、仕事の楽しさや悩み、生活習慣・食文化での困り事等の内容について聞き取りを行いました。次に、事業所に対しては、外国人介護職員の受け入れ人数、外国人を受け入れて良かったこと、介護指導や日本語指導で困ったこと等、複数の項目で聞き取りをしました。アンケートでは外国人介護職員計46名と、11の事業所から回答をもらうことができました。(記載無しの回答があり、合計数については違いがあります)
【結果】
まず、外国人介護職員の結果について報告します。「出身国」については中国が21人と最も多く、次に多いのがタイで6名、ネパール、フィリピン、インドネシアが各5名、インドが3名の結果でした。アンケート調査への協力は得られませんでしたが、ミャンマーやベトナム等の実習生も滋賀県で働いています。「実習制度」については技能実習1号が11名、技能実習2号が12名、特定技能が13名でした。技能実習が3年経過した後に特定技能として日本で介護を続けている外国人が多がったです。「日本に入国した時の日本語レベルについては、N5が2名、N4が21名、N3が17名、N2が1名、無しが2名の結果でした。特徴の一つとして、中国は入国時のN3以上の取得率が66%に対して、その他の国は20%という結果で、これについては漢字から言葉の意味が理解できるためです。「次の日本語検定合格までにかかった期間」については、平均21.0ヶ月(1年9カ月)で、この期間について出身国による大きな違いはありませんでした。「今後も長く日本に残りたいですか」の質問に対しては、75%の実習生が日本に残り介護の仕事を続けていきたいとの思いを持っていました。「介護をしていて楽しいと思うこと」については、「利用者と会話し気持ちが通じた時、ありがとうと言われた時、利用者の笑顔が見れた時、介護技術が身についた時」など、日本の介護文化や魅力を感じる外国人が多くいました。「困ったこと」については、出身国、制度、入国後の期間に関係なく、最も多かったのが「日本語や、コミュニケーションの難しさ」で、ほとんどの外国人が悩みをもっていました。次に、事業所の側のアンケートについて報告します。「受け入れ人数について」は2人が3事業所、3人が1事業所、4人が1事業所、5人が4事業所、5人以上が2事業所の結果で、最も多い受け入れ人数は14名でした。14名の実習生を受けれた事業所は複数の国の実習生を受け入れていますが、ほとんどの事業所は1つの国から受け入れていました。「今後も外国人を受け入れる予定ですか」の質問については70%の事業所が受け入れるとの回答でしたが、外国人を受け入れる為の手続き、管理、生活のサポートなどに負担を感じると言った意見がありました。「外国人を受け入れて良かったこと」の問いでは「日本人職員へ刺激や、事業所に活気が出た」などの意見に加え、熱心さや、明るさなど人柄に好印象をもつ事業所もありました。「指導で困ったこと」については、外国人介護職員と同じように、多くの事業所が言葉やコミュニケーションと回答しました。
【考察・まとめ】
今回アンケート調査を行い、ほとんどの外国人が入国後の期間に関わらず日本の介護の魅力を感じ、事業所側も外国人を受け入れたことで、様々なメリットを感じていました。外国人も「日本に残って介護がしたい」、事業所も「これからも外国人を受け入れたい」と感じるなかで、課題となるのが「コニュニケーション」です。日本には、漢字、ひらがな、カタカナに加え、関西弁や、地域独自の方言、さらには敬語といった様々な言葉が存在します。細かなニュアンスの違い、多彩な表現の違いで、外国人と職員、利用者のコミュニケーションがうまく図れず、すれ違いや仕事に影響がでることがあります。言葉の壁を乗り越える為には、外国人は言葉や日本の文化を学ぶ事、事業所側はゆっくりと標準語で伝えることが大切だと感じます。
【おわりに】 
最後に私の感想を少し話します。私が日本に来て一番印象に残っていることは「日本人の謙虚さ」です。中国では敬語を使うと距離が離れてしまうと考え、敬語を使う習慣がありません。私も最初は敬語を使うことが苦手で、面倒で、何故、日本人は敬語を使わないとコミュニケーションが取れないのか理解できませんでした。しかし、仕事の中では利用者から敬語で話してこられます。何かを頼みたい時など、私に迷惑をかけたくないとの気持ちが伝わります。日本の生活に関わってみて敬語は不要なものでなく、マナーだと感じました。世界には様々な文化や習慣があり国によって違います。これから日本の文化をたくさん勉強したいです。しかし、日本の敬語を覚えるのは本当に難しいです。