講演情報
[14-O-P208-03]外国人介護福祉士と歩んだ4年間を振り返り見えた課題
*治部 拓也1、阿部 真弓1、西角 昌平1 (1. 千葉県 介護老人保健施設 市川ゆうゆう)
介護福祉士の人材確保が難しい現代において、外国人介護福祉士の雇用で人材難に陥らないようにすること、日本人職員に多様性について理解し受容をしてもらうことが求められているのではないだろうか。当施設では2020年4月に、初めて在留資格「介護」を取得した外国人介護福祉士を雇用し、現在は16名の外国人介護福祉士と協働をしている。過去を振り返り、課題を抽出して、今後に活かせるより良い組織の在り方を考えたい。
厚生労働省は2021年7月に「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」を発表した。内容は、第8期介護保険事業計画の介護サービス見込み量等に基づき、都道府県が推計した介護職員の必要数を見ると、2023年度には約233万人(+約22万人(5.5万人/年))、2025年度には約243万人(+約32万人(5.3万人/年))、2040年度には約280万人(+約69万人(3.3万人/年))となった(※( )内は2019年度(211万人)比)、と今後年々増加していくことを明らかにした。
また、日本介護福祉士養成施設協会の調査によると、介護福祉士養成施設(養成課程のある全国の大学や専門学校など。以下、養成施設)を対象に実施した調査によると、令和5年度の入学者数は6197人(前年度比605人減)で、定員充足率は51.3%であった。入学者数は、統計の残る平成26年度以降で過去最少となったと明かしている。
少子化の影響により近年、養成施設への入学者数は減少していたが、平成29年には在留資格「介護」が新設され、養成施設が外国人留学生の受け入れに力を入れたことで微増傾向となった。しかし、新型コロナウイルス感染症の水際対策による入国制限の影響で、令和4年度の入学者が1880人(前年度比309人減)、令和5年度の入学者が1802人(前年度比78人減)となり、全体の減少につながっている。
養成施設の数も、令和5年度は296校(前年度比18校減)であり、平成26年度(406校)と比べても2割以上減少しており、300校を割っている。長引く定員割れから運営が困難となり、介護福祉士の養成学科の募集停止や廃止をする学校もある。
このような状況下において、当施設では2020年4月1日、8人の外国人介護福祉士(以下、外国人職員)を採用することとなった。先ずは、日本人介護福祉士(以下、日本人職員)が外国人職員を理解することが必要と考え、“やさしい日本語”について学習するために日本語講師を招聘し研修を行った。やさしい日本語とは、普段使われている言葉を外国人にも分かるように言い換えた簡単な日本語のことである。例を挙げると、「記入してください」を「書いてください」のように和語を用いたり、「健診を受けましょう」を「健康診断を受けましょう」のように略語を用いない等がある。
その後、外国人職員が入職した後は、やさしい日本語を学んではいるが使いこなせない日本人職員が多く、また、外国人職員も日本語能力は日本語能力試験(国際交流基金と日本国際教育支援協会が開始した日本語能力を測定する試験)を基準とすると、およそN4レベルであり、日常会話以外の聞き取りが難しい状況であった。日本人職員には、外国人職員が会話や指示の理解ができたか必ず確認をするよう指示していたが、確認をしても実際は正しく理解できていないことも見受けられた。その中で1ヶ月に1回、指導の進捗状況を共有する会議を行い、更には当施設専用の介護福祉士が業務上で習得する必要がある専門用語をリスト化した語彙リストを作成した。これを用いて自己学習を促し、専門用語を習得できているか確認のテストを繰り返し実施することで、介護記録の読解力の成長に繋がった。
一方、課題も浮き彫りとなった。それは日本語を話すことである。多くの外国人職員は施設と同敷地にある職員寮にて生活をしており、日常生活において日本語を発する機会が少ない状況であった。また、自己学習においては、読み書きに関しては指導者が確認することは容易だが、話す練習は実施の確認ができなかった。指導は難航したが、これまでの経過と考察は、日本人職員の主観であり、外国人職員の観点を度外視していると考え、1年目~5年目を迎えている外国人職員15名(令和6年度入社1名を除く)と日本人職員29名を対象に、過去と現在の考えの違いを明らかにする質問を用意し、率直な意見を聞き出すこととした。結果として、予想通り言葉の壁については心配の声が挙がっていた。「どの程度の日本語が通じて、理解ができるのか」「介護技術は見て覚えることはできるかもしれないが、語彙や文法の理解、話す力、聞く力が必須なケアカンファレンスやプランの立案等、教えたとしても実践できるのか」等、未知である故に様々な意見があった。また、外国人職員からは「話している日本語が通じるか心配だった」「日本人が話している日本語が分からないと困る」等の意見があった。
しかし、現在の心境をうかがった質問では、日本人職員からは「一度で覚えてもらうことは難しいが、覚えようとする姿勢は真剣で、次第に分からないことは自ら伝えることができるようになり、一生懸命な気持ちは伝わっている」「日本語は上手く使えていない時もあるが、利用者に関わる姿を見ていると、日本人よりも寄り添う気持ちを持ってコミュニケーションをとっているように見え、また、利用者も笑顔になっていることが多く、見習うことがあった」等、学ぶ姿勢や利用者との関わりにおいてポジティブな意見が挙がった。外国人職員からは「分からないことがあれば親切に教えてもらえるため、心配なことはない」「まだまだ出来ないことはあるが、日本語を上達させて今よりできることを増やしたい」等、向上心を持ち続けて仕事を継続できているという意見が挙がった。
