講演情報

[14-O-P208-04]外国人留学生を受け入れて

*佐藤 裕香1、大部 磯見1、鳴海 栄子1、畑中 美穂1 (1. 大分県 介護老人保健施設  陽光苑)
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当施設では2018年以降介護福祉士の新卒採用が途絶え、退職者の補充ができず紹介会社を頼る状況が続いた。受け入れるにあたりどの形が当法人に向いているのかについて検討し、外国人留学生の受け入れをすることにした。受け入れから体制つくりまでの経過と今後の方向性と課題について報告する。
【はじめに】
当施設では2018年以降介護福祉士の新卒採用が途絶え、退職者の補充ができず紹介会社を頼る状況が続いた。「誠実でやる気のある職員を育てたい。」「安定した職員の確保」をとの思いから外国人介護人材を受け入れることにした。受け入れるにあたり、EPA、技能実習、特定技能実習、外国人留学生(以下、留学生という)のどの形が当法人に向いているのかについて検討した結果、就業までに数年は係るが、日本語教育や生活支援、介護教育など職員の負担が少ないことを理由に、修学資金を利用した外国人留学生の受け入れをすることにした。受け入れから体制つくりまでの経過と今後の方向性と課題についてここに報告する。
【方法】
期間:2021年11月1日~2024年6月30日
対象:外国人留学生1期3名、2期2名、3期2名計7名
取り組み内容:
1. 受け入れ決定後の体制つくり
1)現任職員の教育
・ 職員の不安の聞き取り
・ 制度の理解と外国人留学生選択の理由の説明
・ ミャンマーの国民の特性や指導時のポイントと注意点
・ 職員と留学生が共有できる指導マニュアルや業務手順書の作成
2)関係機関の役割りの明確化  
外国人留学就労支援協会(以下、協会)が、日本での生活の基盤を整える支援。介護福祉養成校(以下、養成校)が、日本語や介護知識技術の教育。法人の人事課(以下、人事課)が、協会や養成校、当施設、留学生との連絡調整。当施設が週末のアルバイトの受け入れと、受入時の生活支援。
2.受け入れ後の支援
1)プリセプターの配置とプリセプター教育と支援
2)関係機関との情報共有
【結果】
2024年6月現在、在留資格介護1名、留学生6名。
1.職員の8割以上が、「日本語が理解できず、かえって自分たちの負担になる」などの不安を訴えたため、制度や法人の意向を繰り返し説明した。また、開苑祭や法人の創立記念で利用者や職員との交流の場を設け、利用者や職員とのコミュニケーションを築くようにした。2024年4月に留学生の1名が、介護の在留資格を獲得し就業している。他職員との関係も良く計画通りに業務の習得ができているが、ご利用者に関する文章記録に苦慮している。
2.関係機関で情報共有しそれぞれが支援することで、留学生は養成校で学びながら月~金は養成校の近くでアルバイトを行い、当施設では通勤に2時間程度かかるため週末のみアルバイトを行っている。アルバイト中の業務の指示については、間違いが無いようマニュアルを見ながら口頭とメモによる確認をお互いにした。業務内容については、間接業務と直接業務の整理を行い1年目は間接業務を中心に行い、2年目は養成校での介護技術の習熟度に合わせ入浴介助などを職員見守りの元行った。 
【考察】
1. 関係機関の連携で、当初あった支援への不安はほとんどなく、アルバイトの業務指導に集中する事ができた。交流の場を設けた事で、留学生との関係性を深める事ができた。業務についても互いに口頭やメモを用いる事であまり間違いなく対応することが出来よかったが、記録の文章の作成については指導方法の工夫が必要だと考える。 
2. 年々、週末アルバイトの時間が減少しているのは、留学生のアルバイトは週28時間の縛りがあり、学業と両立しながら生活費を得るには、片道2時間かかる当施設より、養成校近くでのアルバイトが主となっているからと感じる。特に女性留学生がその傾向にあると考える。養成校で日本語や介護の知識・技術を習得することはできても、施設職員との人間関係の構築には繋がらないため、今後どのように関係性を作っていくかが課題である。   
業務整理を行った事で、残業なども増えることは無く業務の効率化を図る事につながったと考える。
【終りに】 
外国人介護職員の採用は、単発的な事業ではなく中長期的な事業となるため、関係機関との更なる連携や施設の教育体制の整備、教育担当者の育成を継続的に行う事が必要である。  
会話・聞き取り・読みも十分だが、利用者情報を文章にするのが苦手などの問題はあるが、今後は在留資格介護を持つ職員が特定技能実習生の教育に携わるなど、外国人が他の外国人を育成する環境整備も必要である。