今回の調査から見えた課題は、外国人職員は読解・聴解・会話力を向上させることは必要であり、日本人職員は外国人職員への理解を深め、より良い介護を提供するという共通の目標をもった仲間として、丁寧な説明や指導を継続していくことではないか。
介護福祉士の人材不足が嘆かれている今、文化や言葉の違いという壁はあるが、壁を乗り越えた先には介護福祉士の充足、そして必要とされている介護の提供ができるのではないだろうか。今後も外国人職員とのより良い協働を目指し、お互いの考えや意見を大切にしながら切磋琢磨していきたい。
また、日本介護福祉士養成施設協会の調査によると、介護福祉士養成施設(養成課程のある全国の大学や専門学校など。以下、養成施設)を対象に実施した調査によると、令和5年度の入学者数は6197人(前年度比605人減)で、定員充足率は51.3%であった。入学者数は、統計の残る平成26年度以降で過去最少となったと明かしている。
少子化の影響により近年、養成施設への入学者数は減少していたが、平成29年には在留資格「介護」が新設され、養成施設が外国人留学生の受け入れに力を入れたことで微増傾向となった。しかし、新型コロナウイルス感染症の水際対策による入国制限の影響で、令和4年度の入学者が1880人(前年度比309人減)、令和5年度の入学者が1802人(前年度比78人減)となり、全体の減少につながっている。
養成施設の数も、令和5年度は296校(前年度比18校減)であり、平成26年度(406校)と比べても2割以上減少しており、300校を割っている。長引く定員割れから運営が困難となり、介護福祉士の養成学科の募集停止や廃止をする学校もある。
このような状況下において、当施設では2020年4月1日、8人の外国人介護福祉士(以下、外国人職員)を採用することとなった。先ずは、日本人介護福祉士(以下、日本人職員)が外国人職員を理解することが必要と考え、“やさしい日本語”について学習するために日本語講師を招聘し研修を行った。やさしい日本語とは、普段使われている言葉を外国人にも分かるように言い換えた簡単な日本語のことである。例を挙げると、「記入してください」を「書いてください」のように和語を用いたり、「健診を受けましょう」を「健康診断を受けましょう」のように略語を用いない等がある。
その後、外国人職員が入職した後は、やさしい日本語を学んではいるが使いこなせない日本人職員が多く、また、外国人職員も日本語能力は日本語能力試験(国際交流基金と日本国際教育支援協会が開始した日本語能力を測定する試験)を基準とすると、およそN4レベルであり、日常会話以外の聞き取りが難しい状況であった。日本人職員には、外国人職員が会話や指示の理解ができたか必ず確認をするよう指示していたが、確認をしても実際は正しく理解できていないことも見受けられた。その中で1ヶ月に1回、指導の進捗状況を共有する会議を行い、更には当施設専用の介護福祉士が業務上で習得する必要がある専門用語をリスト化した語彙リストを作成した。これを用いて自己学習を促し、専門用語を習得できているか確認のテストを繰り返し実施することで、介護記録の読解力の成長に繋がった。
一方、課題も浮き彫りとなった。それは日本語を話すことである。多くの外国人職員は施設と同敷地にある職員寮にて生活をしており、日常生活において日本語を発する機会が少ない状況であった。また、自己学習においては、読み書きに関しては指導者が確認することは容易だが、話す練習は実施の確認ができなかった。指導は難航したが、これまでの経過と考察は、日本人職員の主観であり、外国人職員の観点を度外視していると考え、1年目~5年目を迎えている外国人職員15名(令和6年度入社1名を除く)と日本人職員29名を対象に、過去と現在の考えの違いを明らかにする質問を用意し、率直な意見を聞き出すこととした。結果として、予想通り言葉の壁については心配の声が挙がっていた。「どの程度の日本語が通じて、理解ができるのか」「介護技術は見て覚えることはできるかもしれないが、語彙や文法の理解、話す力、聞く力が必須なケアカンファレンスやプランの立案等、教えたとしても実践できるのか」等、未知である故に様々な意見があった。また、外国人職員からは「話している日本語が通じるか心配だった」「日本人が話している日本語が分からないと困る」等の意見があった。
しかし、現在の心境をうかがった質問では、日本人職員からは「一度で覚えてもらうことは難しいが、覚えようとする姿勢は真剣で、次第に分からないことは自ら伝えることができるようになり、一生懸命な気持ちは伝わっている」「日本語は上手く使えていない時もあるが、利用者に関わる姿を見ていると、日本人よりも寄り添う気持ちを持ってコミュニケーションをとっているように見え、また、利用者も笑顔になっていることが多く、見習うことがあった」等、学ぶ姿勢や利用者との関わりにおいてポジティブな意見が挙がった。外国人職員からは「分からないことがあれば親切に教えてもらえるため、心配なことはない」「まだまだ出来ないことはあるが、日本語を上達させて今よりできることを増やしたい」等、向上心を持ち続けて仕事を継続できているという意見が挙がった。
今回の調査から見えた課題は、外国人職員は読解・聴解・会話力を向上させることは必要であり、日本人職員は外国人職員への理解を深め、より良い介護を提供するという共通の目標をもった仲間として、丁寧な説明や指導を継続していくことではないか。
介護福祉士の人材不足が嘆かれている今、文化や言葉の違いという壁はあるが、壁を乗り越えた先には介護福祉士の充足、そして必要とされている介護の提供ができるのではないだろうか。今後も外国人職員とのより良い協働を目指し、お互いの考えや意見を大切にしながら切磋琢磨していきたい。